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第三章
二十九話
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私はドラゴンくんの背に乗って、ダッタンガラムの国を出る。
目指すは、ナターリア神殿跡がある無人の島だ。
お猿さんは私の服の中で安心したのか、今は眠りについている。
(そろそろ、飛び立ってだいぶ経つし……)
私はそっとカバ妖精さんの返還魔法を唱えた。
そして頃合いを見て、彼女に念話を送る。
カバ妖精さんは、どうやら無事に仲間がいる集落へと帰れたようだ。
ブチ切れたリオに何かされていたらと心配していたが、その辺は無用であったらしい。
『大丈夫よマスター……例の男性ね、あの後いきなり二階の窓から飛び降りて、街の方へ逃げちゃったのよ。それでさっきまで、私と追いかけっこをしていたんだけど、なんかその間もずっとソアって名前を呼び続けてたわ。ソアって、もしかしてマスターの名前かしら?』
「そうそう、当たりよ。さっきは初対面でいきなり喚んじゃってごめんね。助けてくれて本当にありがとう」
私は妖精さんに感謝の気持ちを伝えて、早めに念話を切った。
今ここで彼女に余計なことを話してしまうと、指輪からリオに行き先がバレてしまうかもしれないからだ。
(たぶん妖精さんと追いかけっこしている間は、リオにこちらの会話を聞く暇は無かったはず……それに二階から飛び降りるって……どんだけ苦手やねん)
リオが地雷のカバ妖精さん、念のためにテイムしていて本当に良かった。
暴走したリオ相手に、とても高い障壁の効果をもたらしてくれたのだ。
誠に勝手ながら、今後もリオに困った時は、妖精さんを積極的に喚ばせていただこう。
最近の私は、少々彼らに頼りっぱなしな気もするが、ライライやドラゴンくん、そして妖精さんにも、今後改めて何かお礼をしようと思う。
◇ ◇ ◇
ドラゴンくんに乗ってから数時間後、ナターリアの聖域がある島に着いた。
ここは人目もないし、ドラゴンくんには砂浜辺りでこのまま待機しててもらうつもりだ。
『あるじ、いってらっしゃい』
「ありがとう。いってきます」
私は無人島の森の中を、懐に猿さんを入れたまま黙々と進んでいく。
この島には、壊れた神殿の遺跡しか残されていない聖域なのだが、ダンシェケルト家の血族か、女神に認められた者しか足を運ぶことができない決まりになっている。
人が滅多に入らない綺麗な砂浜に、透き通ったグリーンの海、そして砂浜の先には緑豊かな森が、広大な範囲でどこまでも続いていた。
そして森の奥まで進んで現れるのは、柱や床の模様くらいしか残っていない遺跡の成れの果てだ。
この島は何千年も前、この世界で活躍したナターリアの最後の戦いの場だとされている。
しかし、この島が人に見つかったのは、ほんの数百年くらい前の話らしく、ナターリアの聖域はすでに復元も不可能なほどに朽ち果てていたのだとか。
「お猿さん、そろそろ起きて……」
『ん? ここはどこ?』
私は森の中を進んでしばらく経ってから、ずっと眠っていたお猿さんに声をかけた。
「えっとね、ここの森ならお猿さんにとって、住むのに安全な場所なんじゃないかと思って、連れてきたの」
『あら、確かに素敵な場所……空気も澄んでて美味しいわ』
「でしょう? ここは暖かくて、自然もいっぱいあるし、滅多に人間も入ってこないと思うわ」
お猿さんは森の中で、音や匂いを確かめるように五感を研ぎ澄ましている。
『……うん。さっきの狭い小屋よりは、ずっと気に入ったわ。前にいた島の住処には、変な穴ができて困っていたし……ありがとう、ソア』
お猿さんはそう言って、一人で森の奥へと入っていった。
ここで幸せになってくれたら嬉しいなと思いながら、私は彼女の後ろ姿を静かに見送る。
お猿さんの姿が完全に見えなくなると、私も森の中を進んで、ナターリアの神殿跡を目指した。
神殿の遺跡には、ナターリアの強い意識が残っており、教会や夢の中のように、彼女と自然に念話ができるのだ。
(これでやっと……ナターリアと話すことができる)
思わずこんなところまで来てしまったが、この際だからきちんと彼女と腹を割って話しをするつもりだ。
◇ ◇ ◇
朽ちた遺跡。
折れた柱に、残骸となった外壁、気の遠くなるような長い年月を雨風に晒され、ここを神殿と呼ぶには少々見窄らし過ぎる環境だが、ナターリアの気配だけはどんな教会よりも強い。
『数日ぶりだの、ソア』
えぇ、ナターリア……私ね、この数日間であなたに言いたいこと聞きたいことが山ほどあるんだけど……コホン。
とりあえず、あの最悪な付与スキルは外せー! こんのバカ女神ーっ!
『ひょっ?! ど、どうしたのだ、ソア? 額に青筋まで立てて……とても怖いぞ。なぜそんなにも怒っておるのだ?』
いや、怒るに決まってますよね?
あんな催淫効果なんぞ、まさか私が喜ぶとでも思ったんですか?
というか、やっぱりあれは女神の仕業だったんですね……まぁ最悪ですわ。
『ワシからのプレゼントお気に召さなかったのか……それは済まぬことをした。今、あの付与はきちんと消しておいたから……』
やはり……あのふざけた付与スキルはナターリアの策略だった。
私はこの後、しばらくの間文句と小言をずっと女神に聞かせたが、さすがのナターリアも反省したのか、ただ相槌を打って、何度も謝ってくるだけだった。
『話はこれで終わりか? お主に注意、警告されたことは重く受け止めておくのでな……』
まぁ、それはそれとして、お願いがあるんですけど……さっき、この島で離したピンクの猿さん、女神の聖獣にしてもらえませんか?
『ピンクの猿を聖獣に? それは何か目的があってのことなのか?』
あの猿さんが聖獣になれば、いざここで人間に存在がバレた時、捕まりにくくなるんじゃないかと思ったんです。
彼女の仲間は、時空の狭間に落ちて未だ行方不明だし、リオの魔力で魔物化した状態で彼女自身も異次元に落ち、ずっと散々な目に遭っています。
これではあまりにも気の毒すぎやしませんか?
と、まぁ私は少々強引に、女神へ改善策を提案してみた。
さて、女神よ……どう出る?
目指すは、ナターリア神殿跡がある無人の島だ。
お猿さんは私の服の中で安心したのか、今は眠りについている。
(そろそろ、飛び立ってだいぶ経つし……)
私はそっとカバ妖精さんの返還魔法を唱えた。
そして頃合いを見て、彼女に念話を送る。
カバ妖精さんは、どうやら無事に仲間がいる集落へと帰れたようだ。
ブチ切れたリオに何かされていたらと心配していたが、その辺は無用であったらしい。
『大丈夫よマスター……例の男性ね、あの後いきなり二階の窓から飛び降りて、街の方へ逃げちゃったのよ。それでさっきまで、私と追いかけっこをしていたんだけど、なんかその間もずっとソアって名前を呼び続けてたわ。ソアって、もしかしてマスターの名前かしら?』
「そうそう、当たりよ。さっきは初対面でいきなり喚んじゃってごめんね。助けてくれて本当にありがとう」
私は妖精さんに感謝の気持ちを伝えて、早めに念話を切った。
今ここで彼女に余計なことを話してしまうと、指輪からリオに行き先がバレてしまうかもしれないからだ。
(たぶん妖精さんと追いかけっこしている間は、リオにこちらの会話を聞く暇は無かったはず……それに二階から飛び降りるって……どんだけ苦手やねん)
リオが地雷のカバ妖精さん、念のためにテイムしていて本当に良かった。
暴走したリオ相手に、とても高い障壁の効果をもたらしてくれたのだ。
誠に勝手ながら、今後もリオに困った時は、妖精さんを積極的に喚ばせていただこう。
最近の私は、少々彼らに頼りっぱなしな気もするが、ライライやドラゴンくん、そして妖精さんにも、今後改めて何かお礼をしようと思う。
◇ ◇ ◇
ドラゴンくんに乗ってから数時間後、ナターリアの聖域がある島に着いた。
ここは人目もないし、ドラゴンくんには砂浜辺りでこのまま待機しててもらうつもりだ。
『あるじ、いってらっしゃい』
「ありがとう。いってきます」
私は無人島の森の中を、懐に猿さんを入れたまま黙々と進んでいく。
この島には、壊れた神殿の遺跡しか残されていない聖域なのだが、ダンシェケルト家の血族か、女神に認められた者しか足を運ぶことができない決まりになっている。
人が滅多に入らない綺麗な砂浜に、透き通ったグリーンの海、そして砂浜の先には緑豊かな森が、広大な範囲でどこまでも続いていた。
そして森の奥まで進んで現れるのは、柱や床の模様くらいしか残っていない遺跡の成れの果てだ。
この島は何千年も前、この世界で活躍したナターリアの最後の戦いの場だとされている。
しかし、この島が人に見つかったのは、ほんの数百年くらい前の話らしく、ナターリアの聖域はすでに復元も不可能なほどに朽ち果てていたのだとか。
「お猿さん、そろそろ起きて……」
『ん? ここはどこ?』
私は森の中を進んでしばらく経ってから、ずっと眠っていたお猿さんに声をかけた。
「えっとね、ここの森ならお猿さんにとって、住むのに安全な場所なんじゃないかと思って、連れてきたの」
『あら、確かに素敵な場所……空気も澄んでて美味しいわ』
「でしょう? ここは暖かくて、自然もいっぱいあるし、滅多に人間も入ってこないと思うわ」
お猿さんは森の中で、音や匂いを確かめるように五感を研ぎ澄ましている。
『……うん。さっきの狭い小屋よりは、ずっと気に入ったわ。前にいた島の住処には、変な穴ができて困っていたし……ありがとう、ソア』
お猿さんはそう言って、一人で森の奥へと入っていった。
ここで幸せになってくれたら嬉しいなと思いながら、私は彼女の後ろ姿を静かに見送る。
お猿さんの姿が完全に見えなくなると、私も森の中を進んで、ナターリアの神殿跡を目指した。
神殿の遺跡には、ナターリアの強い意識が残っており、教会や夢の中のように、彼女と自然に念話ができるのだ。
(これでやっと……ナターリアと話すことができる)
思わずこんなところまで来てしまったが、この際だからきちんと彼女と腹を割って話しをするつもりだ。
◇ ◇ ◇
朽ちた遺跡。
折れた柱に、残骸となった外壁、気の遠くなるような長い年月を雨風に晒され、ここを神殿と呼ぶには少々見窄らし過ぎる環境だが、ナターリアの気配だけはどんな教会よりも強い。
『数日ぶりだの、ソア』
えぇ、ナターリア……私ね、この数日間であなたに言いたいこと聞きたいことが山ほどあるんだけど……コホン。
とりあえず、あの最悪な付与スキルは外せー! こんのバカ女神ーっ!
『ひょっ?! ど、どうしたのだ、ソア? 額に青筋まで立てて……とても怖いぞ。なぜそんなにも怒っておるのだ?』
いや、怒るに決まってますよね?
あんな催淫効果なんぞ、まさか私が喜ぶとでも思ったんですか?
というか、やっぱりあれは女神の仕業だったんですね……まぁ最悪ですわ。
『ワシからのプレゼントお気に召さなかったのか……それは済まぬことをした。今、あの付与はきちんと消しておいたから……』
やはり……あのふざけた付与スキルはナターリアの策略だった。
私はこの後、しばらくの間文句と小言をずっと女神に聞かせたが、さすがのナターリアも反省したのか、ただ相槌を打って、何度も謝ってくるだけだった。
『話はこれで終わりか? お主に注意、警告されたことは重く受け止めておくのでな……』
まぁ、それはそれとして、お願いがあるんですけど……さっき、この島で離したピンクの猿さん、女神の聖獣にしてもらえませんか?
『ピンクの猿を聖獣に? それは何か目的があってのことなのか?』
あの猿さんが聖獣になれば、いざここで人間に存在がバレた時、捕まりにくくなるんじゃないかと思ったんです。
彼女の仲間は、時空の狭間に落ちて未だ行方不明だし、リオの魔力で魔物化した状態で彼女自身も異次元に落ち、ずっと散々な目に遭っています。
これではあまりにも気の毒すぎやしませんか?
と、まぁ私は少々強引に、女神へ改善策を提案してみた。
さて、女神よ……どう出る?
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