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十七話「二人の御者」
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ヴォルフリック視点
◇◇◇◇◇
廊下に出ると話し声が聞こえた。
話し声は兵や御者の休憩室から聞こえてきた。
「ブロックそんなに飲んでいいのか? 明日はエアネスト様をシュタイン侯爵領まで送って行くんだろう?」
くせ毛の濃い茶色の髪の男が、栗色の髪の男に話しかけていた。
「大丈夫だってデール、酒の一杯や二杯飲んだってなんてことねーよ」
ブロックと呼ばれた男が、赤ら顔で顔の前で手を振る。
「それにしてもお前も大変だな、おちぶれた元王子様を乗せて、シュタイン侯爵領まで行くなんて」
濃い茶色のくせ毛の男、デールが同情気味に言った。
「そうでもねぇよ、役得だと思ってる」
ブロックがニヤリと笑う。
「役得? どういう意味だよ?」
「エアネスト様はあの通り美形だろ? しかも金髪碧眼を失い、父である陛下や、母である王妃様に見捨てられ、王位継承権を剥奪されたかわいそうなお人だ」
ブロックがそう言って酒をあおりニヤニヤと笑う。
聞いていて胸糞が悪くなってきた。
「だからそれのどこが役得なんだよ? エアネスト様に親切にしたところで、陛下や王妃様からは何の褒美ももらえないぜ?」
デールが首をかしげる。
「分かってねぇなデールは、エアネスト様が陛下や王妃様に見捨てられてるから役得なの!」
「どういう意味だよ?」
ブロックが下卑た笑みを浮べる。
「陛下や王妃様に見捨てられた元王子様に、俺がどんなご無体を働いても、おとがめがないってことだよ!」
ブロックがゲヘヘと品なく笑う。
「シュタイン城までは三日、途中の宿屋や酒場なんかで休憩を取るとき、エアネスト様を部屋に連れ込みいやらしい事をしたって、誰も俺をとがめないってこと!」
アハハと笑い、ブロックが酒をあおる。
「言うね、お前そっちの趣味?」
もらったばかりのバスタードソードに手をかける。
二度と口がきけないように、奴らの首を落としてやろうか。
「俺はノンケだよ、だけどあれだけの美少年なら話は別だ。俺のちんこなしじゃイけない体にしてやって、いっぱい泣かせてやりたいね!」
「ゲスだなお前、でもそういうお役目ならオレも代わってほしいわ」
「やだねこんな美味しい仕事がそうそうあるもんか! ガキのおもりをしてやって、寂しいお体を慰めてやって、うまくいけば愛人として囲ってもらえて、一生楽しく暮らせるぜ!」
ブロックがヒャハハと笑う。
「あっ逆だ! 俺のちんこなしじゃイけないエアネスト様を性の奴隷にして、俺が外に女を囲うんだ!」
「お前鬼畜だな、でも気持ち分かるわ! いくら可愛くても男じゃなぁ~」
「女なら俺の子種を注いで、孕ませてやるのになぁ!」
こいつらは斬り殺してもいいな。バスタードソードの柄に手をかける。
「でもヴォルフリック様も一緒に行くんだろ? 精霊の血を引くあの方がそんなゲスなこと許すかね?」
「平気平気! ヴォルフリック様は元黒髪で陛下に捨てられて牢屋に入っていたという噂だ! そのことを農民にバラされたくなければ言うことを聞けって、脅してやればヴォルフリック様なんて簡単に言いなりになるさ!」
「その情報どこで仕入れたんだよ?」
「ワルフリート王子様がおっしゃっていた」
「マジか! じゃあ本当なんだ!」
ワルフリートは頭だけでなく口も軽いようだ。
こいつらのゲスなおしゃべりに付き合うのもうんざりだ。そろそろ消えてもらおう。
「おい、貴様ら」
低い声でうなるように声をかければ、先ほどまで赤ら顔で楽しげに話していた二人の顔から一気に血の気が引いた。
「ヴォ、ヴォルフリック様っっ!」
こんなゲスな奴らにバスタードソードを使うのはもったいない。
素手で殴り飛ばし、二度と軽口がたたけないようにボコボコにしてやった。
それでも腹の虫がおさまらないので、私の古巣、牢屋にぶち込んだ。
「出してください!」
「お許しください!」
と雑魚が吠える。
「ここの牢番はいい加減でな、私が入っていたときは三日に一度、食事を抜かれた」
昨日まで私が入っていた牢屋だ。住み心地の悪さは私が保証する。
「そういえばその牢番は、先日農民を誘導した罪で捕まったのだったな。そうなるとこの牢を訪ねる者はしばらく現れないな」
クズどもの顔が青から紫へと変わる。
「ここに誰かが訪ねてきたとき、貴様らの息がまだあるといいな」
「嫌だ!」「出してくれ!」「助けてくれ!」「死にたくない!」と虫けらが泣き叫ぶのを無視し、私は牢屋を後にした。
御者の干物は何日で出来上がるだろうか? もっともその頃には私はシュタイン領にいて、奴らの干物を見ることはできぬが。
◇◇◇◇◇
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廊下に出ると話し声が聞こえた。
話し声は兵や御者の休憩室から聞こえてきた。
「ブロックそんなに飲んでいいのか? 明日はエアネスト様をシュタイン侯爵領まで送って行くんだろう?」
くせ毛の濃い茶色の髪の男が、栗色の髪の男に話しかけていた。
「大丈夫だってデール、酒の一杯や二杯飲んだってなんてことねーよ」
ブロックと呼ばれた男が、赤ら顔で顔の前で手を振る。
「それにしてもお前も大変だな、おちぶれた元王子様を乗せて、シュタイン侯爵領まで行くなんて」
濃い茶色のくせ毛の男、デールが同情気味に言った。
「そうでもねぇよ、役得だと思ってる」
ブロックがニヤリと笑う。
「役得? どういう意味だよ?」
「エアネスト様はあの通り美形だろ? しかも金髪碧眼を失い、父である陛下や、母である王妃様に見捨てられ、王位継承権を剥奪されたかわいそうなお人だ」
ブロックがそう言って酒をあおりニヤニヤと笑う。
聞いていて胸糞が悪くなってきた。
「だからそれのどこが役得なんだよ? エアネスト様に親切にしたところで、陛下や王妃様からは何の褒美ももらえないぜ?」
デールが首をかしげる。
「分かってねぇなデールは、エアネスト様が陛下や王妃様に見捨てられてるから役得なの!」
「どういう意味だよ?」
ブロックが下卑た笑みを浮べる。
「陛下や王妃様に見捨てられた元王子様に、俺がどんなご無体を働いても、おとがめがないってことだよ!」
ブロックがゲヘヘと品なく笑う。
「シュタイン城までは三日、途中の宿屋や酒場なんかで休憩を取るとき、エアネスト様を部屋に連れ込みいやらしい事をしたって、誰も俺をとがめないってこと!」
アハハと笑い、ブロックが酒をあおる。
「言うね、お前そっちの趣味?」
もらったばかりのバスタードソードに手をかける。
二度と口がきけないように、奴らの首を落としてやろうか。
「俺はノンケだよ、だけどあれだけの美少年なら話は別だ。俺のちんこなしじゃイけない体にしてやって、いっぱい泣かせてやりたいね!」
「ゲスだなお前、でもそういうお役目ならオレも代わってほしいわ」
「やだねこんな美味しい仕事がそうそうあるもんか! ガキのおもりをしてやって、寂しいお体を慰めてやって、うまくいけば愛人として囲ってもらえて、一生楽しく暮らせるぜ!」
ブロックがヒャハハと笑う。
「あっ逆だ! 俺のちんこなしじゃイけないエアネスト様を性の奴隷にして、俺が外に女を囲うんだ!」
「お前鬼畜だな、でも気持ち分かるわ! いくら可愛くても男じゃなぁ~」
「女なら俺の子種を注いで、孕ませてやるのになぁ!」
こいつらは斬り殺してもいいな。バスタードソードの柄に手をかける。
「でもヴォルフリック様も一緒に行くんだろ? 精霊の血を引くあの方がそんなゲスなこと許すかね?」
「平気平気! ヴォルフリック様は元黒髪で陛下に捨てられて牢屋に入っていたという噂だ! そのことを農民にバラされたくなければ言うことを聞けって、脅してやればヴォルフリック様なんて簡単に言いなりになるさ!」
「その情報どこで仕入れたんだよ?」
「ワルフリート王子様がおっしゃっていた」
「マジか! じゃあ本当なんだ!」
ワルフリートは頭だけでなく口も軽いようだ。
こいつらのゲスなおしゃべりに付き合うのもうんざりだ。そろそろ消えてもらおう。
「おい、貴様ら」
低い声でうなるように声をかければ、先ほどまで赤ら顔で楽しげに話していた二人の顔から一気に血の気が引いた。
「ヴォ、ヴォルフリック様っっ!」
こんなゲスな奴らにバスタードソードを使うのはもったいない。
素手で殴り飛ばし、二度と軽口がたたけないようにボコボコにしてやった。
それでも腹の虫がおさまらないので、私の古巣、牢屋にぶち込んだ。
「出してください!」
「お許しください!」
と雑魚が吠える。
「ここの牢番はいい加減でな、私が入っていたときは三日に一度、食事を抜かれた」
昨日まで私が入っていた牢屋だ。住み心地の悪さは私が保証する。
「そういえばその牢番は、先日農民を誘導した罪で捕まったのだったな。そうなるとこの牢を訪ねる者はしばらく現れないな」
クズどもの顔が青から紫へと変わる。
「ここに誰かが訪ねてきたとき、貴様らの息がまだあるといいな」
「嫌だ!」「出してくれ!」「助けてくれ!」「死にたくない!」と虫けらが泣き叫ぶのを無視し、私は牢屋を後にした。
御者の干物は何日で出来上がるだろうか? もっともその頃には私はシュタイン領にいて、奴らの干物を見ることはできぬが。
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