愛しのアリシア

京衛武百十

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ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳

岩丸ゆかり、判断が遅れる

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で、ホテル近くのコンビニにも置いていなかったので、岩丸ゆかりは、携帯端末で検索してヒットした大型の食品スーパーを目指し夜の街を歩いていたのである。兄には端末を通じてメッセージを残して。

かつては、アメリカでは若い女性が夜に一人歩きをするのは自殺行為にも等しい的なことを言われたりもしたものの、最低でも二百メートル間隔で警察用のレイバーギアやメイトギアが立ち、一般で購入できる銃や刃物にはIDタグが付けられて常に位置情報が確認され、しかも多くの銃砲にはAI制御の安全装置も付けられて、解除されたら即警察に警報が届いてレイバーギアが駆け付けるという現在では、二十一世紀初頭頃の東京と比べても遜色ない程度には安全も確保されていた。

とは言え、レイバーギアやメイトギアが近くにいてもお構いなしでいきなり通りすがりの相手に殴りかかるような、意味不明な粗暴犯もいないわけではないので、注意は必要だが。すぐにレイバーギアやメイトギアが駆け付けて容疑者を取り押さえてくれても、怪我をすることもあるし、打ち所が悪ければ命を失うことだってある。実際、そういう形で命を落とす者も、年間、数人単位で出るのだ。

が、ゆかりは、高校の部活で陸上部とダンス部を掛け持ちして、さらに現役軍人である兄から<護身術>の手ほどきを受けていることもあり、素手の暴漢くらいなら退ける自信があった。

けれど、それが慢心や油断に繋がることもある。世の中には、<腕自慢の女子高生>くらいでは対処できない輩も存在するのだ。

この時も、ゆかりがたまたま通りがかったところで、

ガシャン!

と何かが落ちる音がして、彼女はハッと身構えつつそちらに視線を向けた。その視線の先では、自動車のトランクに何かを積もうとしていた男達の姿。男達の一人が、積み込もうとしていた荷物を落としたらしい。そして、中身が散らばってしまう。

それは、携帯端末にも見えなくもない、手の平サイズの何かの機械のようだった。

「?」

ゆかりはまったく何も察していなかったが、男達は明らかに慌てた様子で、

「見られたぞ!」

「仕方ねえ! 始末する!!」

そう言って、二人がゆかりの方へと走った。

「え? え…?」

咄嗟のことに、判断が遅れる。さすがに訓練も受けていない素人では、そんなものだということだ。いくら足の速さや反射神経に自信があっても、<判断>は、訓練を積まないとなかなか的確なそれを行えない。

そうして対応が遅れたゆかりがようやく逃げようとしたものの、時すでに遅し。男の一人が放った<テイザー銃(射出式のスタンガン)>が彼女を捉えて、その場に倒れこんでしまったのだった。

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