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ー天災ー61

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 望は雄介の方に顔を向けて微笑むのだが、この暗闇の中では顔さえも確認出来ないような状態なのだから見えていないのかもしれない。

「あ、あのなぁ、望……言い訳になるのかもしれへんけど、聞いてくれるか?」
「ん? あ、ああ、うん、聞いてやるよ。 ま、確かに理由聞いた方が安心するだろうしな」

 雄介は望の頰を撫でながら語り始める。

「俺が、望に異動だって分かっておったのに言えなかったっていうのはなぁ。 せっかく、望が勇気をもって俺に『一緒に住まへんか?』って言うてくれた直後やったやんか、せやから、なかなか俺からそれを言うのは勇気がいる事だったのかもしれん。 だってな、それはお前の悲しむ顔を見たくなかったからで」
「そっか。 でもな、やっぱ、そういう事はちゃんと言ってから行って欲しかったかな? そしたら、安心も出来ただろうし、心の準備だって出来てただろうしな」
「ああ、せやな。 ホンマ、スマン! 俺の思い込みで望の事、傷付けるような事してしもうて」

 そう言うと望の体を確かめるように抱き締める。

 その雄介の行動に望は黙ったままだ。

 確かに望はさっき雄介には、あんな事をしてしまったのだが、そこは恋人だからだったのかもしれない。 好きだからこそ心配で今までいなかった分の心配を雄介にぶつけてしまったのであろう。 それにやはりこうやって雄介に抱き締められたりキスされるのは嫌いではない望。

「もう、寝ようぜ。 まだまだ、明日も明後日も暫くはこんな状態が続くんだからさ。 体、休める時に休めておかないとだろ?」
「せやなぁ」

 雄介は望の言葉に納得すると瞳を閉じる。

 明日はもう望達だけではない。 雄介もこに現場に来たのだから人命救助の方に向かわなきゃならないのだから。
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