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ー過去ー56

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「ま、そうだけどよ。 望の場合には愚痴とかっていうのを引き出してやんねぇと口にするって事はしねぇんだよな。 俺がこう新城の所に居る時に限って喧嘩なんかするなよなぁ。 ま、いーや……望とは飯食いながら聞きだすとするかな? ま、でもさ、望の場合にはなかなかそういう事を口にするって事しねぇけどな」

 和也はそう言い終えると二人はカウンターでご飯を受け取る。 そして望が座っている中庭が見えるカウンターへと向かうのだ。

 望はそのカウンターテーブルの端に座り一応ご飯を口にするものの、窓の外をずっと眺めているだけで心ここにあらずという所であろうか。

 和也はその望の隣りへと座ると裕実は和也のその隣りへと腰を下ろす。

 そして和也は望へと思っていた質問を投げ掛けるのだ。

「なぁ、望……雄介と何があったんだ?」

 その和也の質問に体をビクつかせる望。

 だが返って来た答えというのは、

「……別に」

 と本当に望はそういう事に関して口を割らないのか、それだけ言うと視線を窓の外へと移してしまうのだ。

「お前さぁ、表情もオーラも雄介と何かありましたって言ってんだよ。 それに望がそんなに暗い理由っていうのは雄介の事しかねぇだろ? 望の場合には患者さんに対して感情移入なんてしない訳だしさ」
「だから、何も無いって言ってんだろ」

 望はそう言うと、まだ食べ残しているご飯を持ち立ち上がろうとしたのだが、

「ほら、やっぱり、おかしいんじゃねぇのか? あの震災以来、今までこんなに残した事なんて事はなかっただろ? それなのに今日は残してるしさ。 ってか、望って相変わらずだよな? 望が自分の悩みに対して話さないっていうのはさ。 ってか、これで、俺がみんなに悩み事を話さない理由が分かっただろ? でもさ、前に望は言ってくれたよな? 『親友を信用しないのか?』って。 それに、今まで望が俺に相談してきた事、全部解決してきたと思うぜ」

 その和也の言葉に望は諦めたような息を吐くと、再び椅子へと腰を下ろす。

「ホント、和也には勝てねぇのな」
「悪いが……今日、望の様子がおかしいって気づいたのは俺じゃねぇよ。 裕実が教えてくれたんだからな。 裕実が俺に望の事について相談してきたから分かったんだからな」
「そっか……。 まぁ、あ、ありがとう」

 一旦、望は裕実に向かってお礼を言うと口を開くのだ。

「とりあえず、今日の朝は雄介と喧嘩しちまったんだよ。 最初は食事の話からな」

 それから望は今日の朝雄介との事を話始める。

「ふーん……って事はさ……雄介は望の事を心配して言ってくれたって事なんだよな? まぁ、望的にはその雄介の言葉のお節介と思ってしまった。 それと雄介は俺への嫉妬かな?」
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