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第10章 物の怪の新たな人材と朝活デビュー

【080】営業6日目 営業開始その6 朝活でじゃんけん!?

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 りんたんがカフェの一番奥まで移動する。パンパンット手を叩いた。これが始まりの合図なのか、参加者の皆さんは一斉に話をやめて、りんたんの方を向いた。うん、すごくよく教育されていますね。

「みっなさ~~~ん。おっはよ~~ございま~~す」

と明るく元気な声で挨拶を始めた。地声でこの声は凄いです。しかも透き通るような綺麗な声で、アニメの声優さんでもやっているのではと思ってしまうほどです。

「「「おはようございます」」」

 参加者の皆さんが負けじと声を腹の底から出して挨拶をする。かなり大きくうるさくなっている。ここは住宅街ではないから問題はないが、住宅街で朝からこんな声を出していたら迷惑だろう。僕は通常の声の大きさで挨拶を行った。

「おお~~~みんな今日も朝から元気だね~~。りんたんはそんな元気なみんなに今日もお会い出来て嬉しいよ。さてさて、みなさんにお知らせしたいことがあります。今日は新たに3名の方が新しく参加してくれました。みなさんと仲良くなりに来たみたいですよ。ちょっと自己紹介してもらいましょう。はい、まずは、ウィーンさんから」

いきなり、指名されてしまった。ええと、こういう場合はどうしたらよいのだろうか。せめて、一番でなく、2番目か3番目だったら、考える時間もあったし、前の人を参考にして話すことが出来たんだけど。考えている時間はないので、席を立ちあがり、みんなの方に顔を向けるように立ち位置を変えた。

「みなさん。おはようございます。」
「おはようございます。」

「先ほどご紹介に預かった。ウィーン・ド・ブラムと申します。最近出来た、ダンジョンマート金沢店で働いています。欧州から出てきたばかりで、日本に物の怪の知り合いがいないので、こちらに参加させて頂きました宜しくお願いします。」

ちょっと、かたかったかな。でも、無難には出来たしよしとしよう。緊張してほとんど参加者の顔をみず、窓の方を見て話していた。仕事ではちゃんと保険の説明なんかは出来るのにこういうアドリブめいたものはさっぱりだめだった。

「パチパチパチ」
と拍手が起こる。ふ~~とりあえず受け入れてもらえたようだ。
 その後は、りんたんが、雪那さん、天魔さんと流していた。二人とも参加者の顔を見ながら、笑顔でふんわりと自己紹介していた。二人とも上手だな。僕も次回は二人を見習えるようにしておかないとね。

「さてみなさん。3人の自己紹介が終わりましたね。なんと3人とも今テレビやSNSで有名なあのダンジョンマートのスタッフの方々でした。インパクトで我々が少し薄れていますね。このままでいいのかな?」

「「「よくな~~~い」」」

「では、我々の存在を知らしめよう。これより朝活の恒例本気のじゃんけん大会を始める。」

「「「おお~~~~」」」

 参加者のみなさん朝からノリがいいですね。どこぞのアイドルのコンサートか、何かでしょうか?というかリンたんが既に朝活でのアイドルなのかな?あれだけ、綺麗で、明るくて、朝から元気一杯で盛り上げ上手で、それに新規参加者へも分け隔てなく、親切に接してくれる人ならそりゃ人気もあるか。

「ルールは簡単です誰でもいいから3人とじゃんけんして下さい。あっ、同じ人はダメですからね。それとせっかくなので、今まで話したことない人とじゃんけんして下さいね。簡単にお互い自己紹介してから、最初はぐー、じゃんけんぽんですよ。」

「は~い、わかってま~~す。」

「あっ、それと、永森さん。グーチョキパーは禁止ですよ。」

「はい」

「時森さん、時間操作で相手の、だすものを確認してからはダメですよ。能力は使用禁止です。他の人もですよ。」

「は~~い」

「3人じゃんけん終わった人から座ってくださいね。では、よ~~い、始め」

 参加者が一斉に立ち上がり、じゃんけんする人を探しにいく。近場の人はいつも話している人が多いのか、すぐにじゃんけんせずに、他の人を律儀にさがしにいくようだ。お~、雪那さん、天魔さんはもうじゃんけんを始めている。僕もやらないと。

「あのウィーンさん、いいですか?」

と小柄な少女が声をかけてくる。

「ええ、大丈夫ですよ。ウィーンです。お願いします。」

「私は、鶴の物の怪の鶴姫です。お願いします。いきますよ。」

「「さいしょはぐー、じゃんけん、ぽんっ」」

っと鶴姫さんは、グーをだし、僕はチョキを出してしまった。

「やった~じゃんけんで勝った~~ウィーンさんありがとう」
と言って、右手を差し伸べてきた。

「う~ん、負けちゃったな。残念。こちらこそ、ありがとう、鶴姫さん」

と言って、僕も右手を差し出して握手した。

挨拶をして、肉体的な接触をする。簡単なルールに則って行われるため、非常にやりやすいし、これなら知らない人に平気で声をかけられる。普通だと、何を話していいかわからないし、相手、状況もあるから気軽には声をかけづらいけど、これはゲームだから、そんなことは考えずに気軽に声をかけられる。すごく良く考えられたアイスブレークだ。

 これなら、初対面の人もじゃんけんでの勝った、負けたもあって印象に残りやすいし、断られることもないから、気軽に話しかけられる。うん、いい催し物だよ。


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