【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー天使ー94

これで、お父さんから何かを言われることもなくなった訳だから、これからは、雄ちゃんの自由にしていいと思うの。　だから、雄ちゃんがやりたい職業をやってみたらどう？　本当に医者になりたいんなら、頑張ってみなさい」

　流石は雄介の姉貴って所であろうか。　雄介のことをよく分かっているようだ。

「せやな……姉貴の言う通りや。　確かに俺は小さい頃から親父に『消防士になれ』って言われておったけど……。　もう、小さい頃から言われっぱなしで、本気で自分が歩みたい道を忘れておったわぁ。　自分の意志で何かを決めるってことを怠っていたような気がするな。　確かに、前に望にそんなこと言われた気ぃがするしな。　せやから、望に医者にならないか？　って言われた時に、なかなか自分の意志で決められなくて、何度、望に怒られたことか。　自分がやりたいんなら、やりたい！　って言わなきゃアカンのやな」
「そういうことよ。　確かに、雄ちゃんは昔っから意志が弱かったわよねぇ」

　何故だか、美里は何かを思い出したのかクスクス笑い始める。

「なんやねん！　急に笑いよって……」
「いやね……貴方の小さい頃のこと思い出しちゃって……」

　そんなことを言う美里に雄介は首を傾げていた。

　雄介が『意志が弱い』ことに関して小さい頃になにかあったのであろうか。　美里は思い出したようだが、雄介の方は分かってないようだ。

「雄ちゃん！　みんなの前で話していいのかしらー？」
「なんかあったか?」
「あったわよー。　小学校の学芸会の時にね……」

　それを聞いて雄介はやっと思い出してきたのであろう。　急に顔色を変え慌てた様子で、

「アカン！　アカン！　それは絶対にアカン！　それは絶対に言うたらアカンやつやからな！」

　そう言っているとさっき和也がメールしておいた望が診察を終え美里の病室へと入って来た直後、望の視界に入って来たのは、雄介一人が何だか慌てた様子で、その上、病気である美里の口を押さえている姿が目に入って来たようだ。

「雄介……何してんだよ。　桜井さんは病気なんだぞ、あんま暴れさすな」
「あ、いや……そうやなくてな、姉貴が悪いんやで！　俺の過去を話そうとするから！」
「お前の過去のこと?」

　望は何か閃いたのか、望にしては珍しくベッドの端から美里の方へと体を乗り出し、