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第一章
第40話 魔石レースの勝者
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僕はその後、すぐに倒れているみんなに【初級回復呪文】である【キュアル】をかけて回った。まず、傷がひどかったネフィを回復させて、次にセネリー、ライアスとあとは知らない冒険者の人たちを回復させた。初級の回復呪文にしては効果抜群で、みんな瞬時にダメージが回復した。……まぁ、レベル的には上級回復呪文並の効果になっているんだろうなと僕は思った。
ネフィとセネリーとライアスはみんな僕の顔を見て、とても驚いていた。ライアスに僕がローブの男――ドゥーマのことだろう――を倒したのか聞かれたので、僕はそいつは僕と戦ってすぐに撤退したと告げた。実際は僕がドゥーマを割と圧倒して、ドゥーマが敗退した感じなんだけれど、その辺は濁した。
……僕はまだランク2の普通レベルの冒険者ということになっている。そんな僕が自称レベル60のドゥーマを倒したなんて周りに知られるのは避けたい。そのため、僕はドゥーマがたまたま何らかの理由で撤退したという事実を強調した。みんなに嘘を付くのは少し気が引けたけど、こればかりは仕方がなかった。幸い、中継用の水晶玉は途中からドゥーマによって破壊されていたので、僕とドゥーマの実際の戦闘の内容を知るものは誰もいないだろうと思った。
――僕がみんなを回復すると、これからどうしようかという話になった。このまま一斉にレースの続きをするということもできたけど、ライアスが僕を先に行かせることを強く提案した。
「……お前は俺たちを回復するためにわざわざここに留まった。俺たちを無視して自分だけ最後の関門に進むって選択もできたのによ……。そんな状況で、ここでみんな一斉に再スタートじゃ不公平ってもんだ。少なくともお前には俺たちより有利にスタートする権利がある」
ライアスがそう言うと、みんなそれに同調して首を縦に振ったのだった。全く知らない冒険者の人も同意していて僕は少し誇らしい気分になった。
「……30分したら後を追うからよ。みんなもそれでいいよな?」
「問題ないよ」
「異議なーし」
ネフィとセネリーがそう言って、他のみんなも了承した。
「えっと……じゃあ先に行かせてもらうね」
「おうよ。ただまだ最後の関門が残ってるからな! もし、そこで俺たちが追いつくまで詰まっていたら……遠慮なく抜かせてもらうぜ?」
ライアスは得意の大剣を担ぎながら言った。
「それは、そうだね……」
「ま、そのときはこの私が代わりに優勝してあげるからさ、気にすることはないよ」
セネリーがそう言った。
「ふふ、それはない……。そのときは私が優勝してヴァジェヌ様に褒めてもらうのだから……」
ネフィはそう言って妖しく笑った。僕は「あはは……」と苦笑いしつつ、前を向いた。
「じゃあ、先に行ってるから!」
僕はみんなにそう告げた。
(……どうしてこうなったのかはわからないけど、僕は今レースのトップにいる。ここまで来たら……優勝しかないじゃないか!)
僕はそう決意し、前にある扉へと進んだ。この扉の先に、このレースの最終関門である第5の関門があるのだろう。
――ここからは、僕は一番先でみんなの前にいるんだ。
僕はそんなことを思いつつ、扉を開けた。
扉を開け、その先にあった通路を進んでいくと、広い階段が目の前に現れた。階段は地上へと続いていて、出口には外からの光が射しているのが見える。
(……あれ? まだ第五関門じゃないのかな?)
今までのパターンなら転移魔法陣で関門に飛ばされるところだけど、今回はそれはないようだった。僕は少し驚きつつも、頑張って階段を駆け上がった。きっと階段を上ったところで第五関門が待ち受けているだろうとそう思った。
――ようやく階段の出口まで来ると、そこは、エリュシウス中央広場だった。
周りには多くの観衆がいて、僕の姿を見るとわーわーと盛大な声援を送ってきた。僕は何が何やらわからず、その場に立ち尽くしていた。……魔石レースの最後がこういう感じだとは全く想定していなかった。いや、確かにレースだとゴール前には観客がいるのが普通だけど……。
『おーっとッ! 一番乗りでやって来たのは……『カオスねこ団』所属のランク2冒険者、ユイト・アサヒナだーーーッ!!!』
わーわーひゅーひゅー!
何やら実況席のような場所でマイクのような道具を持った男がそう叫んだ。どう見ても実況の人だった。隣には解説役の人らしき姿もあった。
『ユイト氏は第四関門を突破した時点ではかなり後ろの方でしたが、みなさんも先程ご覧になった通り、他の冒険者同士の争いもあり、見事に先頭集団まで追いつくことができました!! そして今ではなんと、単独トップに躍り出ています! いやーこんな展開になるとは予想外でしたね』
「……本当、びっくりですねぇ。ランク3冒険者のマードゥ氏の力は圧倒的でしたし、ユイト氏も絶対彼にやられるだろうと私は思ったんですが」
解説の人が少し驚いた顔をして言った。
(ランク3冒険者のマードゥ? というのはあいつのことだろうか……。でも、微妙に名前が違うような……)
偽名で登録でもしていたのだろうか。まぁ、見るからに怪しそうなやつだったし、偽名を使っていてもおかしくはないと僕は思った。
『マードゥ氏が途中で中継用魔導具を破壊してからは、その後二人の闘いがどうなったのかは我々にはわかりませんからね。ただ、ユイト氏がここまで来たところを見ると、マードゥ氏はユイト氏に破れたか、あるいは何らかの理由で撤退したのではないでしょうか』
「まぁ可能性が高いのは後者でしょうな。ユイト氏はランク2ですから。ランク3で他の冒険者を圧倒していたマードゥ氏を撃破したとは考えにくいです。詳しいところは実際に戦ったユイト氏に聞いてみないとわかりませんけどね」
解説の人は得意げな顔でそう説明した。実際、僕はあいつを撃破しているのだけれど、それは言わないお約束というやつだろう。
『そうですよねぇ。なんにせよユイト氏は非常に幸運だったと言えます。マードゥ氏が他の冒険者と闘っている間に、下位からトップまで追いつくことができたわけですからね!』
実況の人はそう強調した。
『しかーし、レースはまだ終わってはいません! 最終関門である『栄光への道』がまだ残されております。はたしてユイト氏はこれを乗り越えて魔石を手に入れることができるのか!! さぁ、ユイト氏の最後の挑戦が今始まります!』
わーわーひゅーひゅー!
……実況の人がそう言い終えたところで、僕は前へと進んだ。前方の広場の中央部には何やら巨大な魔法陣が敷かれていて、さらにその上には階段のようなものが設置されている。階段を上った先には小さなスペースがあって、そこには台座が設置されてあった。そして、その台座の上には今回のレースの賞品である魔石と思われる石が飾られていた。
僕は階段のすぐ近くまで来ると、そこに立てられていた木の看板を見た。そこには最終関門である第五の関門の内容が示されていた。
~第五の関門『栄光への道』~
ここから先は一歩踏み出すたびに魔力と精神力を吸われるぞ! これが最後だ、頑張りたまえ!
……なるほど、ここから先に巨大な魔法陣があるのはそういうことか。でも、正直僕はほとんど魔力や精神力も消費していないので特に何の問題もない気がした。ドゥーマとの闘いでちょっと魔力や精神力を使ったのは確かだけど、それでも数パーセント使ったかどうかだ。これなら多少吸い取られてもきっと大丈夫だろう。
……僕は魔法陣の領域に一歩を踏み出した。
(……あー、確かに歩くたびにちょっとずつ魔力と精神力が吸われてる。でも、これぐらいなら全然大丈夫かも……)
僕は一歩足を踏み出すたびにそう思った。確かに魔力と精神力は吸われるけれど、その量はどうも固定のようで今の僕にとっては微々たる量だった。僕は自分の魔力と精神力がどれぐらいあるかはざっくりとしかわからないけど、多分相当多いと思った。やっぱりそこは伊達にレベル300を超えているわけではないのだ。
『おおーーっとッ!? これは驚いたことにユイト氏は魔力と精神力が吸われる領域をスタスタと歩いていくーーーッ!! これはすごいですッ!!!』
「ふーむ、驚きですねぇ。普通のランク2の冒険者にはかなり負担が大きいはずなんですが……。これは回復が持続するタイプのポーションでも事前に飲んでいるのかもしれませんねぇ」
解説の人はそう言って腕組みをする。
『なるほど、回復が持続するタイプのポーションですか! 確かにそれなら魔力や精神力を吸われてもその分回復しますからね! この関門対策にはもってこいです! ユイト氏、その外見によらず、だいぶ用意周到なようです!!』
……なんかあまり褒めてなくない? ポーションなんて飲んでないし、こんな関門の事前準備なんてできるわけないよ。……僕は心の中で少し文句を言いつつ、階段に足をかけた。
『あーっとッ! ユイト氏が遂に階段を上り始めました!! もうこれはユイト氏の優勝で決定かーーーッ!?』
「……まぁ、ここまで来れば、ほぼほぼ決定ですよねぇ」
わーわーきゃーきゃー!!
僕は大歓声の中、階段を一段一段上っていった。今、この場でこの階段を上っているのは僕以外には誰もいなかった。僕だけが、ただ階段の先にある魔石を目指していた。
――そして、僕は遂に階段の最後の段を上り、一番上まで来た。僕の目の前には台座があって、そこには魔石が置かれていた。魔石は黒く光っていて、こぶし大ぐらいのサイズがあり、結構大きかった。僕は少し息を吐いて、心を落ち着かせると、魔石へと手を伸ばした。その時を観衆がみな待ちわびていたのを感じた。
――僕は魔石を手にすると、控えめに頭上に掲げた。多分、それがきっとマナーというやつだろう。瞬間、つんざくような大歓声が広場を包んだ。
わーわーきゃーきゃー!!
……この時を持って、魔石レースの優勝者は僕になった。正直、まさか僕が魔石レースで優勝するとは夢にも思っていなかった。実際、最初の試練では普通に敗退すると思っていた。
……この世界に来てからは大変なことばかりだったけど、今回ばかりは僕は心の底から嬉しいと思った。
僕の右手にある黒い魔石はずっしりとしていて、気持ちのいい重さだった。
……そんなこんなで僕は魔石レースで優勝した。ちなみに二位と三位は僅差でネフィとライアスだった。やはり這い寄る者たちと獅子の牙の期待のルーキーというだけあって二人は魔力と精神力が吸われる領域に入っても、ほとんど速度をおとすことがなかった。
ドゥーマとの闘いで力を消耗しているはずだけど、そこはポーションか何かで補ったのだろうと僕は思った。
一方、セネリーはヘロヘロな状態で他の冒険者にも抜かれ、順位は九位だった。セネリーらしいと言えばセネリーらしいと思った。
ネフィとセネリーとライアスはみんな僕の顔を見て、とても驚いていた。ライアスに僕がローブの男――ドゥーマのことだろう――を倒したのか聞かれたので、僕はそいつは僕と戦ってすぐに撤退したと告げた。実際は僕がドゥーマを割と圧倒して、ドゥーマが敗退した感じなんだけれど、その辺は濁した。
……僕はまだランク2の普通レベルの冒険者ということになっている。そんな僕が自称レベル60のドゥーマを倒したなんて周りに知られるのは避けたい。そのため、僕はドゥーマがたまたま何らかの理由で撤退したという事実を強調した。みんなに嘘を付くのは少し気が引けたけど、こればかりは仕方がなかった。幸い、中継用の水晶玉は途中からドゥーマによって破壊されていたので、僕とドゥーマの実際の戦闘の内容を知るものは誰もいないだろうと思った。
――僕がみんなを回復すると、これからどうしようかという話になった。このまま一斉にレースの続きをするということもできたけど、ライアスが僕を先に行かせることを強く提案した。
「……お前は俺たちを回復するためにわざわざここに留まった。俺たちを無視して自分だけ最後の関門に進むって選択もできたのによ……。そんな状況で、ここでみんな一斉に再スタートじゃ不公平ってもんだ。少なくともお前には俺たちより有利にスタートする権利がある」
ライアスがそう言うと、みんなそれに同調して首を縦に振ったのだった。全く知らない冒険者の人も同意していて僕は少し誇らしい気分になった。
「……30分したら後を追うからよ。みんなもそれでいいよな?」
「問題ないよ」
「異議なーし」
ネフィとセネリーがそう言って、他のみんなも了承した。
「えっと……じゃあ先に行かせてもらうね」
「おうよ。ただまだ最後の関門が残ってるからな! もし、そこで俺たちが追いつくまで詰まっていたら……遠慮なく抜かせてもらうぜ?」
ライアスは得意の大剣を担ぎながら言った。
「それは、そうだね……」
「ま、そのときはこの私が代わりに優勝してあげるからさ、気にすることはないよ」
セネリーがそう言った。
「ふふ、それはない……。そのときは私が優勝してヴァジェヌ様に褒めてもらうのだから……」
ネフィはそう言って妖しく笑った。僕は「あはは……」と苦笑いしつつ、前を向いた。
「じゃあ、先に行ってるから!」
僕はみんなにそう告げた。
(……どうしてこうなったのかはわからないけど、僕は今レースのトップにいる。ここまで来たら……優勝しかないじゃないか!)
僕はそう決意し、前にある扉へと進んだ。この扉の先に、このレースの最終関門である第5の関門があるのだろう。
――ここからは、僕は一番先でみんなの前にいるんだ。
僕はそんなことを思いつつ、扉を開けた。
扉を開け、その先にあった通路を進んでいくと、広い階段が目の前に現れた。階段は地上へと続いていて、出口には外からの光が射しているのが見える。
(……あれ? まだ第五関門じゃないのかな?)
今までのパターンなら転移魔法陣で関門に飛ばされるところだけど、今回はそれはないようだった。僕は少し驚きつつも、頑張って階段を駆け上がった。きっと階段を上ったところで第五関門が待ち受けているだろうとそう思った。
――ようやく階段の出口まで来ると、そこは、エリュシウス中央広場だった。
周りには多くの観衆がいて、僕の姿を見るとわーわーと盛大な声援を送ってきた。僕は何が何やらわからず、その場に立ち尽くしていた。……魔石レースの最後がこういう感じだとは全く想定していなかった。いや、確かにレースだとゴール前には観客がいるのが普通だけど……。
『おーっとッ! 一番乗りでやって来たのは……『カオスねこ団』所属のランク2冒険者、ユイト・アサヒナだーーーッ!!!』
わーわーひゅーひゅー!
何やら実況席のような場所でマイクのような道具を持った男がそう叫んだ。どう見ても実況の人だった。隣には解説役の人らしき姿もあった。
『ユイト氏は第四関門を突破した時点ではかなり後ろの方でしたが、みなさんも先程ご覧になった通り、他の冒険者同士の争いもあり、見事に先頭集団まで追いつくことができました!! そして今ではなんと、単独トップに躍り出ています! いやーこんな展開になるとは予想外でしたね』
「……本当、びっくりですねぇ。ランク3冒険者のマードゥ氏の力は圧倒的でしたし、ユイト氏も絶対彼にやられるだろうと私は思ったんですが」
解説の人が少し驚いた顔をして言った。
(ランク3冒険者のマードゥ? というのはあいつのことだろうか……。でも、微妙に名前が違うような……)
偽名で登録でもしていたのだろうか。まぁ、見るからに怪しそうなやつだったし、偽名を使っていてもおかしくはないと僕は思った。
『マードゥ氏が途中で中継用魔導具を破壊してからは、その後二人の闘いがどうなったのかは我々にはわかりませんからね。ただ、ユイト氏がここまで来たところを見ると、マードゥ氏はユイト氏に破れたか、あるいは何らかの理由で撤退したのではないでしょうか』
「まぁ可能性が高いのは後者でしょうな。ユイト氏はランク2ですから。ランク3で他の冒険者を圧倒していたマードゥ氏を撃破したとは考えにくいです。詳しいところは実際に戦ったユイト氏に聞いてみないとわかりませんけどね」
解説の人は得意げな顔でそう説明した。実際、僕はあいつを撃破しているのだけれど、それは言わないお約束というやつだろう。
『そうですよねぇ。なんにせよユイト氏は非常に幸運だったと言えます。マードゥ氏が他の冒険者と闘っている間に、下位からトップまで追いつくことができたわけですからね!』
実況の人はそう強調した。
『しかーし、レースはまだ終わってはいません! 最終関門である『栄光への道』がまだ残されております。はたしてユイト氏はこれを乗り越えて魔石を手に入れることができるのか!! さぁ、ユイト氏の最後の挑戦が今始まります!』
わーわーひゅーひゅー!
……実況の人がそう言い終えたところで、僕は前へと進んだ。前方の広場の中央部には何やら巨大な魔法陣が敷かれていて、さらにその上には階段のようなものが設置されている。階段を上った先には小さなスペースがあって、そこには台座が設置されてあった。そして、その台座の上には今回のレースの賞品である魔石と思われる石が飾られていた。
僕は階段のすぐ近くまで来ると、そこに立てられていた木の看板を見た。そこには最終関門である第五の関門の内容が示されていた。
~第五の関門『栄光への道』~
ここから先は一歩踏み出すたびに魔力と精神力を吸われるぞ! これが最後だ、頑張りたまえ!
……なるほど、ここから先に巨大な魔法陣があるのはそういうことか。でも、正直僕はほとんど魔力や精神力も消費していないので特に何の問題もない気がした。ドゥーマとの闘いでちょっと魔力や精神力を使ったのは確かだけど、それでも数パーセント使ったかどうかだ。これなら多少吸い取られてもきっと大丈夫だろう。
……僕は魔法陣の領域に一歩を踏み出した。
(……あー、確かに歩くたびにちょっとずつ魔力と精神力が吸われてる。でも、これぐらいなら全然大丈夫かも……)
僕は一歩足を踏み出すたびにそう思った。確かに魔力と精神力は吸われるけれど、その量はどうも固定のようで今の僕にとっては微々たる量だった。僕は自分の魔力と精神力がどれぐらいあるかはざっくりとしかわからないけど、多分相当多いと思った。やっぱりそこは伊達にレベル300を超えているわけではないのだ。
『おおーーっとッ!? これは驚いたことにユイト氏は魔力と精神力が吸われる領域をスタスタと歩いていくーーーッ!! これはすごいですッ!!!』
「ふーむ、驚きですねぇ。普通のランク2の冒険者にはかなり負担が大きいはずなんですが……。これは回復が持続するタイプのポーションでも事前に飲んでいるのかもしれませんねぇ」
解説の人はそう言って腕組みをする。
『なるほど、回復が持続するタイプのポーションですか! 確かにそれなら魔力や精神力を吸われてもその分回復しますからね! この関門対策にはもってこいです! ユイト氏、その外見によらず、だいぶ用意周到なようです!!』
……なんかあまり褒めてなくない? ポーションなんて飲んでないし、こんな関門の事前準備なんてできるわけないよ。……僕は心の中で少し文句を言いつつ、階段に足をかけた。
『あーっとッ! ユイト氏が遂に階段を上り始めました!! もうこれはユイト氏の優勝で決定かーーーッ!?』
「……まぁ、ここまで来れば、ほぼほぼ決定ですよねぇ」
わーわーきゃーきゃー!!
僕は大歓声の中、階段を一段一段上っていった。今、この場でこの階段を上っているのは僕以外には誰もいなかった。僕だけが、ただ階段の先にある魔石を目指していた。
――そして、僕は遂に階段の最後の段を上り、一番上まで来た。僕の目の前には台座があって、そこには魔石が置かれていた。魔石は黒く光っていて、こぶし大ぐらいのサイズがあり、結構大きかった。僕は少し息を吐いて、心を落ち着かせると、魔石へと手を伸ばした。その時を観衆がみな待ちわびていたのを感じた。
――僕は魔石を手にすると、控えめに頭上に掲げた。多分、それがきっとマナーというやつだろう。瞬間、つんざくような大歓声が広場を包んだ。
わーわーきゃーきゃー!!
……この時を持って、魔石レースの優勝者は僕になった。正直、まさか僕が魔石レースで優勝するとは夢にも思っていなかった。実際、最初の試練では普通に敗退すると思っていた。
……この世界に来てからは大変なことばかりだったけど、今回ばかりは僕は心の底から嬉しいと思った。
僕の右手にある黒い魔石はずっしりとしていて、気持ちのいい重さだった。
……そんなこんなで僕は魔石レースで優勝した。ちなみに二位と三位は僅差でネフィとライアスだった。やはり這い寄る者たちと獅子の牙の期待のルーキーというだけあって二人は魔力と精神力が吸われる領域に入っても、ほとんど速度をおとすことがなかった。
ドゥーマとの闘いで力を消耗しているはずだけど、そこはポーションか何かで補ったのだろうと僕は思った。
一方、セネリーはヘロヘロな状態で他の冒険者にも抜かれ、順位は九位だった。セネリーらしいと言えばセネリーらしいと思った。
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