備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第1章 ココどこですか?

鍛冶師の驚きは終わらない***別視点***

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***  鍛冶師  コルバ視点 ***

ヌーヤ帝国の王直々のお願いだと言われたら、誰が断れるんだ!!

荷物を袋に詰めながらも、怒りのあまり力いっぱい投げ込んでいたら何か壊れた音がした。

くっそぉーー!!

イライラが更に増して、行きたくない気持ちが限界まで膨らむ。

『コルバよ。そんなに怒るんじゃない。
我が国への支援と引き換えなのだ。鉱石の在庫は底を尽きかけている。
無論、食料も然り。これでは援助という名の願い事を断れるはずも無いのじゃよ。』

分かっている。
俺だって馬鹿じゃない。持ち込まれる注文は修理ばかり。
新物など、ここ1年全く作ってない。

これじゃ鍛冶師などと名乗れやしない。

『辺境の村から、既に天馬によって配られ始めたぞ。民は皆大喜びじゃ。
この国1番の鍛冶師  コルバよ。
一番弟子の其方にしか頼めぬのじゃ。』

俺は俯いていた顔をあげた。
『分かってます。鍛冶師の国1番は伊達じゃないって、奴らに分からしてやりますよ。お師匠様は、もう少しちゃんと食べて元気になって下さい。』

飢えている国民を差し置いて、自分だけ満腹になれない。

痩せた身体で、明るく笑う師匠に心配をさせられない。

『ま、いっちょ行っていますわ。』

本来ならば、1ヶ月はかかる道のりを天馬に乗っての出発だった。
見送りは苦手だと見送りは師匠だけだ。

そして天馬の後ろには、俺の小間使い…違った。一番弟子のグーナンも一緒だ。
火の番をさせて右に出る者はいない弟子だが、何よりもちょっとばかり沸点の高いワシと客の間を取り持つのはコイツしかいないのだ。

だが、旅の始まりは空からの風景を楽しむ所でなく、揺れから来る酔いに耐えるだけで終わった。

一晩野宿をして、早朝また出発だ。

普段なら絶対無理な野宿も、天馬さえ居れば、野獣に襲われる心配もないそうだ。

焚き火を囲みながら、操縦師の男が干し肉を渡してきた。
(気前が良いな。干し肉など久しく食べてないぞ。)

『師匠、これめっちゃ美味しいですよ!!』
夢中で食いつくグーナンにつられて、1口。

旨い!!

『ふふふ、そうだろう。これはこれから向かう辺境の村産だ。行ったら、驚くぞ。
旨い食べ物が食べ放題なんだからな。
さぁ、野獣の干し肉なら幾らでもあるから沢山食べてくれ。』

大袈裟な。干し肉が大量にある国などある訳がない。
あ、そうか…これも誘致をした詫びのひとつなのか。

数少ない食糧を優先的にワシらにくれた訳だ。まあ、それだけ門の故障は大事だ。
もしかすると、既に村が滅びている。
そんな可能性さえあるしな。

その夜は、久しぶりに干し肉を腹いっぱい食べて満腹になったお陰でぐっすり眠った。でも、もう1日かかるそうだ。

あの揺れを思うとゾッとするが、致しかない。陸路では、長くかかるだけでなく危険過ぎるのだから。


夕焼け空になった頃、蒼白な顔で酔いに耐えているワシらに、操縦師が『あと少しだ。』と言った時はあまりの嬉しさにうっかりリバースしそうになった。

降りたのは、壊れた門の前。
広大な畑の上だ。

見渡す限りの畑に、グーナンが目を白黒している。
門の外にこんな畑を作るなんて命知らずな村人達だ。それに労力の無駄だ。

壊れた門から、村長らしき男が出てきた。

『これはようこそお越し下さいました。
私はこの村の村長のベンと申します。』

なるほど、屈強な戦士という訳だ。
柔らかい笑顔に隠された戦士の息遣いに、昔作った剣を思い出していた。

『まずは、我が家までお越し下さい。歓迎のご用意が整っております。』

小さな辺境の村だ。
期待はしていないし、大したものが無くても不愉快にも思わない。
ヌーヤ帝国がその強大さに笠にして無理強いをした事にこそ怒りがある。

『師匠、師匠!!!』
ん?

珍しいグーナンの大きな声に振り向けば、いつの間にか村長の家の中に来たらしい。

これは?

ピラピラした色の付いた紙が、そこかしこに垂れ下がっているが何の合図だ?
しかも正面に大きな紙に

【歓迎!!鍛冶師様御一行】と
書かれた紙が貼ってあった。

正直、恥ずかしい。
何の罰でこんな感じになったんだ?!
疑問が頭の上を幾つと通り過ぎていたその時、目の前に1人の見慣れぬ風貌の男性が
進み出て来た。

随分と小柄な男性が、変な顔をして近づいて来た(もしかして、アレは笑顔のつもりか?呪いにでもかかっているかと思ったぞ!!)


『初めまして。この度はご無理を申し上げ誠に申し訳無いことです。お忙しい中、この村の危機に駆けつけて下さった御二方に
些少ですが歓迎の食事を用意しました。』

なんと。この男性が歓迎の宴の用意をしたのか?村長の家なのに、村長ではなく??

『さあ、まずは乾杯を。スイカジュースをご用意しました。』

は?
まさか100g1金貨のスイをジュースに??

驚いていたいる隙に、この広間に集まった
全員がグラス片手にジュースを持っていた。

『乾杯』『乾杯』『乾杯』
声が重なり合うも、それどころじゃない。

グラスだ。

ガラス鉱石は加工が難しい。
鍛冶場から作らなければならないと覚悟していたが、まさかココにあるのか。

過去に鍛冶師がいたのか。

アレコレ考えているせいで、グーナンが『旨っ』という雄叫びを繰り返しながら、
あちこち走り回ってたのを見逃してしまった。

『おい、グーナン!!はしゃぐでない。』

国を代表して来ている心得がない。
まったく、フレンドリーが長所で欠点のやつだな。

『師匠!!そんなの無理です。これなんていち(苺)ですよ。一生に1回は食べて見たかったんです。それにあの焼き肉の旨さと言ったら。俺は後悔しない生き方をします!!!』

『お前!!こら、戻れ!!』
師匠のワシに口答えどころか、大声を出すなんてと言いたいが…これではな。

滅多にお目にかかれない高級食材が無造作に皿に山積み。豪華な食器達。しかも、麻の洋服があちらこちらに。

麻など、帝国の宝物庫くらいしかないと思っていたが本当にどうなっているんだ。

『お口に合いませんか?』
隣にあの男性が来た。

『いや、実は色々なものに驚きすぎてな。』

『歓迎の気持ちが通じたらとても嬉しく思います。』
呪いさえなければ、好青年だな。
気の毒にな。

『あっ、そうだ。この村1番の【作り師】をご紹介します。
おーい、ドヤン、ナラハ!!【鍛冶師】さん達を紹介したいんだ。こっちに来てくれーー。』

ドヤン…!!!!!

お前…こんな所に居たのか。。。

『ドヤン、こんな所で会うとはな。辺境の村に来て本当に良かったぞ。
さあ、因縁の対決の決着をつけようぞ!!』

『げっ。矢作さん、俺は帰るぞ。コイツとは相性が最悪なんだよ。』『えっ?』
ドヤンが帰ろうとすると男性が驚いて声を上げた。

逃げようとするドヤン。
逃がさないために、ドヤンに詰め寄ろうとするワシ。

驚いて立ち尽くす男性。

混沌な状況に決定打を打ったのはグーナンの一言だった。

『あーー、指名手配中の最高作り師のドヤン様だ。』

会場が凍りついた。
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