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ー崩落ー84

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  さっきまであんなに頭を悩ませていたのは、どこのどいつやらとはこういう事なんだろう。

「ありがとうな! 望! 何だかやる気が出て来たぜ」

 その和也の元気のいい答え方に望は安堵のため息を吐く。 そして腕を組んで背もたれへと体を預けるのだ。 だが今の望は和也にそんな事を言ったのだから心なしか顔が赤く感じる。

 和也の方は励ましのエールを望からもらってからか再び笑顔を取り戻すと、

「ああ! 分かったぜ! お前が言いたい事がさぁ、もう、こうなったら上等じゃねぇか! 俺と裕実は付き合ってますって公表してもいいんだからなー! その方が俺的にはスッキリするしよー! その方が堂々と一緒に居られるしな!」
「それだけ? それだけだと半分は当たりで半分はハズレかな?」

 まだ歩夢の方は余裕あり気だ。 未だに和也の事を見上げているのだから。

「半分は当たりで半分はハズレ!?」
「そう!」

 そう歩夢が言った瞬間、流石の望の焦ったくなったのか望も立ち上がると歩夢の方に顔を向ける。

「お前さぁ、もう、子供じゃねぇんだから、いい加減、親父の事を盾にするのは止めろよなー。 和也はなぁ、俺からしてみたら最高のパートナーなんだから仕事は辞めさせねぇぞ」

 それだけ歩夢に向かって言うと望は座席へと腰を落とすのだ。

「なんだー、そういう事だったのかぁ」
「そういう事だ……全く、汚い手使いやがって……」

 望はそう和也の隣で一人呟くのだが、ちゃんと隣にいる和也の耳にはその言葉が届いていたようだ。 和也は再び笑顔を取り戻す。

「望の言う通りさぁ。 俺と望は最高のパートナーなんだよ。 何があってももうこれからは望と離れたくねぇしな。 んで、裕実と俺とは恋人だしな」

 そう勝ち誇ったかのように言う和也。 多少、大人気ないとは思ったのだが、それ位の気持ちがないと歩夢には勝てないだろう。

「ところで、お前は、親友とかっていた事があるのか?」

 バスはいつの間にか病院を出発していたのだが和也は揺れるバスの中、歩夢の視線に合わせ話をしている。

「あのねー。 まだ、話終わってないのだけどな。 話変えないでくれる? それとも、それっていうのは梅沢さんの戦法?」
「じゃあさぁ、お前はあんだけ言われて返す言葉があるのか? 望の弟っていうから、望や裕実に手を出さなければ優しくしてやろうって思ってんのによ」
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