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神様からの授かりもの3

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「なぁ、ヤマト、お前の目の前にいる人は一体誰なんだ?」

「はっ?まさか学兄さんが愛美ちゃんを育てるって言うの?無茶だよ。」

「なにが無茶だ。無茶なことなんて何にもないさ。お前のおしめを変えたのを誰だと思っている。毎週土日お前達の子供達の子守りをしている僕をなんだと思っているんだ?」

「そりゃ、赤ん坊の世話をしたり、子供の子守りをするなら学ぶ兄さんの右に出るものはいないさ。なんせ僕たち兄弟のオムツを変えて、子守りをしてくれて、勉強や遊びを教えてくれたのが学ぶ兄さんだからね。でも、それとこれとは話が別だよ。」

「そんなことはない。一緒だよ。血を分けた家族の面倒を見ることは年長者にとって当然の事だろう?」

「いや、それは確かにその通りで、僕らも兄さんのその想いに大分助けられてはいるんだけど……。」

「そうだろう。なら、兄さんにとって無茶なことなんかじゃない。それは出来ることで、可能なことなんだよ。」

「でも、兄さんは独り身じゃないか。もう40代に差し掛かるっていうのに。」

  ぐさっ。人が気にしていることを遠慮なく口にする弟である。いや、弟であるからかそ、忌憚なく言えるのだろう。

「お前、それは言わない約束だろう。」

「いや、そんなお約束は知らないよ。兄さんは、1人やもめじゃないか。経済力がないのもあるんじゃないの?派遣の仕事しながら、好きな小説書いて、一度出版されたことがあるのは、確かに凄いことだけど、それ以来出版されてないじゃないか。愛美ちゃんを引き取って育てる前に、もっとまともな職に就いて、きちんとした女性と結婚して、父さんや母さんに孝行してあげなよ。」

「ヤマト。お前、こんな時だからって、言いたい放題だな。兄さんのライフポイントはお前の物言いのお陰で残り僅か1だぞ。僅かな言葉の刃でも死に至るからな。それ以上は喋ってくれるなよ。それは確かに事実だが、それと愛美ちゃんを引き取って育てるのは関係ないだろう。母さんと父さんには孫を見せられずに悪いなとは思ってるよ。」

「兄さん関係あるって。今でさえ、結婚し辛い条件なんだよ。6人兄弟の長男で、両親は健在。結婚したら、親の介護は長男の嫁さんの仕事。それに若い姑さんが沢山。それに引き取ったら、なぜか結婚してないのにコブがついている形になるんだよ。兄さんが自らどんどんどんどん結婚から遠のいている気がするんだ。だから、頼むから引き取って育てるのはやめてくれ。愛美ちゃんには施設に引き取って育ててもらうしかないって。そりゃ、可哀想だとは思うけど………。」




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