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二十二話「寂しいです兄上」
しおりを挟む兄上はボクをお姫様抱っこし、宿の部屋まで運んでくれた。
ハンクが宿の中で一番広い部屋をとってくれた。部屋の真ん中に天蓋付きのベッドがどーんと備え付けられていた。
兄上がボクをベッドに降ろすと、ボクの体重でベッドがきしむ。
「馬車に揺られ疲れただろう? ゆっくり休め、食事も後で部屋に運ばせる。私は隣の部屋にいる。何かあったら呼べ」
「はい、兄上」
やっぱり兄上とは別々の部屋なんだ、寂しいな。
「兄上」
兄上の袖を掴み瞳を閉じる。
兄上はボクの額に唇を落とすと、部屋を出て行った。
額に手を当てると、ちょっとだけ熱を持ってる気がした。
馬車の中で兄上とたくさんキスをした。あれから数分もたってないのに兄上の唇が恋しい。
兄上にとっては人工呼吸のようなものなのに、ボクは何を期待してるんだ。
兄上の罪悪感につけこんでキスをねだるなんて、最低だ。
ベッドに寝転がり枕をギュッと抱きしめる。
兄上はボクとキスをするのに飽きてしまったのかな?
それともキスをしてもボクに光の魔力が戻らないことが分かって、キスするのをやめたのかな?
「寂しいです、兄上」
兄上の温もりが恋しい。兄上の代用に枕を抱きしめてみたけど、寂しさをうめられそうにない。
◇◇◇◇◇
結局あのあと、兄上がボクの部屋を訪れたのは、食事のときと、お風呂に入るための着替えを手伝ってくれたときだけだった。
「兄上、パジャマを着せてください」とお願いしたら「パジャマは自分で着ろ」と冷たくあしらわれてしまった。
お休みのキスもない。
朝も食事を持ってきて、テーブルに食事を置くとすぐに部屋を出ていってしまった。おはようのキスもない。
着替えも淡々と手伝ってくれるだけ。
部屋を出るとき兄上にフードを被せられ、顔を隠すように言われた。理由を聞いたら「お前の顔は目立つ」と返された。
金髪碧眼だったときならいざ知らず、茶髪に灰色の目になったボクが目立つとは思えない。
ヴォルフリック兄上もボクの灰茶色の髪とねずみ色の瞳を、みっともないと思っているのかな?
他の人にどう思われてもかまわない、父上や母上やワルフリート兄上やティオ兄上に拒否されてもそこまで傷つかない。
でもヴォルフリック兄上に拒否されるのはつらい。ヴォルフリック兄上に拒絶されたら、ボクは悲しくて死んでしまう。
◇◇◇◇◇
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