転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました[3]

みなみ抄花

文字の大きさ
26 / 35
第三章

二十六話

しおりを挟む
「リオ、その遺跡はここから遠いの?」
「この国の端っこから馬で数日はかかるかもな。行くならしっかり準備していかねぇと」
「そうよね……」
 何千年も前のこととはいえ、そんな危険な場所魔族発祥の地と分かっていて、人が近くに街を造るわけがないものね。
 でもそんなに遠いなら、ドラゴンくんと一緒に行くという手段もあるけれど……。
「ソアさん、その点は安心してくれ。今回の調査にかかる資金や移動手段含め、全てアランドの王国側で用意してくださっている。我々はこのまま王直属の兵団がいる訓練場まで向かえば、遺跡の近くで先行して動いている調査兵の野営場所まで、馬車で連れていってくれるだろう。まぁ、馬車だと当然、馬よりは時間がかかってしまうがね。しかし、王国側が手配してくださった貴賓用の馬車ではあるから、乗り心地はそれほど悪くはなさそうだぞ」
 ロバートさんはそう言うと、懐からダッタンガラム王からの手紙を取り出し、テーブルの上に置いた。
 その手紙を受け取ったリオは、広げてさっと軽く目を通すと「なるほど」と一言だけ呟いたあと、王の手紙をロバートさんに返した。
「つまり俺らは、現地での調査のみに焦点当てときゃーいいんだな」
「そうだとも。それ以外の細かいことは、全部この国の人間に任せておきたまえ。我々は我々のやるべきことをやるだけなのさ、ははは」
 ロバートさんはそう言って、自信満々に笑って見せた。
 その顔はやはり、リオと実の兄弟なんだなぁと思わざるを得ない、少々不適な笑みであった。
「私の方でも、ロバート様からそう聞いておりますね。アランド国に着いたら、まずは王国の兵団を尋ねるようにと。まぁまさかその内容が、魔族発祥の地から出てきた遺跡の調査だとは思いもしませんでしたけど……」
 涼しげな顔でそう静かに言葉を発するリュエルさん。
 その声色は少しだけ怒っているような……気がしないでもない。
(そっか……リュエルさんは最初、私たちを案内するように、色々とロバートさんに託されていたんだっけ……)

 それにしても……。
 もう何千年も前の魔族発祥の地って、一体どんなところなんだろう。
 こんな時、ナターリアに色々と聞くことができたら、少しは安心もできたのだろうが……。
 ナターリアに係る重要な遺跡の発見なのに、このタイミングで彼女と連絡が取れなくなってしまったのはいささか出来過ぎのような気もする。
「遺跡にはなんでも強い封印が施されていて、アランド兵だけでは調査が難航しているそうなんだ。あとの詳しい話はアランド兵のいる訓練場に着いてから聞いてみてくれ」
 ロバートさんはそう言うと、お店の厨房から出て来た食事を口に運んだ。
 そして深く味わうように、時間をかけてゆっくりと噛み締める。
「うむ、美味い。どうかね、ソアさん。ここの料理は」
「はい、スパイスが効いてとても美味しいですね」
「うむ、俺も同感だ」
 ロバートさんたら、いつの間に持ち込んだのか……。
 ワインを片手に持ち、優雅に口の中へ……ってこの人、またお酒飲んでるの?!

    ◇ ◇ ◇

 港のあった街から何日かかけてアランド王国の中心にある大きな街までやってきた私たちは、王国の兵士たちのいるの訓練場まで足を運んだ。
 アランド王国兵とされる兵士たちの格好は、まるでアサシンのような勇ましい黒装束姿であるが、砂漠の中を素早く動き、夜目のきく野生動物との戦いにはうってつけの装備なのだとか。
「やぁ、俺は君たちの王に頼まれ、ダッタンガラムから来国した、ロバート・ダンシェケルト次期侯爵だ。兵士たちの諸君、色々と話を聞いているとは思うが、遺跡までの移動の間、どうかよろしく頼むよ」
 ロバートさんの言葉を皮切りに、私やリオたちは各々挨拶をし、自己紹介を軽く済ませた。
 しかし、この場に集まっていた兵士たちの反応は薄い。
 アランド兵の兵長とは会話らしい会話ができたものの、黒く焼けた肌に意志の強そうな黒目を持つ彼らはとにかく寡黙で、鋭い視線だけがこちらへと常に注がれていた。
 そう、つまり今は、アランド兵たちとの間で、かなり張り詰めた空気になっている。
「ん、アランド兵たちよ、どうした……」
 ロバートさんは返答を求めるように、不思議な顔をして周りをキョロキョロしていたが、それでもアランド兵からの反応はなかった。
「客人方、アランドの兵はみな無駄口を叩きません。厳しい刺客の訓練を受けている者が多い場所です。こちらの国から調査をお願いしている身ではございますが、そこは何卒ご理解いただきますよう……」
「う、うむ、そうか。こちらも現地まで馬車を二台貸してもらえさえすれば、特に何も言うことはないしな。まずは彼らの誇りを尊重しよう」
「お客人、お気遣い感謝いたします。王城からすでに馬車が手配されていますので、そちらへご案内いたします」
 ロバートさんとアランドの兵長さんのやり取りを静かに見届けた私たちは、彼に案内された馬車へ、リオと二人で乗り込む。
 ロバートさんとリュエルさんはもう一つ別の馬車だ。
 この車体、見た目はかなりコンパクトで装飾もシンプル、非常に効率の良い姿をしているが、車内は思ったよりもずっと広く造られていて、ふわふわとした高級そうな絨毯も敷かれ、悪くない乗り心地だった。
 私とリオの二人ならば、交代しながら普通に横になって寝ることができそうである。

「馬車の中か……激しそうだな」
「そうねぇ、かなり揺れそうね……」
「ソアが耐えれるかどうか……」
「え、今は私もナターリアの加護のおかげで全然酔わなくなったわよ?」
 そう、この世界に転生したばかりの頃は、びっくりするくらい馬車酔いが酷くて(船内でも)中々大変だったのだ。
 でも今は女神の加護で全然平気。
「車酔いじゃなくて、こっち……」
 そう言ってリオは、私の下腹の辺りを指でなぞった。
 私はその動作にびっくりして車内のイスから落ちそうになるが、リオが咄嗟に私の腰を掴むとそのまま抱き抱えられ、彼の膝の上に移動した。
「ソアのこの格好……すげーそそるんだよね」
「ちょ、リオ、急に変なところめくらないで……」
 今の私はアラビアン衣装に似た格好をしているため、薄いレースを重ねたようなトップスとパンツが特徴のヘソ出しルックになっている。
 試着した時は、かなり胸の辺りが強調された服だなとは思っていたけれど、その時はリオも何も言っていなかったから、こういうのは趣味じゃないのかなって勝手に思っていたんだけど……。
 リオさん、ここにきてまさかのご乱心?
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...