転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました[2]

みなみ抄花

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第三章

二十七話

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 別荘の庭があった場所。
 そこは今、いばらつるでできた緑のカーテンによって、視界が完全に遮ぎられている。
 かつて私が落ちてしまった時空の狭間……異次元空間へと繋がっている入口の、名残のようなものをリオと二人で発見してしまったからだ。
 今、異次元への割れ目は、小さな動物ですら通れないほどに細い隙間しか開いていなかったのだが、今後もし入口がまた大きく広がってしまったら、偶然近づいた者や周りの人たちを、絶対的に不幸にする。
(だから人が近づけないよう、リオが封印してくれて良かった……本当に)

 ここは住人が100人にも満たない、本当に小さな小島だ。
 封印した庭は、リオのご両親が管理する別荘の敷地内だし、関係者以外の人間が入ってくることはまずない。
 ましてやそのリオ自身が、庭に強力な封印を施してしまったのだから、この先の未来で、うっかり誰かが時空の狭間に接触してしまう危険度も、かなり下がったはずだ。
 もちろん、この別荘を使うリオのご両親やご兄弟には、きちんと事情を伝えておく必要はあるが……。
 私が行方不明になって、リオが魔力暴走を起こしたことは、リオの家族や一族の関係者には、みな周知されていることだ。
 なので、その原因となった危険な場所を隔離したともなれば、すんなりと受け止めてくれるだろう。
(というか、もはや感謝されるレベルよね)
 それ以前……リオが昨日のようにメンタル不足になったほどの魔法を解く者が、この世に簡単に出てくるとも思えない。
 この封印は、少なくともリオが生きている限り、安全に維持され続けるのだろう。

   ◇  ◇  ◇

 島の様子や、魔物化したピンクの猿さんが突然現れた謎も確認できたので、私たちはまたドラゴンくんを喚び出し、元々いたダッタンガラムの国まで戻ってきた。
「リオ、これからどうする?」
「特に決めてねーけど、逆にソアはどうしたい?」
「私は、とりあえず一回シャームの街に戻って、騎士団に預けたお猿さんと話してみたいなとは思ってる。仲間のこととか詳しく聞きたいしね」
「そうだな……まぁ、そうすっか」
 島の様子を確認した時、他のピンクの猿さんを一度も目撃することはなかった。
 それに魔物化した時に、教会をピンポイントで襲った理由も気になっている。
 その辺のことを、もっとしっかりお猿自身から確認したいのだ。
(それとは別に、ナターリアにも色々と物申したいところだけど……)
 どっちにしろ女神と接触するには、教会か夢の中でしかできない。
 シャームの教会が破壊されてしまった以上、ルルムの街へ一旦帰るか、やっぱり夢を見るしか方法がないのだが、そこまでして急いでいるわけでもない。
 あと一つ、接触できる場所もあるにはあるが……それはそれで、また大陸から移動しなければならないので大変なのだ。
(それにナターリアに聞きたい内容は、私につけられた催淫の付与効果のことだしね)
 昨夜のことは、少し思い出すだけでも恥ずかしいが、今はその付与も切れている。
 夜の間だけ、私がリオにスキルを使わなければ発生しない効果だから、こっちは全然後回しでいい。

   ◇  ◇  ◇

 私たちはシャームの街まで行き、騎士団が滞在する宿舎を再び訪ねた。
 そこで騎士団長さんから、例の猿のことについて尋ねると、すでにルルムの方へと移送が完了しているという報告を受ける。
「実は、魔物化した原因を詳しく知りたいと、王都の研究省にいる生物学者から頼まれてね。とりあえず今日はルルムのギルドに管理してもらって、明日は王都の方へとギルドの人間が運ぶ手筈になっている」
 あのお猿さんの対処……騎士団の立場上、普通に逃すとかは出来ないのだろうなぁとは思っていたが、現実は思っていたよりもシビアだった。
 でも……今ならまだ間に合う。

「今日はまだ、お猿さんはルルムの街にいるんですよね?」
「そう聞いているね」
「なら、今から馬で戻りゃあ間に合う。ルルムに行くか? ソア」
 私はリオの言葉に頷いた。
 まさかこんなにも早く、騎士団から移動させられちゃうとは思っていなかったが、会える機会はまだ……消えてない。
「何か緊急かね?」
「ちょっとお猿さんに確認したい事情がありまして……」
「なるほどな。それならば急いだ方がいい。明日には王都の研究室へと持っていかれてしまうから、そこに入ってしまうと生命の保障もきっとされん」
 私も騎士団長さんの言葉に同意見だ。

 今ここで、お猿さんの魔物化の原因って、リオの魔力暴走の影響だから、いくら調べても無駄ですよー? 
 原因調べたいならリオを研究した方がずっと効率的! なーんてこと、簡単に暴露することはできないし、リオの魔力が暴走したことは、王族やリオの家の一族など、一部の貴族しか知らないことになっている。
 私はちらっとリオの顔を見た。
「ん? なに?」
「ううん、別に……」
 リオだって、一歩間違えばこうやって史上最悪の変事として、討伐対象にされていたかもしれない。
 今は人の体を維持できているけれど……さ。
 リオが変質した姿はやっぱり怖かった。
 でも、本人もそれに二年も苦しんでて……居なくなった私にずっと助けを求めていたのだ。
 今は私の方がリオにいっぱい助けてもらってて、かなり大事にされている自覚はあるけど。
 それに私の思い立った行動が、いつだってリオを不安にさせていることも……。
 私たちは騎士団長さんにお礼を言った後、建物を出て、トクたちのいる馬の宿舎まで急いだ。
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