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第二十三話 マルチバース

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徳川家康が上杉討伐に向かう。
それと入れ違いで毛利輝元、宇喜多秀家など五大老と法正孝直、立花宗茂、大友義統ら大名、そして、五奉行たちが連盟で徳川家康の弾劾案を諸大名に送る。

大名の一人である大谷吉継は誰が首謀者であるか……気づいた。

彼は佐和山にいる三成のもとに急行する。

ーーなぜだ? 勝ち目がないことはわかっているだろうに。彼奴を説得せねば。

吉継は佐和山城まで出向き、三成と会う。

「三成よ、そなたは毛利殿に誑かされておる! 目を覚ませ! 内府殿には敵わぬ」


吉継と三成の間には誰にも割って入ることができない厚い情がある。

ーー生きていてくれ。


吉継は病の進行により目が見えず、自身の死期をすでに察している。
二人は互いを尊重し、思い合っている。
だからこそ、吉継は思う。

ーー今まで背負ってきた重荷を下ろし、もっと楽に生きて欲しい。

しかし、二人の思いはすれ違う。

「勝てないのはわかっている。しかし、ここで立ち上がらねば、豊臣家はどうなる?私がやるべきことは残っておる。万に一つない勝ちを拾わねばならぬのだ」

吉継は涙ながらに怒鳴る。

「愚かなり! 石田三成……このように愚かとは」

三成は吉継に言う。

「聞いてくれ……紀之介」

「なんだ?」

三成は一瞬躊躇うが淡々と話し始める。

「信じられぬと思うが……実はすでに何十回と内府殿と戦をしておるのだ。その度に敗北して私は……いろんな人間を犠牲にしてきた。もちろん、自分もな」

普通なら信じられない話だろう。
しかし、三成の真剣な表情と普段の彼の姿を知っていれば嘘をつくとは思えない。
吉継は三成の話を真剣に聞いていた。

「どう足掻いても運命は変わらぬ。しかし、この度は唐の世界におった法正、周瑜と思われる人間。そして、未知なる世界から来たシモヘイヘと言う者も来て味方となった。戦の果てに何があるのかはわからぬ。しかし、今までとは違い勝てるように思うのだ」

三成は吉継の手を握り言う。

「その時、お主と勝利を味わいたい……」

茶の中に吉継の涙や鼻水が混入していく。
三成はその茶を飲み干す。

「三成、これは……」

「良い。何も言うな。お主が淹れた茶、どの世界でも何度でも飲もうぞ」


吉継は頷く。

「いつの世になろうと、何度、人生が繰り返されようと、何度負けようと構わぬ! 私は全ての世界でお主の味方となる。共に闘おう」


二人は涙ながらに笑い合い、抱き合った。

関ヶ原前哨戦が、まもなく始まろうとしていた。



北政所がある男たちが住む集落に現れる。

男たちは村を建築し、農業に勤しんでいた。

「皆様、時が来ましたよ」

頭領と思われる大柄な男が北政所に近づき、言う。

「うむ! やっと出番か?」


北政所は微笑みながら言う。

「ええ、レオニダスさんとスパルタの皆さん」

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