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ー信頼ー58

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 望は診察室を出ると、今度は望と入れ替わりに裕実が診察室へと入り、和也を診察室にあるベッドへと寝かせると、一応、先に和也の血液型を調べB型だという事が分かり和也から血液を採取して行く。

「何だか変な感じしますね」
「……へ? どういう事だ?」
「んー、知り合いの人を診るっていうのか……処置しているっていうのか……」
「まぁな……。 でも今は緊急事態なんだから仕方ねぇだろ?」
「ですね。 でも、望さんは大丈夫なんでしょうか? 確か、望さんって昨日熱出したばかりじゃなかったんでしたっけ?」
「望なら大丈夫だろ? なんだろ? 緊急事態とかって時には何か違うパワーが発揮されるっていうのか、なんかそんな気がするんだよなぁ」
「ですよねぇ」

 そして暫くして和也から血を抜くと直ぐに裕実はそれを雄介の所へと持って行き、今度はそれで蒼空へと輸血を始める。

「これで、後は輸血が完了すれば大丈夫やんな」

 そう雄介は安堵のため息を漏らすのだ。

 そして望の方も診察室へと戻って来ると、

「……って、何があったんだ? お前が下着一枚で診察室へと戻って来た理由を聞きたいんだけど……」

 雄介は一瞬、その望の言葉に吹きそうになったのだが、真剣な眼差しをすると望の背中を押し診察室から待合室へと移動するのだ。

「あんなぁ、言うとくけど、下着一枚で診察室に来たのは、緊急事態な事があったから、仕方無しにその姿で居ったんやからな……言うとくけど、流石に俺だって、この診察室で下着一枚で診察なんかせぇへんわぁ。 とりあえず、蒼空が海で溺れているっていうのを聞いて、ほんで、俺は洋服着たまんまやったら、溺れると思うて、仕方無しに服とか脱いで海に飛び込んだんやって……。 そいで、息してなかった蒼空を救出して、和也と一緒に人工呼吸しておって、息吹き返してきて足まで怪我しておったから、緊急事態やったし、そのまま蒼空の事を背負って診察室に戻って来たっていう訳なんやって……」

 それを聞いて、望は仕方無さそうに息を吐く。

「そうだよな。 本当、つくづく思うよ。 やっぱ、お前ってすげぇ奴なんだってな。 今、蒼空の事、殆ど一人で助けたようなもんなんだろ? だって、レスキューから治療まで、お前一人でやってきたんだからよ」
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