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122話「⑮」最終話

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新月のヌーヴェル・リュンヌクロシェットの力を借り、ヴェルテュ様の転移の呪文でボワアンピール帝国に帰ってきた。

ご飯を食べてお風呂に入って、今日はもう眠いな~~ってときに、ノヴァさんにベッドに押し倒された。

「シエル、正式に婚約したことだし、ひと目も身分も気にすることなくなった、今夜は思う存分セックスしたい」

ノヴァさんの目はギラギラしていた、そういう飢えた獣のような目をしたノヴァさんも好きだよ。

「ノヴァさんそのことなんですが、しばらく素股で我慢してもらうことになります」

「な、なぜだ!」

「あのね……俺、赤ちゃんが出来たんです」

「……」

「ノヴァさんの子だよ」

「……」

「だからセックスはこの子が生まれて来るまで、お預け」

「……」

ノヴァさんは何も話さなかった。もしかして子供ができたのが嬉しくなかったのかな?

「…………った!」

「えっ?」

「やったぁぁぁぁぁあああっっ!!」

しばらく間があって、ノヴァさんがガッツポーズした。

耳がキーンとする、ノヴァさん声が大きいよ。

「シエルの子なら絶対に可愛いぞ! 嫁に出さんぞ! 一生家に置く!! シエル似の子供が欲しい! パパと呼ばせたい!!」

ノヴァさんが俺をお姫様抱っこしてくるくると回りだした。

「ちょっ、ノヴァさん……目が回るよ……!」

「すまない、嬉しくてつい」

ノヴァさんは俺をベッドに優しくおろしてくれた。それからまた叫びだした。

「やったぞぉぉぉおおおお!! シエルとの間に子が出来たぁぁぁぁああ!!」

ノヴァさんはこんな感じで一時間ぐらいはしゃいでいた。

「シエル、一生大切にする、三人にで幸せな家庭を築こう!」

一時間後、叫び回っていたノヴァさんが俺の前に座り、俺の手を握りしめた。

「はい、ノヴァさん、みんなで仲良く暮らしましょう」

赤ちゃんにザフィーアの魂が宿っていることはまた後で話そう。







俺とノヴァさんの結婚式は、婚約発表の2か月後に行われた。

俺のお腹が目立つ前に~~ということで大急ぎで準備が行われた。

ノヴァさんが皇族の席を抜け、アインス公国に婿入りすると思っていた人もいるようだけど、そんなことをヴェルテュ様が許すはずがない。

ノヴァさんはヴェルテュ様が皇帝として即位されたあとは皇弟として、ボワアンピール帝国に残るのだ。

俺の妊娠時期がノヴァさんとの婚約前だったから、エルガーとの子じゃないのか! とか悪口言う人間が出てくるかな~~って想像してたんだけど……予想に反してそんな人は一人も現れなかった。 

一度「あなたはカルム様に相応しくありませんわ!」と言いに来た公爵令嬢がいたけど、次の日から姿を見なくなった。

「カルム殿下とザフィーア公子にはアインス公国に住んでいただきたい!」と言いに来たアインス公国の貴族もいたけど、やはり次の日から姿を見なくなった。

周りの人に事情を聞こうとしたけど、公爵令嬢とアインス公国の貴族の名前を出した途端、みんな真っ青な顔をして話を切り上げてどこかに行ってしまう。

多分だけどヴェルテュ様か、ノヴァさんが、秘密裏に彼らを消したんじゃないかと思ってる。ヴェルテュ様が裏で始末した可能性が濃厚かな。

そんな訳で俺とノヴァさんの結婚式の準備は順調に進み、6月のある晴れた日、ボワアンピール帝国の教会で、俺とノヴァさんは結婚式を挙げた。

「永遠に愛することを誓う、シエル」

「俺も永遠にノヴァさんを愛します」

こうして俺とノヴァさんは夫婦になった。





☆☆☆☆☆



――8か月後―― 




俺そっくりの赤ちゃんが生まれた、金色の髪、青い目、白い肌の可愛い女の子だ。

「名前はシエルJrにしよう!」

「その名前もいいですけど、名前はもう考えてあるんです。『サフィール』って名前はどうでしょう? 『ザフィーア』のボワアンピール帝国語読みなんですが」

前世がザフィーアだったから今世はサフィール、ちょっと安直過ぎたかな? でも他に名前が思いつかなくて。

「サフィールか良い名前だ、サフィール、パパだよ」

ノヴァさんは赤ちゃんに夢中だ、自分で産んだ娘なのだがちょっとだけ嫉妬してしまう。

「シエル、サフィールも寝た事だし、10か月振りにセックスを……!」

サフィールが眠った途端これなので、ノヴァさんの優先順位の一番は俺のままのようで少し安心した。

ちなみにサフィールは別の部屋で乳母が面倒を見ている。

「はい、ノヴァさん」
 
それに応じてしまう俺も俺なのだが……、妊娠中ずっと我慢していたので、ノヴァさんのペニスで中を突いてほしい気持ちを抑えられなかった。

その日はノヴァさんと朝までエッチした。

そんな訳でこのあとまた子供を授かることになる。

二人目はノヴァさんによく似た顔立ちの、銀色の髪に紫の瞳の可愛い男の子だった。

男の子には、ボワアンピール帝国で博愛や慈悲を意味する「シャリテ」と名付けた。



☆☆☆☆☆ 



――3年後――



サフィール4歳、シャリテ3歳。

サフィールは俺とノヴァさんにはあまり懐いてくれなくて……祖父のアインス公爵に懐いている。

サフィールはアインス公爵家の親戚で、サフィールの一つ下のグリという男の子と仲良しで、二人でよく一緒に遊んでいる。

アインス公爵とグリは月1ぐらいの頻度でボワアンピール帝国に遊びに来ている。

グリはどこかアモルドさんに似てる、濃い茶色い髪に灰色の瞳……アモルドさんは転生してグリになったのかな?

アモルドさんは生前ザフィーアに惚れてたみたいだしな……。

アモルドさんは立花葵たちばなあおいに犯されたことに耐えられなかったらしく、悪竜オードラッへとの戦いのあと姿を消した……それっきり行方不明だ。

もしかしたら生きてるのかもしれないけど、グリに転生して前世で好きだったサフィールの側にいられた方が幸せかも……と考えてしまう。

アモルドさんは存命でどこかで幸せに暮らしているかもしれないから、俺の憶測だけど。

「サフィールは嫁にやらないからな!」

ノヴァさんはグリが遊びに来るたびに、アインス公爵とグリを威嚇している。

ノヴァさんは相変わらず、大人気がない。

グリはアインス公爵の親戚だし、アインス公爵にはザフィーアしか子供がいなかったし、アインス公国を継ぐのは多分サフィールだ。

ボワアンピール帝国で育ったサフィールがアインス公国の民に受け入れられるには時間がかかるだろうし、アインス公国育ちでアインス公爵の親戚のグリとの婚約はサフィールにとっても悪い話ではない。

サフィールの前世のザフィーアは、生まれた時から婚約者が決められていた。(しかも婚約者はゴミクズ王子のエルガー)

なので今世ではサフィールに好きな人と結婚してほしいし、まともな相手に惚れてほしいんだ。グリなら悪くないと思うんだ、まぁまだ先の話だけどね。

今は庭を走り回る子供たちをほほ笑ましい気持ちで見守っている。







「シャリテ、この文字が読めるかな?」

「はい伯父上、これは『鳥』です」

「正解だよ、シャリテは賢いね、じゃあこれは?」

「それは『花』です、伯父上」

「凄いよシャリテ、天才だね!」

ヴェルテュ様はシャリテを溺愛している、今日も公務の合間をぬってシャリテに読み書きを教えている。

ヴェルテュ様は病弱な先代の皇帝から帝位を譲り受け、皇帝になった。

そのヴェルテュ様が「シャリテになら皇帝の地位を譲ってもいいよ」と言っている。

ヴェルテュ様にはまだ子供がいないし、シャリテが次の皇帝という可能性もある。

シャリテはまだ3歳なのに受け答えがしっかりしていて、文字の読み書きもできる、ヴェルテュ様のおっしゃる通り本当に天才かもしれない。

ヴェルテュ様に育てられたシャリテの性格が歪んでしまわないか、それだけが心配だ。

天使のように可愛いシャリテが、ヴェルテュ様に育てられたことによって、腹黒冷酷ブラコンヤンデレサイコパスストーカー男になったらどうしよう……!? 

ヴェルテュ様がシャリテを溺愛するようになってから、ノヴァさんといちゃいちゃしていてもヴェルテュ様が何も言ってこなくなったのはいいんだけど……親としてシャリテの教育をヴェルテュ様に任せっきりでいいものか悩んでしまう。

シャリテの名前の意味は「博愛・慈悲」だから大丈夫だろうって? ヴェルテュ様の名前の意味は「徳・美徳」、カルム様の名前の意味は「平静・冷静」だよ、名が体を表すとは限らない、だから不安なの。

なんにしてもサフィールはアインス公爵に取られ、シャリテはヴェルテュ様に取られてしまった。子供が二人もいるのに俺とノヴァさんに懐いてくれる子が一人もいないのは寂しい。

「シエル! 3人目を作ろう! 3人目は二人で溺愛しよう! 3人目は外に出さない! 誰にも会わせない! 嫁にも婿にもいかせない!」

確かに俺も3人目がほしい、嫁にも婿にも出さないのはどうかと思うが。

「ボワアンピール帝国の皇族の次男は運命の相手にしか勃たない呪いをかけられるんですよね? しかも運命の相手=好きな人とは限らないんでしょう?」

せっかく見つけた運命の相手が生理的に受け付けない異性または同性の可能性もあるんだよな。ヴェルテュ様の先祖が考えただけあって質の悪い呪いだよ、性格の歪みが呪いに反映されてる。

ノヴァさんのときはたまたま好きになった人=運命の相手だからよかったようなものの。

「もし男の子が生まれて、勃たない呪いにかかっていたらと思うと不憫で……」

「前にも説明したが、次男が全員不能の呪いにかかるわけではない。歴代の皇族の中には次男として生を受けても、呪いにかからなかった者もいる」

「そうなんですか?」

うーんでもなぁ、呪いにかからない可能性はゼロではないんだよな。

「3人目が女の子という可能性もある」

「そうなんですよね」

「シエル似の女の子がほしい! 毎日溺愛して『パパ、ママ大好き!』って言わせたい!」

悲しいかな、サフィールにもシャリテにも「パパ、ママ大好き」って言われたことがないんだよな~~。

俺似の女の子はすでにサフィールがいるけど、サフィールは俺とノヴァさんに懐いてくれない……。

サフィールがノヴァさんに懐いていたら懐いていたで、俺はサフィールにめちゃくちゃ嫉妬したと思う、親心とは複雑だ。

「俺はノヴァさん似の男の子がほしいです」

ノヴァさん似の男の子はすでにシャリテがいるけど、シャリテはヴェルテュ様にだけ懐いていて、俺たちには甘えてもくれないからなぁ……。

「「両親に懐く子がほしい、その子を溺愛したい」」

ノヴァさんと声が揃った。

「シエル、今から3人目を作ろう!」

「そうですね、俺もあと一人ぐらいほしいと思っていたんです!」

次に生まれてくる子が男の子で、不能の呪いにかかっていたとしても、俺とノヴァさんが全力で運命の相手が見つけるから、だから安心して生まれてきてね。







このあとノヴァさんと子作りに励んで、3人目を授かった。

生まれてきた子が男の子だったのか女の子だったのか、俺似だったのかノヴァさん似だったのかはご想像にお任せします。




――終わり――





最後まで読んでくださりありがとうございます。
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