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第四十二話 戦線離脱②

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家康はかわいがっていた忠吉、四天王として貢献してきた井伊直政を失った悲しみをようやく認識していた。

ただ、ここで弱さを見せるわけはいかない。
一回の大きなため息に全てを表現させて天を見る。

ーー今日のみで犠牲が多過ぎた。

しかし、彼は天才的や能力がある。

家康はある作戦に出るために伝令を呼び、あることを伝えるように指示する。


そして、ようやく致命的な敗北を知る本多忠勝。

ーー三方原以来か……しかし、あの戦も背中には信長殿がいた……此度は背中に誰もいな。康政、直政を止めるべきであった。数年して大谷吉継がいなくなれば、状況は変わっていたはずだ。

しかし、歯車が狂ったものは仕方ない。

伝令が現れて忠勝にある報告をする。

「黒田長政殿、戦線を離脱。そして、敵軍毛利秀包殿も戦線離脱」

ーー毛利秀包も?

忠勝は悟った。

ーーあやつら、吉川広家の裏切りを事前にわかっていた!



事前に仕組まれていた戦にやっと気づく。

三成は戦を進行しながら、邪魔になるであろう大名たちを粛清している。
これで輝元を追放できる大義名分を得たのだ。
そして、豊臣政権と懇意にしていた秀包が当主となれば盤石となる。

もはや、戦う意味はない。
彼は武断派大名と共に戦を急かした自分を責めた。
しかし、もう遅い。
今、徳川が撤退することは味方してくれた他の大名を見殺しにするようなもの。

ーー万に一つの完全勝利しかない。

忠勝は死ぬ覚悟を決める。

長い夜が明け二日目が始まろうとしていた。

島左近が敵方の東軍軍勢を見る。

「池田、浅野が、あのような後方に。相当な被害があったようですな。筒井、山内、織田が前線とは」

戦が上手いとは言えない大名が前線に来たということは伏兵の可能性もある。

「うむ、十郎が言っていたように守備を固めよ」

左近は三成の意図はわかっている。

ーー今日持ち堪えれば、次の策に移ることができる。

今のところは完璧だ。
毛利秀包は吉田郡山に急遽戻り、島津義弘も無事に港まで出ることができた。

大谷吉継、レオニダス、松野重元の5000人近い軍勢も大垣城に到着した。

しかし、左近は直感で気づく。

ーーまだ何かある。天下人に手が届く人間。何か策があるはずだ。

人から隠れ、伝令にある人物にあることを伝える。

そして、今の三成は気づいていない。

徳川家康も三成のみを討ち取る戦術に変えたことを。


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