異能の共鳴

久住岳

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第1巻 ダーク・テミス編

第四章 真実への経路:美獣とダーク・テミス 後編

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 果那の両親を襲った者達がロシアの極東開発に関わる可能性が出てきた。久住晴翔は極東開発の調査を進める事となり、早乙女果那は鈴木プランの動向を追う事になった。久住は果那に何か動きがあった時には、必ず連絡するように念を押したが…果那の耳には届いていなかったようだ。ダーク・テミスとして麻倍階元総理を追い詰めた果那、それでも辿り着けなかった二十年前の真相が見えてきた。もう果那を止める事は出来ないだろう。
 
 果那『わかりました。とにかく舞踏団を監視してみます。』
 
 鈴木プランに勤務する事務員と二人の社員は、総務関係やイベント関係に従事する普通の会社員として働いていた。ダニールは会社の二人を連れて東京に向かった。鈴木は新潟に残り日用品や食料、衣類等を買い集めていた。ダニールと鈴木プランの社員二名が成田空港に着き、ウラジオストックからの直行便も成田空港に着いた。ダニールは会社の二人に迎えを任せて、空港の人混みの中に消えていった。
 
 ダニール『着いたな。お前はこのスマホを、黒い服の男に渡して来い。一団の中にいるはずだ。俺からだと言えばわかるはずだ。』
 
 ダニールは二名の日本人と一緒にいた。二十代半ばくらいの髪を白く染めた男と坊主頭の男の二人だ。白髪の男にスマホを渡すと柱の陰に座り到着ゲートを見ていた。社員二人は旗を持ち一行をゲートの前で待っている。入国審査が終わるとダンサー一行が到着ゲートに姿をみせた。女性ダンサー八名、男性ダンサー四名とスタッフと思われる女性一名と男性が五名いた。
 
 ゲートを出て来ると鈴木プランの社員が駆け寄り、移動用のバスへの案内を始めた。スタッフ五名の内の四名は、周りを注意深く窺っている感じだ。白髪の日本人がそっとスタッフに近づいて、すれ違いざまに耳元で何かを囁き二台のスマホを渡していた。黒服の男はスマホを受け取り、そのままダンサー達と駐車場に向かっていった。
 
 ダニールと二人の日本人は舞踏団の一行と合流する事なく、電車に乗って東京に向かっていった。どうやら四名の男達の来日目的はダニールとは無縁のようだ。連絡用のスマホを用意しただけで、後は彼らが必要になれば何かの連絡があるのかもしれない。果那は右目と右耳をダニールに、左目と左耳をダンサー一行の後ろに霧散化させ後を追った。
 
 ダンサー一行は鈴木プランの用意したバスに乗り込んだ。しかしスタッフと思われた四名の男は、一行から離れ別の車に乗り込んでいた。ダニールは彼らに車を手配し鍵も渡していたようだ。新潟の事務所でダニールが話していた内容…《四名の工作員も来ると連絡があった》…果那は尾行をする標的を舞踏団一行から、工作員と思われる四名の男に変えた。
 
 ダニール『おい、こっちだよ。待っていたよ。』
 
 ダニール達は港区の芝公園に立っていた。明後日から始まる《露日友好コザックダンスショー》の会場だ。大きな広場ではロシア大使館の職員や、日本の作業員が準備に追われていた。ステージや観客席はすでに出来上がっている。大掛かりな催し物になりそうな雰囲気だ。
 
 女性『ほんとに雇ってくれるの?彼、日本語は話せないよ。』
 
 ダニールが手を振ると十代後半の日本人女性と、二十歳くらいの韓国人男性が近づいてきた。女性は十七歳、新宿の繁華街で野宿している所を、ダニールと一緒にいた白髪の男が声を掛けた。女は彼氏も一緒ならといって、韓国籍の二十歳の男性を伴って芝公園に来ていた。イベントの手伝いのバイトがあると白髪の男が誘ったようだ。
 
 ダニール『日本語が話せなくても出来る仕事があるんだ。先にバイト代を渡すよ。泊まり込みになるけど大丈夫かい?』
 
 女性『ぜんぜ~ん。部屋を用意してくれるの?無料(ただ)だよね?』
 
 白髪の男『金なんて取らないよ。明日から明日と明後日、イベントのチラシ配りだ。駅前で配るだけだから頼んだよ。』
 
 ダニール『その後は新潟で同じ仕事をお願いしたい。ダンサーチームは東京が終わったら新潟での公演になるんだ。』
 
 女性『え~、新潟に行けるの?ラッキーじゃん。いいわよ、私達、どうせ暇だから。』
 
 ダニール達と二人の男女は近くのホテルに向かっていった。ホテルの部屋に入ると坊主頭の男が、二人にチラシを渡し三つ折りにするように指示していた。明日と明後日の朝、新橋駅前でチラシ配りをしてから新潟に向かうようだ。白髪の男と二人の男女をホテルに残し、ダニールはホテルの外に出て電話をかけている。
 
 ダニール『こっちは確保したぞ、そっちはどうだ?』
 
 鈴木『女に探させていますがまだ確保できていません。万代橋付近にたむろす若い男女がいるようなので、期日までには何とかなると思います。』
 
 ダニール『出航は五日後だ。前日の新幹線で二名を連れて向かう。お前が確保できなければ二人だけ本国に連れて行かせる。駅まで迎えに来てくれ。』
 
 鈴木『あの二人は…白髪と坊主頭はどうしたんですか。』
 
 ダニール『あいつらに頼んだのはスマホと車のキーを渡す事と、繁華街でバイトが出来そうな家出人を探す事だけだ。事の真相は知らない…もう報酬は渡して別れたよ。それ以外の事は教えていないし、関わっていないから奴らから露見する事もない。』
 
 果那はダニールの追跡を中止した。四日後、新潟に向かうまではダニールに動きは無さそうだ。全体はまだ不明だがバイトで雇ったという二人を、ロシアに連れ帰ろうとしている事はわかった。新潟から船で連れ去ろうとしているのも話の内容で判明した。ダニール達が二人の男女を船に乗せる前に、救出する必要が出てきた。
 
 果那『新潟に向かう日までは大丈夫そうね。その間はあの四人の動きを…。』
 
 果那の意識が四人の男に集中した。空港で別れた四人の男達は、千葉市内のマンションの一室に入っていった。四人を部屋の中に迎え入れたのは、麻倍階元総理の私設秘書の部下の男だった。果那は麻倍階の屋敷で男の顔を見た事があった。四人の男は部下だった男から数枚の写真と、リストのような紙を受け取っていた。果那は写真を確認しリストに書かれてある文字を読んでいた。
 
 写真に写っていた男は森本だった。麻倍階元総理の側近であり、果那が追う男の顔がそこにあった。リストに書かれた文字は日本国内の住所だった。麻倍階元総理の地盤でもあった和歌山県、祖父の岸本の地盤だった山口県や福岡県の住所が並んでいた。会話は全てロシア語で果那には理解できなかった。
 
 果那『森本の行方を捜している?ロシアから来た四人が何故、森本の行方を追っているのか?やはり森本は何かを知っているのかもしれない。』
 
 果那はその後も四人を見張った。一人が和歌山に向かい、一人は山口に向かっていった。残った二人は都内に潜伏し、麻倍階元総理の周辺を探っている感じだった。四人の素性はわからないが目的はわかった。彼らの動きを追っていけば森本の情報を得る事が出来るかもしれない。それに…何故、森本の行方をロシアの工作員が追うのかも気になった。そんな時、久住晴翔から連絡が入った。果那は久住の部屋で実体化した。
 
 果那『ロシア舞踏団に紛れて入国した工作員が追っているのは麻倍階元総理の側近、森本でした。理由はまだわかりませんが…。』
 
 久住『極東地区の開発事業の詳細は、関係者がすでに亡くなっていて掴めなかった。餌を巻いてみようと思う。沢渡さんに情報を伝えて番組で追及すれば動きがあるかもしれない。』
 
 果那『沢渡涼子さんですか…。』
 
 果那は何かを考えている感じだった。鈴木プランと四名の工作員、そしてロシアの極東開発…全ての話が一本の線で繋がった。ロシア絡みの事案で不正が行われ果那の父親はそれに気づき、警察に告発しようとした。その事を事前に知った者が隠蔽の為に、果那の両親を殺害した公算が強くなった。果那が三歳の時にみた犯人の顔は、日本人ではなく白人っぽい感じだった。ロシア人の工作員だったのかもしれない。しかし他の二人が日本語で話す声も聞いていた。犯人には日本人もいたのだろうと果那は思った。
 
 翌日の報道特集で沢渡涼子が、十九年前の事件の追跡取材の報告をした。久住は出演しない日だった。涼子は事件を捜査した園田と二課の刑事の話を纏め、極東地区の開発援助に絡む不正があったかもしれない事を暗に匂わせた。そして外務省と政治家の関与、警察の隠ぺいについても言及した。視聴率は跳ね上がっていた。
 
 沢渡『今泉さんの勇気ある告発を卑劣な手段で阻止した者達が、まだこの日本に…社会の闇の中に生きています。私達は事の全容を解明し、皆様にお伝えしたいと思います。』
 
 涼子は番組の中で巧みな話術で視聴者の興味を惹きつけ、事件に関心と注目が集まるように操作した。関心が高まってくれば情報も入ってくるだろうし、犯人と思われる連中にも安堵の気持ちはなくなるだろう。
 
 先生『何をしている、麻倍階元総理もあの美獣の報道からあんな最期を迎えたんだぞ。早く対処しろ。しかし命は奪うな、死んだとなるとかえって厄介だ、脅しだけでいい。』
 
 北海道の内陸部にある屋敷の一室で、この報道番組を見ていた男がいる。東京のマンションで《先生》と呼ばれていた男だ。やせた頬、剥げあがった額…貧相な顔でとても大物政治家にはみえない。《先生》は電話を取り東京にいる秘書に怒鳴り声で話していた。沢渡涼子の報道が《先生》の心胆を寒からしめたようだ。
 
 側近『はい、わかっております。こちらまで捜査が及ばないように組織のトップには言い含めておきます。』
 
 電話を切った秘書は慌てた様子で、新宿に本拠を置く反社組織に電話を掛けていた。これ以上、沢渡涼子を放置していれば危険が及ぶ。《先生》から叱責を受け沢渡涼子を黙らせる為に動く事を決断した。反社組織のトップには万が一の時も捜査が及ばないように、注意して実行するように伝えた。組織のトップは配下の男に指示を伝えた。
 
 秘書から金を預かった組織の男が新宿を根城にする、半ぐれのリーダーに近づき二人きりで依頼を伝えた。リーダー格の男は五十万の報酬に目がくらみその依頼を引き受け、チームにいた男に十万円を渡して実行させる事にした。リーダーに選ばれたのは白髪の男だった。反社の男から固く口留めされていたリーダーは、白髪の男に二人きりで会って指示をした。これでリーダー格の男の懐には四十万が入った。
 
 新宿の片隅で白髪と話し終わった半ぐれのリーダーが駐車場の角を曲がった時、いきなり頭に銃を突き付けられそのまま車で連れ去られた。車内で酒を無理やり飲ませ泥酔状態にしながら、車は新宿を離れ西に走り去っていった。翌々日の午後、江戸川の東京湾に近い場所で、釣り人が男の遺体を発見し警察に通報した。
 
 溺死体で発見された男は組織が依頼した、半ぐれのリーダーだった。組織は半ぐれのリーダーが白髪の男に指示したのを確認し、口封じの為に拉致して始末した。これで白髪の男が沢渡涼子を襲撃し逮捕されても、組織や秘書迄辿り着く事はない。発見された遺体からは大量のアルコールが検出され、所轄の警察は酔っぱらって川に落ち、そのまま流されてきたと判断した。
 
 遺体が見つかる一日前、白髪の男の車はテレビ局の前に停まっていた。今日、この局で報道番組があり沢渡涼子が出演している。番組が終わって局を出た涼子は、タクシーに乗り新橋方面に向かっていった。例の居酒屋にでも行こうとしているのかもしれない。新橋駅の近くで車を降り人通りの少ない路地に入った時、後ろから猛スピードで車が突っ込んできた。白髪の男の運転する車だった。ダニールが十七歳と二十歳の男女を、新潟に連れていく前々日の夜だった。
 
 女性『キャ~』
 
 白髪の男『やばい、止まらねえ、轢き殺しちまうぞ。』
 
 路地の通りにある二階から見ていた女性が悲鳴を上げ、その声で沢渡涼子も背後から迫ってくる車に気が付いた。涼子が振り返った時、目の前に車が迫り、涼子の身体に突っ込んできていた。かわす間もなく涼子の身体は、白髪の男が運転する車の前部にぶつかっていった…はずだった。涼子自身も死を覚悟した。しかし涼子の身体は路地の壁際に移動していた。そして白髪の男の車はそのまま近くの電柱に突っ込んで停まった。
 
 すぐに目撃していた女性が通報し、警察と救急車が涼子の元に駆けつけてきた。明らかに狙った犯行と女性は証言した。白髪の男は電柱に衝突したショックで気を失っていたが、シートベルトのお陰で軽傷で済んでいた。警察に逮捕され連行されていった。涼子は救急隊員が運ぼうとしたが、身体の何処にも怪我がなく、そのまま警察署にパトカーで連れていかれた。
 
 沢渡『え…一体…』
 
 警察の取り調べに白髪の男は素直に応じ、新宿で半ぐれの男に金で雇われたと供述した。殺すつもりは無く脅す目的で車で近づいていったが、焦ってアクセルを踏み過ぎたと自供した。白髪の男の名は金城(きんじょう)という名前で、十代半ばから新宿で遊んでいた男だった。警察は金城の供述に基づき、依頼した半ぐれのリーダーの行方を追った。金城の供述で涼子を狙った犯行である事は明白となり、何の目的で狙ったのか誰の指示だったのかが焦点になっていた。リーダー格の男の捜索は続いたが江戸川であがった遺体が、リーダー格の男だと警視庁が辿り着くまでには時間がかかった。
 
 事情聴取が終わると念の為か、警察が涼子を自宅まで送り届けた。部屋に戻り椅子に腰かけて、路上で起きた事を思い出していた。ぶつかったと思った瞬間、目の前がぼんやりとしてきた。そして次の瞬間、通り過ぎる車の脇の壁際に立っていた。後ろから何かに抱きかかえられたような感触もあった。身体に残る違和感は自分の身に、不自然な何かが起きた事を物語っていた。
 
 沢渡『何が起きたんだろう…誰かに守られた?…久住先生?きっとそうよ、先生が特殊能力で助けてくれたのよ。先生ありがと?(笑)』
 
 果那『違いますよ。私が助けたんですよ。危なかったですね』
 
 沢渡『誰?』
 
 部屋の中に座り一人で思い返し独り言を呟きながら、久住を想ってにやけた時、突然、耳元で女性の声が聞こえた。驚いて振り返ると黒いライダースーツに、目出し帽を被った果那が立っていた。ボイスチェンジャーは使わずに、自分の声で果那は涼子に話しかけていた。いつの間に侵入されたのか、涼子は後ずさりし近くにあった金属バットを手に持った。涼子は護身用にバットやヘルメットを、部屋の中に幾つか置いてあった。
 
 果那『そんな物騒な物を持たないでください。命の恩人に失礼ですよ(笑)』
 
 沢渡『あなたは誰なの?どうやって部屋に入ったの?』
 
 果那『ふふ、この位なら…麻倍階元総理の地下室に入るよりは簡単ですよ。』
 
 沢渡『まさか…ダーク・テミス?』
 
 麻倍階元総理の地下室…果那の言葉に涼子は鳥肌が立った感じがした。報道番組の生中継で起きた麻倍階元総理の事件、警察はダーク・テミスの犯行と発表したが、その証拠も根拠もなく逮捕には至っていない。そして…甲府の桑野義彦の事件解決への関与…沢渡涼子が今一番会いたかった人物は、ダーク・テミスだった。
 
 沢渡『女性なの?命の恩人って…貴女が私を?』
 
 果那『ええ、私が沢渡さんを助けました。久住晴翔じゃなくって残念でしたね。どうやったかは教えませんけどね(笑)』
 
 沢渡『そういう事か…不思議な体験だったわ。ダーク・テミスの《特殊能力》って事ね。ありがとう、御礼は言っておくわ。で、私に用事でもあるの?』
 
 果那『沢渡さん、私に協力して戴けませんか。』
 
 果那は涼子もいずれ仲間にすべきと思っていたようだ。久住に話せば反対されるだろう、沢渡涼子を危険に巻き込む事になる。しかし涼子の行動を追っていた時、車がもの凄い勢いで涼子に迫った現場に居合わせる事になった。果那は涼子の背後から抱きかかえ、涼子ごと霧散化し車の脇に移動させた。すでに涼子の身にも危険が迫った事で、巻き込む事に久住も反対はしないだろうと考えた。
 
 沢渡『協力?…その為に助けたの?』
 
 果那『いえ、そうではないですよ。どうやって沢渡さんに近づこうかと思って見張っていたら、あの現場に居合わせる事になったんですよ。』
 
 沢渡『…でも、救われたのは確かって事ね。いいわ、話は聞くわ。聞いた上で判断します。助けて貰ったから聞くわけじゃないわよ。それでいいかしら?』
 
 果那『流石は沢渡涼子ですね。獣と呼ばれるだけの事はあります。』
 
 沢渡『獣って喧嘩を売っているの?』
 
 果那『だって金属バットをまだ持っているんだもの。美獣、沢渡涼子さん、実は…』
 
 沢渡涼子も仲間に加える為にいきなり十九年前の事件の話をすれば、自分の素性を明かす事になりかねない。ダーク・テミスは警察から指名手配されている。久住晴翔が信頼する人物とはいえ、慎重に行動する必要があった。果那は新潟で起こりつつある男女の連れ去り疑惑について、沢渡涼子に話して救出の手伝いを要請した。涼子との接点を作り人間性を見たかったのもあるが、犯人確保には警察の協力も必要だ。涼子なら新潟県警に協力を求める事が出来るだろう。
 
 沢渡『そんな事が起きているなんて…明後日の船に乗せられていくのね。場所はわかっているの?』
 
 果那『いえ、それはまだです。あのロシア人が明後日、二人を新潟に連れて行くのを尾行します。場所がわかったら連絡します。警察と一緒に踏み込んで頂けませんか。事件として報道してください。』
 
 沢渡『裏に何かあるのね…わかったわ。新潟県警には甲府の事件で繋がりが出来ているから…県警本部長に話してみるわ。』
 
 翌日、各局の報道で沢渡涼子が襲われた事が報道された。金城の顔写真はまだ公開されておらず、警視庁からは名前も発表されていなかった。警視庁は金城に依頼した半ぐれのリーダー確保の為、マスコミへの情報公開は最小限にしていたようだ。自分の番組に出演する為に局に向かう涼子の元に、他局も含めて多くの報道陣が詰めかけていた。涼子は報道陣の質問には応えずに、テレビ局の中に入っていった。
 
 アナ『沢渡さん、大変でしたね。お怪我はないんですか?』
 
 沢渡『ええ、奇跡的に。』
 
 アナ『目撃された女性の話では、もう駄目かと思ったらしいですよ。』
 
 沢渡『私もですよ。振り返ったらすぐ目の前に車が突っ込んで来ていて。人って緊急時には超人的な速度で動けるんですね(笑)。朝、起きたら身体中が筋肉痛ですよ(笑)。犯人は警察の聴取に対して脅す目的で、私を襲うように依頼されたと自供しているようです。私が追っているのは二十年前の事件…今回の襲撃はその事件に関係があると私は思っています。』
 
 アナ『沢渡さんが追うと言った今泉夫婦殺害事件ですね。では、やはり裏で大きな力が動いているという事ですか?』
 
 沢渡『ええ、間違いないと思います。殺すつもりは無かったと供述しているようですが、私を狙ったという事は事件の核心に迫っているという事なのだと思います。』
 
 涼子は番組の中でダーク・テミスに関して、何も話さずに一切触れる事なく隠匿した。果那に協力を求められた新潟の件もあり、必要以上の情報は犯人グループに疑念を抱かせる可能性もある。自分が襲われた件と新潟の件は別物だと思っているが、余計な事を話してしまう事もある。新潟で何かが起こってから全てを伝える事にした。
 
 新潟県警本部長『沢渡さんの情報を無視は出来ませんね。こちらでも捜査してみます。』
 
 テレビ局に入る前に新潟県警本部長に連絡し、ロシア人に連れ去られた男女がいる事を伝えた。そして新潟の何処かの港から連れ出される可能性が高い事も伝えた。県警本部長は沢渡涼子の情報を信憑性の高い情報として受けとめた。果那の情報から二人以外に新潟市内でも、万代橋付近の若者をターゲットにしている事はわかっていた。本部長は捜査員に付近の聞き取りを命じ、いなくなった者がいないか捜査が始まった。
 
 ダニールが二人の男女を連れて新潟に向かう日の午前、溺死遺体で見つかった男が金城に依頼した半ぐれのリーダーだったと判明した。警視庁は金城の顔写真と半ぐれリーダーの写真を公開し、周辺の捜査と市民からの情報提供を呼び掛けた。ダニールはチラシを配る二人の男女が逃げないように、新橋駅前で見張りも兼ね行動を共にしていた。テレビの報道をみる事は無く、昼過ぎに東京駅から新幹線に乗り二人を新潟に連れて行った。
 
 麻倍階元総理や森本の周辺を都内で嗅ぎまわっていた二人の工作員は、喫茶店で落ち合い情報のやり取りをしていた。喫茶店のテレビに映った金城の顔を見て、成田空港でスマホと車の鍵を渡した男だと気づいた。すぐに本国に連絡を取り日本の機関からの情報で、鈴木とダニールの名前を聞きだし彼らの役割についても聞き出していた。本国から二人に命令が下り二人は新潟に急いで向かっていた。
 
 刑事部長『捜査員からの報告です。一昨日から姿の見えない女性が一人いる模様です。十四、五歳の少女で家出人のようです。』
 
 県警本部長『拉致された可能性があるな。沢渡さん、君の情報の通りだ。拉致された場所はわかっているんですか?』
 
 沢渡『それはまだです。本部長、この情報はダーク・テミスから寄せられた情報です。拉致現場が判明したら連絡するから、警察と一緒に踏み込むように言われています。』
 
 県警本部長『ダーク・テミスですと…また厄介な名前を…今はそんな事を言っている時ではないか。沢渡さん、連絡があり次第、教えてください。』
 
 涼子は前日の夜から新潟に入り、県警本部で捜査の状況をみていた。情報提供者でもあり、六県にまたがった広域連続殺人事件の解決に協力した沢渡涼子を、新潟県警は特別の待遇で迎え入れていた。そして涼子の情報の通り新潟市内でも、一名の少女の行方がわからなくなっていた。ひょっとしたら他にもいるかもしれない。捜査本部には緊張が走っていた。
 
 翌日、新潟駅に着いたダニールと二人の男女を、鈴木プランの鈴木社長が出迎えた。改札を出た後、駅前の駐車場に停められた車に、二人の男女は乗せられた。車はまっすぐに新潟港方面に向かって走り出した。
 
 鈴木『お疲れ様、新幹線とはいえ長旅で疲れただろう。これでも飲んで着くまでゆっくりしてください。』
 
 女性『新幹線の中では何も飲まめなかったら、喉がカラカラだったのよ。』
 
 二人の男女は鈴木から渡された飲み物を、美味しそうに飲み干した。飲み物の中には強力な睡眠薬が混入されていて、十分程経つと二人は眠りに落ちていた。車は新潟港近くのプレハブ小屋の前に停まった。鈴木が鍵を開けプレハブ小屋のドアを開けた後、ダニールと二人で男女二名を担いで小屋の中に入っていった。ドアから入ると事務所のような感じの部屋で、更に奥には扉があり部屋があった。二人は男女を奥の部屋に運んでいった。
 
 鈴木『ダニール、補佐官から依頼されたのは四名ですが、中々厳しかったですね。』
 
 ダニール『一人少ないが仕方ない。韓国人がいるから喜ぶだろう。』
 
 奥の部屋には手足を縛られて、目隠しをされた女子が一人いた。鈴木とダニールを見て怯えた感じで泣きじゃくっている。連れ込んだ二人も同じように縛って、目隠しをして床の上に転がした。少女は県警が把握していた万代橋付近で不明になった少女だった。霧散化した果那の眼が三人を捕え、小屋の位置も把握した。
 
 鈴木『大丈夫なんですか?確か半島出身者は手を出せないと。』
 
 ダニール『気にしないでいいそうだ。何があったかは知らないがな。あの国は韓国人を…南の人間を欲しがっていたから喜ぶだろう。出航は明日の朝だ。新潟港から日本海に出て海上で、本国の船に乗せてウラジオストックに運ぶ。そのまま国境で引き渡す手はずだ。夜中に船に運び入れるぞ。』
 
 鈴木『ダンサーと一緒に来ると聞いていた四名は、見掛けませんが予定が変わったんですか?』
 
 ダニール『私も誰が来たのかは聞いていないんだ。日本に運ぶように指示があっただけのようだしな。』
 
 果那『どんな指示だったのか、聞かせて貰おうか。』
 
 鈴木『誰だ!』
 
 鈴木とダニールが振り返った時、後頭部に一撃が加わり二人は意識を失った。部屋に置いてあったロープで縛ったあと、ダニールのスマホから沢渡涼子にメッセージを送った。二人の意識を取り戻させて、果那は二人への尋問を始めた。果那はダーク・テミスのライダースーツを纏い、口にはボイスチェンジャーをつけ、男の声に変えて話しかけていた。身長も体型も男性のようになる特殊なライダースーツを身に付け、革製のフルフェイスマスクを付けていた。
 
 果那『お目覚めかな。』
 
 ダニール『貴様は誰だ?』
 果那『ダーク・テミスといえばわかるか?奥の部屋に連れ込んだ三人をどうするつもりだった?』
 
 鈴木『ダーク・テミスだと……俺は知らない』
 
 ダニール『こんな事をして無事に済むと思っているのか。』
 
 果那『言いたくなければ構わない。死が待っているだけだ。麻倍階の最期を知らないわけでもあるまい。』
 
 果那が小刀を手に持って二人に向かって構えた。顔をかすめるように突き刺し、二人の頬からは血が滲んでいた。鈴木もダニールも顔面が蒼白になり、慌てて果那に向かって口を開き始めた。
 
 ダニール『ま、待ってくれ、俺は頼まれただけだ。本国に連れて行って北に引き渡すように指示されただけだ。』
 
 果那『誰の指示だ。』
 
 ダニール『本国のエージェントの指示だ。本当か嘘かは知らないが、政府関係からの依頼って聞いている。これ以上は知らないんだ。』
 
 果那『お前はどうなんだ。』
 
 鈴木『俺はロシアのダンサーの紹介が仕事だ。』
 
 果那『そうか、残念だな。』
 
 鈴木『ま、待て、わかった。ロシアへの人の移送とスパイの入国とかの、サポートをするように言われていたんだよ。それだけだ、何も知らないんだ。』
 
 果那『誰の指示だ。』
 
 鈴木『都倉さん…』
 
 その時、部屋の外から銃弾が三発発射された。サイレンサー付きの拳銃から発射された弾は、確実に果那に向かって放たれた。果那は身体に届く前に霧散化し、部屋の壁に三発の銃痕が残った。部屋の扉が乱暴に開き、二人の銃を持った男が入ってきた。二人の男の放つ気質は奥多摩で対峙した、コブラに似た気質で暗殺者の気質そのものだった。二人が踏み込んだ時、果那の姿は消えていた。
 
 男 『何処に消えた?確かに命中したはずだ。』
 
 ダニール『おお、助けてください。』
 
 男 『お前達にはもう用はない。』
 
 男はダニールと鈴木に銃を向け、迷うことなく二人を撃ち抜いた。生き証人になる者の始末をする、プロの組織のように思われた。二人の男は果那に向けて発砲し部屋に入ったが、鈴木とダニールしかいなかった。二人を始末した後、背中合わせになり果那の姿を探した。果那は二人の男が成田空港に降り立った四人のうちの二人だと認識した。この事件に四人の工作員が関わっているとは思っていなかった。
 
 右手と小刀を実体化させ、銃を持った手の甲に刃を突き立てた。二人のロシア人は突然の手の痛みに、銃を床に落とし膝をついていた。その直後、後頭部に打撃が加えられ二人は意識を失って倒れていた。知っている事を聞きだしたかったが、久住は自分の持つ精神干渉でもこういった特殊な構成員には効かないと言っていた。
 
 果那『晴翔さんでも無理なら私に出来るはずもないか。あとは美獣さんにお任せしましょう。』
 
 間もなく涼子と県警がプレハブ小屋を囲み、中に踏み込んでくるはずだ。あとの事は警察と涼子に委ねる事にした。壁に《ダーク・テミス》の文字を残、彼らが入手していた、森本の周辺の住所リストを工作員のポケットに忍ばせた。小屋の外に車が数台停まる男が聞こえた。警察車両が来た事を察すると、部屋の中から霧のように消えていった。
 
 沢渡『連絡があった倉庫はあれですよ。』
 
 刑事課長『沢渡さん、危ないですから!』
 
 警察の制止を振り切り、涼子は倉庫の中に入っていった。そこには黒服の外人二名が倒れており、縛られた二人も倒れていた。黒服の二人の傍には拳銃が落ちていた。奥の部屋には縛られて目隠しをされた、三人の男女が寝転がっていた。警察官が三人の縄を解き身柄を確保して、救急車に乗せて病院に運んでいった。事務所の壁には《ダーク・テミス》の文字が残されていた。
 
 警察は鈴木とダニールの遺体を収容し、黒服の二人の男を拘束した。二人は意識を取り戻し、警察に取り囲まれている事を認識した。立ち上がると靴に隠してあったナイフを振りかざし、警察を振り切り逃走を図った。しかし外で待機していた警察官が、銃を構えて逃走を阻止した。男二人は顔に笑みを浮かべて、隠し持っていたナイフで自らの心臓を貫いて命を絶った。果那は一部始終を見た後、霧散化して東京の自宅に戻っていった。
 
 県警本部長『二人のロシア人から硝煙反応が出たそうだ。拉致の犯人の二人を射殺したのは、あの二人のロシア人という事だ。』
 
 沢渡『ロシア人の事は聞いていなかったわ。何の為に殺害したのでしょう。』
 
 刑事部長『彼らがマークされている事を知ったのかもしれません。口封じで殺害したのでしょうが…それ以上はまったくわかりません。』
 
 新潟県警は港に停泊していた船舶の捜査も行い、ダニールとの関係があった船を割り出した。漁船で明日の朝、日本海に向けて漁に出る予定の船だった。船には船長と乗組員一名しかおらず、漁の準備もされていない不審な船だった。県警の刑事の詰問に船員が口を割って、船長と船員が逮捕された。船長は年に二回、日本海の沖合でロシア船籍の船に、積荷を渡す運搬を担っていたと供述した。積荷は人だったり荷物だったり封筒だったりしたそうだ。人を積んだ事は過去に三回あり、八名の日本人がどこかに連れ去られていた。
 
 県警本部長『沢渡さん、君の情報のお陰で三人の身柄が保護できた。過去の犯罪も船長の供述で明らかになった。ありがとう。』
 
 涼子『いいえ、こちらこそご協力有難うございました。しかし、全容解明には至りませんでしたね。まさか自害するとは思いませんでした。』
 
 県警本部長『ああ、報告を受けた時は驚きましたよ。何処かの国の機関なのかもしれませんね。』
 
 涼子『ロシアですね。』
 
 県警本部長『私は警察官ですよ。確証も無しに推測だけで答える事は出来ません。東京のダンサーチームは帰国したそうです。警視庁に取り調べを依頼しましたが、任意聴取を断って帰国したと報告がありました。しかし…ダーク・テミスとサインを残されては…記者発表するしかないですね。』
 
 報道番組で今回の新潟の事件を、沢渡涼子が視聴者に伝えていた。涼子を襲った金城がダニールと一緒に、二人の男女を誘った事は判明していた。金城をマークしていたダーク・テミスが、今回の事件に気づき沢渡涼子に接触し、新潟県警に協力を要請し検挙に至った事を報道した。涼子は十九年前の極東の開発援助に絡んだ事案で、自分を襲撃させた者達と今回の首謀者が同一犯である可能性に言及した。
 
 アナ『またしてもダーク・テミスの名前が出てきましたね。義賊ダーク・テミス、本当に正義の人なんですね。』
 
 沢渡『ええ、私に情報を流したのは、間違いなくダーク・テミスです。拉致された者を助けて首謀者を倒す事くらい出来るはずですが、私に伝え警察を動かした事には何か意味があると思います。』
 
 アナ『首謀者と思われる二名は殺害され、殺害した二人の外国人は自ら命を絶った。外国の組織が絡んでいるという事ですよね。』
 
 沢渡『そうですね。』
 
 アナ『それはロシアという事ですか?』
 
 沢渡『結局、素性は判明していませんが、偽造パスポートで入国した二人は、ウラジオストックから来ています。明らかに特殊訓練を受けた工作員でした。日本サイドにも受け皿になっている実力者がいるのでしょう。私達は必ず陰に潜む巨悪に辿り着き、陽の光の元に引きずり出してみせます。』
 
 沢渡涼子は威圧感のある眼でカメラに向かい、強い口調でテレビの前にいるであろう巨悪に対して言い放った。久住と一緒に追い始めた事件も極東…ロシアに関する事案が始まりだ。必ず突き止めるという強い決意をぶつける事が、闇に潜む巨悪を動揺させる事になると信じていた。
 
 アナ『ダーク・テミスが今回も人の命を救った事になりますね。義賊という評判は本当のように思いますが…沢渡さんはどう思いますか。』
 
 沢渡『それは正直わかりません。今回は私も命も助けて貰っていますから、あんまり悪口は言えないですけどね(笑)』
 
 アナ『命を?沢渡さんの?あ!例の車の暴走ですか。』
 
 沢渡『ええ、不思議な体験でしたが…ダーク・テミスに助けられました。これは工作員と思われる男の持っていた住所の書かれたリストです。都内や関東近郊、和歌山県と山口県が多いです。福岡県の飯塚市もありますね。』
 
 アナ『何のリスト何でしょう?』
 
 沢渡『何かを探していた?そんな感じでしょうかね。全部、麻倍階元総理の関係先なんですよ。ロシアから来て亡くなった麻倍階元総理の周辺を嗅ぎまわる…何かあるのでしょうね。』
 
 麻倍階元総理の屋敷から入手した書面から、鈴木プランという会社に森本が何か懸念を伝えていた。その書面を入手し鈴木プランに辿り着き、ロシアとの関係があぶり出された。果那の父が関わった極東の開発援助事業…不正に気付いた父が告発する寸前に、何者かに殺害された事もわかってきた。キーワードはロシアにある…久住晴翔と早乙女果那、そして美獣、沢渡涼子の三人が、覆われた闇の手掛かりを掴んだ。
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