BL「幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで」第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

文字の大きさ
上 下
50 / 131

五十話「モンターニュ村の少年①」

しおりを挟む


「ふぅ~」

杖を握りため息を付く。

水晶クリスタロの杖、お値段金貨八千枚。

俺の身につけている濃紺のローブ、星のシュテルン・ささやきフリュステルン、お値段金貨五千枚。

白のブーツ、賢者ヴァイザーの靴、お値段金貨三千枚。

ホワイトのワンピース、妖精の歌フェー・リート、お値段金貨一万枚。

総額金貨二万六千枚。

ちなみに昨日泊まった高級宿のスイートルームのお値段、一人一泊金貨百枚。

最初に泊まったリーベ村の宿が一人一泊金貨一枚だから、金貨一枚≒一万円ぐらいだと思う。

総額金貨二万六千枚、日本円にして二億六千万円の装備。羽のように軽い素材でできているのに、俺にはとてつもなく重たく感じた。

「はぁーー」

もう一度深く息を吐く。

ノヴァさんからの贈り物がこんなに高額だとは思わなかった。

お金の価値観が分からなくなってきた。俺は生きている間にノヴァさんにお金を返せるだろうか?

こんなことならベビードールとレースのTバックぐらい着て上げればよかった……とちょっとだけ後悔している。

S級冒険者ってそんなに儲かるの? それともノヴァさんの実家がお金持ちなのかな?

朝食を終えチェックアウトした俺たちは、帝都フォレ・カピタールを目指す事になった。

部屋に戻ったノヴァさんはセックスをしたそうな目で俺を見てたけど、なんとか説得して宿を出た。

リーベ村からラック・ヴィルに移動してときのように、駅馬車に乗ると思っていたんだけど。ノヴァさんが「駅馬車の中ではシエルといちゃいちゃできない!」と言い出した。

そんな訳でノヴァさんは馬車を借りに行っている。

ノヴァさんが、ついに移動時間にまでいちゃいちゃを求めるようになった。

王都までは馬車で一日かかるって言ってたな、一日ぐらい我慢できないのかな……?

馬車の客席で、ノヴァさんに服のボタンを外されているところを容易に想像できてしまう自分が悲しい。

ノヴァさんが買ってくれた服は、前にボタンがついているくるぶし丈の白のワンピース、袖や裾に金の糸で刺繍ししゅうが施されている。

妖精の歌フェー・リートという名前の通り、妖精の歌声が糸になりそれを織ったものだそうだ。炎、水、毒、麻痺などのアーテムの攻撃を八割カットしてくれるとか。金貨一万枚するだけあってすごい効果だ。

それはともかく、フロントボタンワンピースはリーベ村で買っもらったのと同じタイプだ。ノヴァさんはこの形のワンピースを気に入っているらしい。ボタンを全部外すと裸になってしまうからだろう、絶対エロい目的だ。

馬車を取り扱っている店の入口で待っていると、隣の建物から少年が出てきた。

出てきたというより放り出されたと言った方が正しい。

「出てけクソガキ!」

屈曲そうな男二人が子供を投げ飛ばし、罵声を浴びせる。

「待って! 助けて……! 村の人たちが病にかかって動けないんだ!」

転がされた少年が立ち上がり、男たちにしがみつく。

まだ十歳ぐらいなのに、すごい根性だな。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

処理中です...