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五話
しおりを挟む◇◇◇◇◇レオナルド視点◇◇◇◇◇
その者の金の髪は、太陽の光よりも眩しい。
か細い手でショートソードを握るその姿は、生まれたての仔鹿のように愛らしい。
ショートソードの重さで、足が震えているからそう見えるのかもしれぬ。
庇護欲を掻き立てるその姿に、後ろから抱きしめたい衝動にかられる。
折れそうなほど細い腰に手を添え、手取り足取り剣の指導をしたい。
白く細い首すじに口づけを落としたら、あの者はどのような反応をするだろうか?
慌てふためくさまを近くで拝みたい、あわよくば麗しい桃色の唇に私の唇を重ねたい。
「いつ見ても、愛くるしい」
ぼそりとつぶやいた言葉は、誰にも拾われることはなかった。
「気持ち悪い、もはやストーカーだね」
いや聞かれていた。
隣に立つ悪友を睨みつける。
「地獄耳だな、ミハエル」
「いや、普通に聞こえるよね? 結構大きな声で言ってたし」
「そうか、なら周りの者はなぜ反応しない?」
周囲を見ると、クラスメイトはみな一心不乱に剣を振るっていた。
「いや聞こえていても突っ込めないよね? 相手がミュールフェルト公爵家の嫡男じゃ」
悪友はそう言って、苦笑いを浮かべた。
ミュールフェルト公爵家の子息である私に突っ込みを入れるこの男の身分は王太子、私と同い年で幼なじみで悪友だ。
ベルリッツの王族特有の銀の髪と紫の目を持っている。
女子生徒に人気が高いが、なぜこやつがモテるのかは私には皆目見当がつかない。
口が悪く、人をからかうのが好きな性格、良いのは身分と育ちぐらいしかないように思える。
女生徒たちはミハエルのどこに惹かれているのか? 謎だ。
それに比べて、あの者は美しい。
黄金色の髪、サファイアのように輝く瞳、雪のように白くきめ細やかな肌、くりくりと大きな瞳に対象的に小さく可愛らしい口。
華奢な体は抱きしめたら折れてしまいそうだ。
あの小さな口に私の逸物は入るのだろうか?
いや最初は下の口からか。あの者の尻はどのような色と形をしているのだろう?
遠くから愛しい人を視姦……いや眺めていたら、横から茶々が入った。
「またニヤニヤしながらサフィールくんのことを見てる」
「誰がいつニヤニヤしていた! それよりなぜ私が愛しているのがサフィールだと分かった?」
「どっから突っ込んだらいいのか……」
ミハエルがはぁ~と息を吐く。
「まず、にやけてるの自覚して、次にサフィールくんと一回も話したこともないのに『愛している』とか重い、最後にあれだけジロジロ見てたら誰だって気づくよ!」
そんなに私はにやついていたのだろうか? いやそれより私の愛が重いとはどういう意味だ? それだけ真剣にサフィールを思っているということだ、それのどこが悪い?
しかしそれ以上に気になる言葉がある……。
「誰でも気づくと言ったな? まさかサフィールも私の好意に気づいているのか……?」
サフィール・ハルシュタインを初めて見たのは入学式の日。
輝く金色の髪に愛らしい顔立ち、庇護欲を掻き立てるか弱い見た目に目を奪われた。
なぜ後二年遅く生まれなかったのか、そうすればあの者と同じクラスになれたのに……! うまくいけば隣の席になり、授業中好きなだけ視姦できたのに……!
自分の出自に不満はなかったが、このときばかりはサフィールと同じ年に生まれなかったことを後悔した!
一年と三年ではほぼ接点がない、教室のある階も、寮の階も違う。唯一同じ時間を共有できるのがこの剣術の時間なのだ。
一年は屋外訓練場の東側、三年は西側を使うので、サフィールのことはこうして遠くから眺めることしかできぬが。
「うーんどうだろう? あの子とろくさそうだし……」
ミハエルが言葉を濁す。
「今の言葉は聞きずてならんな! 私の愛する人を侮辱することは許さん!」
とろくさいとはなんだ、サフィールはぽーっとしているところが可愛いんだ!
「まあまあ、落ち着いて」
相手が王太子でなければ剣を向けていたところだ。
「サフィールくんがレオナルドの好意に気がついているかどうかはともかく、サフィールくんもレオナルドに好意を寄せているんじゃないかな?」
「なんだと……!」
サフィールが私に好意を寄せている? それが本当なら嬉しい! 今すぐサフィールのもとに行き、抱きしめて口づけを交わしたい!
だが……確証がない。
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