備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第1章 ココどこですか?

鍛冶場は何処に…なんじゃこりゃ?!

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翌朝、俺は〚鍛冶師〛のコルバさんとグーナンさんを改めて門の所へ案内した。

『うん、こりゃ酷いな。修理と言うよりは初っ端から作り直しだな。』
コルバさんの言葉に肩が落ちる。

やっぱりか。

『でも、凄いですよ。こんなになっても扉を破られなかったなんて奇跡です。やっぱり辺境の村ですね。戦闘力が凄いや。』
『おい、グーナン!!』

正直なグーナンさんの言葉が胸に刺さる。
やっぱり間に合ったのは、奇跡だったのか。いや、違う。それは村長始め村人達の戦闘力があっての事。

『コルバさん、グーナンさんの言う通りです。こんな風に話が出来る結末で本当に良かったです。だからこそ、この扉は絶対に直したいのです。』

腕組みして、扉を眺めているコルバさんの横でグーナンさんがあちこちの寸法を測っていた。


『問題は2つある。
1つは、鍛冶場だ。昨日のグラスは見せて貰った。あれほどのモノを焼けるとなるとワシの使う火力に耐えられるとは思うが。
まずはじっくり見せて貰おう。

2つ目は、致命的だ。ワシら『クラ国』でも鉱石が不足して失業する鍛冶師が増えている。これほどの大きさと強さとなると生半可な鉱石では務まるまい。

どうするか。』と、ゴルバさん。

プロの満足する鍛冶場か。
実は最初の方は、俺の独断で作り出しちゃったからな。
ドヤンには大丈夫だと言われたけど。

『まずは、鍛冶場へご案内します。もし、問題があれば改造しますので遠慮なくご意見お願いします。』
良いモノづくりは、環境が欠かせない。
ましてや、鍛冶場ともなれば心臓部だ。

鍛冶場はかなりの温度が必要だ。
だから、村外れに作ろうとしたら村長からダメ出しが。

森の入り口は止めて欲しいと。
そこで、森の入り口近くの地下深くに空洞を作った。

ちょうど良く、硬い岩盤があったから簡単だった。

地下深くとなれば、最も重要なのは空気の流れ。排気と空気の取り入れ口には、十分配慮した。

地下深くへ続く道を案内していたら『マジっすか?』『師匠、こんな場所に鍛冶場とか無理じゃないすか?』と
本当に正直なグーナンさんだ。

細く長く続く階段を降りたら、そこは広い地下室だ。

広さはだいたい東京◯ー◯100個分くらいか。ちょっと広くし過ぎてドヤン達にドン引きにあったのは、秘密だ。


『広く作ったから、鉱石置き場と鍛冶場は少し離れてる。
もちろん、宿舎は簡易だ。寝起きはちゃんと地上でお願いします。』

おや?コルバさんが震えてる?
寒いかな。地下だから温度調整もいるか。

『ありえねぇーーー!!!地下とか広すぎとか鍛冶場もデカすぎとか。明るいとか…
色々ぶっ飛んでるーー!!!』
グーナンさんの雄叫びが響く。

『グーナンさん、広く作り過ぎたので余った土地には、地下でも生える苔類があったので撒いといたらこんな風に光ってくれたんで明かりは十分なんですよ。』

『いや、そう言う事じゃ…。』コルバさんの声は小さ過ぎて聞こえない。

『えっ?何か』『いや、何でもない。とりあえず鍛冶場を見せてくれ。』

遂に本丸だ。

『こちらです。
大小様々な大きさの炉
冷やすための水槽もそれぞれ用意しました。
打つための台やその他気づいたものはご用意したのですがまだまだ不十分かと。
言って頂ければ。』

俺の言葉は聞こえてないかもしれない。
2人は、それぞれ色々なモノを長い時間触っては確かめていたが。

『ま、素人が作ったにしたは中々いい出来だ。だが、まだ改良して貰わんと困る事もある。問題は鉱石だな。』

ふーっ。
良かった。ひとまず合格点か。

『鉱石はこっちの建物です。どうぞ。』

鉱石置き場は少し広い。
東京◯ー◯10個分くらいだ。

実は、収納庫に収めていた鉱石を全部ここに置いたのだ(少し余計なモノも置いたけどな。)

部屋毎に鉱石は分けてある。

火炎石と熔岩石は手前に
(鍛冶場に1番必要だからな。)

うん?

固まった??

好青年だけじゃないのか。
もしかして、この世界の流行病か?


やっぱり【特万能薬】をもっと広めた方がいい気がするのだが、何故か好青年の反対に合うのだ。

『おい、これは幻じゃないな。』

『いや、師匠。間違いないです。これは幻影術ですよ。
もしかして、宗教国から誰か来てるのかもしれないっす。』

『やっぱりな。
ワシらが必死に探している火炎石がゴロゴロあるのはまだ納得しても、熔岩石はな。』

『幻でも、何だか嬉しいっすね。』

2人のおかしな会話は進む。
うーむ。どこで入ればいいのか?

そんな時、救世主が現れた。

『やっぱり、お前さんでもこうなるか。
矢作と付き合っていくには、常識は全てゴミ箱に投げ捨てろ!!
そうでなきゃ、おかしくなるぞ。』
ちょっと酷い言い方だが、コルバさん達が元に戻ったみたいだ。

『ドヤン!!お前…』

『ふん。俺たちはとっくに、こんな酷い目に何回もあってるんだ。
矢作の常識🟰非常識だ!!』

はっ??

遠慮なく何でも言ってくれ。そう言って呼び捨てで言い合える仲になった。
前の世界でも、中々出来ない関係性に嬉しくなったのは間違いない。

しかし、非常識とは(そう言えば草薙も良く言ってたな。)

『2人は立ち直るのに、時間がかかる。
矢作、それよりもここらでお茶にしよう。』

ナラハもいたのか。
しかし、何時でも【お茶にしよう】だな。

それでも、俺は助言通りにテーブル、椅子を並べて薬草茶と、お茶請けにイチゴジャムのクッキーとバナナシホンケーキを出した。

さっさと座って食べ始める2人を、よそに鍛冶師の2人はまだ動かない。

『矢作、やめとけ。それよりもお前もお茶にしよう。』

【特万能薬】を出そうとしたのをドヤンに見つかった。やっぱりダメか。

皿の上のクッキーがもうなくっていた。
ナラハはやっぱり通常運転だな。



ワシは幸運なのかも、しれん。

ようやく…ようやく鍛冶師として仕事が出来るのだ。

コルバの呟きは、ドヤンの耳にだけは届いていた。それは少し前の自分だったからかもしれない。




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