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ー雪山ー103

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 それから、いつものように診察室での仕事を終えると各科毎に片付け作業を始める。

 和也が自分の所の診察室を片付けていると隣の診察室から金属音が鳴り渡るのだ。

 だいたいこういう事を仕出かす人物は分かっている。 だが今日の和也はその金属音に対して動かないようだ。

 そんな和也に気付いたのか、望は、

「和也ー」
「なんだよー」
「今の音の元は、どうせ、アイツだろ? 絶対に台かなんかをひっくり返した音だと思うんだけどな」
「だから、何?」

 そう冷たく返す和也。

「だからさ、片付けるの手伝ってやればいいだろって……」
「だってさ、そこは自分でやらかしたんだから、自分でやらせた方が為になるんじゃねぇのか?」

 その和也らしくない言葉に望の方は息を吐く。

「お前って、そんなに冷たい性格だったっけ?」

 その望の言葉に反応したのか和也は動きを止めるのだ。

 望はそんな和也の姿を見て後ひと押しとでも思ったのであろう。

「いいのか? お前の一番いいところを出しきれてなくて、そこが、お前の取り柄みたいなところだろ?」
「ん……まぁ……」
「分かってるんだったら、今、それを見せなくてどうするんだよ。 今がそのチャンスとかって思わないのか?」

 そこまで望に言われると流石の和也も重い腰を上げたようで、とりあえず裕実がいるところへと向かったようだ。

 裕実は和也を視界に捉えたのか、

「和也さん……」

 そう口にしたのだが、何故か首を横に振ると再びムッとした表情で片付けを始める。

 和也の方は無言のまま裕実と一緒に片付け作業を始める。

 だが和也の頭の中にさっき望が言っていた事が出てきたのであろうか。

 和也は掃除をしながら、

「お前が今、俺の事をどう思っているのか? っていうのは分からないんだけど……俺はお前が俺の方に戻って来るまで、待ってるからな。 俺は、今の俺はお前と話さないだけでも、心の中はぐちゃぐちゃなんだからよ」

 和也は自分が裕実に言いたい事を言うだけ言うと片付けだけを済ませ望がいる診察室へと戻って来る。

 まだ望は残っている仕事をしていたのだけど和也の気配に気付いて和也の方へと視線を向け、

「……で、どうだったんだ?」
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