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二十話「運命の人⑥」
しおりを挟むーーノヴァ視点ーー
シエルの身を清め、マントにくるみお姫様抱っこをして森を抜けた。
シエルは私の首にしっかりと両腕を回し、私が唇にキスすると恥ずかしそうにほほ笑んだ。
まるで恋人同士のようだ。性行為中のシエルの乱れた姿を思い出し、また下半身に熱が集まる。
あんなにも私の男根を求めて来たのは、はじらい死草の効果だけではないと思いたい。
このまま王都にある自宅まで連れて帰り式を上げたい……。
いやいや落ち着こう、シエルはシャツ一枚なのだ。まずは服を用意しなくては、お風呂にも入れてやりたいし、ゆっくり休ませてもやりたい。
そんな幸せな空想を描いていたら、リーヴ村についていた。
幸せな妄想は村についてすぐに打ち砕かれた。
シエルは冒険者になりたいと言い出すし、冒険者は危険だと諭せば酒場で適当な仲間を見つけるなどと言い出す。
こんなあどけなさを残す華奢な少年が冒険者をしていたら、森やダンジョンで仲間や盗賊に輪姦される未来しか見えない。
宿屋に行こうと誘えば渋るし、酒臭い男に声をかけられればついて行こうとする。
絶対にだめだ! シエルは私のものだ! 誰にも触らせない!
シエルをお姫様抱っこしたまま、やや強引に宿屋に連れて行く。
宿屋に入るとシエルに対し一斉に視線が向けられた。汚い目でシエルを見るな! 宿屋にいた全員を威嚇し、カウンターで鍵を受け取る。
宿屋の女将にダブルベッドしか空いてないと言われ、心臓がビクリとした。シエルに拒否されたらどうしようかと心配したが、シエルは何も言わなかった。
沈黙を合意と都合よく解釈し部屋に向かう。
扉を開けると、ダブルベッドが部屋のほとんど面積を占領するように設置されていた。
シエルと密室で二人きりになり臓がドキドキと音を立てる。今夜はあそこでシエルと、解毒治療ではなく純粋な性行為をしたい。
一緒の空間にいると犯してしまいそうなので、食料を買いに行くので先にシャワーを浴びるように伝え部屋を出る。
部屋を出てすぐに心配になった。私がいない間にフラフラとどこかに行ってしまうのではないか? 知らない男が訪ねてきても無警戒に扉を開けてしまうのではないかと。
「施錠を忘れるな、私以外の者が尋ねて来ても決して扉を開けてはいけないぞ!」
と釘を刺し部屋をあとにした。シエルは子供じゃないんですからと言いたそうな顔をしていた。
その辺の子供の方がまだ警戒心があると言いたかったが、飲みこんだ。
シエルはおそらく育ちがいい。育ちの良い少年がなぜ手を縛られシャツ一枚で川で溺れていたのかは分からない。詮索したら逃げられてしまいそうで聞けない。
シエルが何者でも構わない。手放すつもりはない。シエルがどこの誰で過去に何があったとしても、それも含めてシエルの全てを受け入れる。シエルは初恋の人なのだから。
中から鍵がかかる音を確認し、一階に向かう。
宿屋のカウンターで食料と服と靴を買った。「連れに似合う服を」と注文し中身を確認せずに受け取った袋にまさかあんなものが入っていようとは。
◇◇◇◇◇
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