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七十五話「立花葵②」
しおりを挟むーー水の神子視点ーー
「今日も立花さんが給食をがっついてる」
「さもしい、一日一食って噂マジなの?」
「お腹空いてるんでしょ? 私達の分もわけてあげるね」
男に貢いで子供に暴力を振るう母親が子供に手間と金などかける訳がなくて。ボクは毎日同じ服を着ていたし、いつも腹を空かせていた。
まともな食事といえるのは給食のみ。
その給食に、クラスメイトの食べ残しの味噌汁やサラダが乗せられる。
「量が増えたでしょ、嬉しい立花さん?」
「感謝してよ」
「ほら、お礼はどうしたの?」
食器の上には残飯と化した給食……これでは食べられない。
ちらりと先生を見る、眼鏡にショートカットの地味な女の先生。先生はボクとは目を合わせず淡々と食事をしている。
いじめっ子のリーダーの親はPTAの会長だっけ。取り巻き二人の親はPTA会長夫人の腰巾着だったか。親が腰巾着なら子供もそれに習うわけか。
クラスメイトのクスクスという笑い声が聞こえる。面倒な事には関わらず冷ややかに笑う薄情な連中。
イジメっ子のリーダーは腰まで届くサラサラのストレートロングヘアの少女。彼女はどこかのブランドの一点ものだという漆黒のワンピースを身にまとっていた。
目の前で笑うこの少女は、食べる物にも、住むところにも、着る物にも困ったことがないのだろう。
最初から何でも与えられていて、それを当たり前だと思って享受し、感謝すらしない、ボクが一番嫌いなタイプの人間。
◇◇◇◇◇
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