長崎あやかし茶房 桃花源(とうかげん)へいらっしゃい 〜中国茶は人を救う〜 

麻麻(あさあさ)

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最終章 

5-7 クリスマス、大切な人に送るお茶 

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『80だぞ80!それまで床についてたんだかんな』
と武漢は言っていた。

そこからの回復。

それは茶を通り越して薬。いや、麻薬だ。

(馬鹿馬鹿しい)
緑仙は雑用を再開する。



しかし、一月が経ち緑仙は後宮に出願し、自ら噂の茶畑を目指した。

「ニャーン」
足元には明明がいた。

結局、この子は緑仙と降格した後一緒にいたのだ。
「長旅になるぞ。着いて来れるか?」

その質問に明明は「ニャン!」と返事をした。


茶畑は山間にできる。
東の山に目処をつけ噂をふもとの住民に聞き込みいくつも登ってないと判断したらまた降りて

旅の途中にある家に泊めてもらいながらあるかも分からない目的地を目指した。

ある噂の山の噂を麓の山の人間に聞いた時、緑仙は確信を得た。

住民は皆茶畑の話をすると口を揃えて行くのはやめた方がいいと言うのだ。

しかし、緑仙にとってはやっと見つけたありかを無駄に出来るわけがない。

御信用の刀もあるし、明明にはなにかあったら逃げろ、もしくは泊めてくれた人のとこに行けと言っていた。



そうして山を登り、開けた場所が現れた。
そこには湖があり、周りは縄が巻かれてある。

禁足地だ。
さらに奥には森が続く。

緑仙は固唾を飲み、泉を横切り奥の森に入る。
するとその奥、確かに茶畑は本当にあった。

堪えきれず一歩足を踏み入れるとどこからか声がさした。

「お主、ここのものは全てワシのものだぞ」
地面から厳か聞こえる。

(馬鹿な、本当に妖がいるとは!?
しかし見えない)

キョロキョロしていたからか声の主は自身から名乗る。

「ワシはここに住む仙人だ。
実態はない。
何故、茶が必要か?
金か?そうだろう」

「病に効くと聞きました。
飲ませたい人、いやそのお方は病気は治っています。
しかし、この茶葉は魔法のような健康を得られると聞きました。

お願いします。
私にこちらにある茶葉を分けてください!」

「飲ませたい者がいるのか。

分かった。
だが対価が必要だ」

声の主はそう言ったが緑仙に対価らしいものは持ち合わせてない。

「なんだ、お主何も持ってないのか?」

「はい」

「じゃあお前が茶で試したい事があるなら私もお前の身体を好きにさせてもらう」

「何をするのです?」

「悪いようにはしないさ。約束しよう。
そうだなあ。
ワシは友人らしい友人がおらん。
どうだろう?
一つワシと友となるのは嫌か?」

「それだけで良いのですか?」
「ああ」

仙人と友になるとは。
山を降りればそう会う事はないだろうに。

「分かりました」
「よし、じゃあそこから好きなだけ茶を取ると良い」

緑仙は拍子抜けした。

てっきり
「対価はお前の命」とでも言われるかと構えていた。

茶葉は袋いっぱいに集める事ができた。

そうして緑仙は仙人に礼を言い下山し、東の山の麓に降りたった。




















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