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がつ子、曲がるつもりのない曲がり角を曲がる
5.
しおりを挟む久しぶりの行為だ。前戯で盛り上がったとはいえ十全に準備が整っているとは言い難い。低身長でひょろひょろだった元カレ(そういう男が好みなんだから仕方ない)のブツはひょろ体型に見合ったサイズだったと記憶している。樹子の知るブツは元カレのものひとつのみである。広居主任が震える手でコンドームをかぶせるべく握っていたブツは凶悪な大きさだった。実際の体積はともかく心的な印象では倍以上に見えた。入らない。ぜったい無理。草食純情童貞だった元カレのひょろいブツでさえきつかったのだ。あんなぶっとい肉食マッチョの棍棒みたいなブツなんぞが入るわけがない。
――土壇場だってのに申し訳ないけどここは思い切って、お断りするしか……っ。
侵入を止めるべく樹子はぎゅぎゅうう、と秘所に力をこめた。
「しゅに、っ、わわわ、私やっぱり、……あぁ、っん」
「お、おじ、――――ふぁっ」
ぎちちち、と最奥を目指し侵入を始めようとしていたブツの衝撃が
ぬりゅ。
ふっと軽くなり、退いた。がば、と広居主任が覆い被さり樹子を抱き締める。
「ごめ、ん……」
ごめん、って何が。
訊きたいのはやまやまだが訊いてはいけない場面と見た。
何があって何がなかったか。状況を整理したい。
樹子は混乱したままじっと抱き締められるに任せた。
未知との遭遇サイズの塊が樹子の秘所をこじ開けた。こじ開けようとしたがしかし力を失い途中で出ていった。
――あ、なるほど。中折れか。
危うく口にしそうになったとき、広居主任が樹子の耳もとで囁いた。
「ほん、と……ごめ、ん……」
接する頬と頬、耳もとで掠れた声が震える。
泣い……てはいないようだが、泣いているのと変わらないしょんぼり度合いだ。
あれだけの硬度と大きさだった棍棒のようなブツが瞬時に俯きバナナと化すとは。
何がいけなかったのか。
色気が足りなかったか。サイズが合わなかったか。女、しかも新卒の分際で騎乗位素股で途中までリードしたのがいけなかったか。「いい?」と訊かれてちゃんと答えずうなずきのみ返したのがまずかったか。そもそも樹子などでは欲情できなかったのかもしれない。介抱のためとはいえ独り暮らしの男の家に上がり込んだ上に拒む気もなかったわけで、広居主任の中ではその気もないのに誘惑されたことになっているかもしれない。悪いことをした。気まずいので帰ろう。ベッドから出るべくもぞぞ、と動こうとした樹子の体ががっし、とさらに深く抱き込まれた。
「ごめん……」
「えっと、その」
「好きだ」
「――――はい?」
すきだ、すき、――好き、とは?
それはすなわち広居主任が樹子に恋愛感情を抱いているということだろうか。混乱が募る。
「あの、責任がどうこうとか、そういうことでしたらその、ほぼ未遂ですし気になさる必要は――」
「違う……! 大路が、好きなんだ。きみが配属されてきて初めて会ったときから。でも俺、まだ恋人と別れてすぐだったし、セックスのときこうなっちゃうし……」
掠れた囁きが閊える。
上司が混乱している。
自身の混乱を棚に上げ、樹子は両腕を逞しい背中にまわした。
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