騙されて異世界へ

だんご

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10 連続的に遭遇

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 『グギャ~~~ッ!!』
 『ブゴォ~~~ッ!!』
 ︵ドゴーーーンッッ!!︶

 怪獣対戦が大音響で聞こえてくる。
 サイクロプスとベヒモスの子供が戦っているんだろうな。
 巨人的忍び足で、木々を倒さない様に歩いて、獲物に襲い掛かったんだろう。
 てか、種族的にどっちが強いんだろうか……う~ん、ベヒモスか?サイクロプスか?
 時と場合によるのか?
 まだ認識阻害中か……
 ベヒモスの子供なら……イケるんじゃないか?ってサイクロプスが思ったのかもな。

 『グギャ~~~ッ!!』
 『ブゴォ~~~ッ!!』
 ︵ガンッ!ドゴンッ!!︶

 いつまでもヘタリ込んでばかりもいられないな。
 ……けど、腰抜けてんだよなぁ。
 サイクロプスが去った時、緊張の糸がプツンッといってしまった……
 今の俺は、木に抱き付くショボクレたオッサンだ。
 木から離れようにも、足がふにゃふにゃなくせに、手が強張っていて難しい……
 悲しくなる程、俺の身体の自由がきかないのだ。
 即席の槍は、意味がないから回収しておこうか。
 ……アッチは危ないだろうから、移動したいんだが。

 『グギャ~~~ッ!!』
 『ブゴォ~~~ッ!!』
 ︵ズガンッッ!!︶

 ……ん?
 待て待て。
 声、近くなってないか?
 さっきは遠ざかってたのに?
 ヤバいヤバいって!
 動け!動けよ、俺の身体っ!
 早くここから離れるんだっ!

 『グギャ~~~ッ!!』
 『ブゴォ~~~ッ!!』
 ︵ズガンガンッッ!!︶

 ︵ひゅぉ~~おおお……︶

 ……『ひゅぉ』の音が近付いてい、
 ︵ズドンッッ!シュ~~~……︶

 ……凄ッ……いきなり隣に木が生えた……かの様に、突き刺さったぞ……?
 シュ~って煙上がってんだけどぉ?!
 ここ、やべぇ……逃げなきゃならん、逃げ、

 ︵ドガンッッ!!︶

 えっ?

 ベヒモスが突然空から降って来たと思ったら、結構な衝撃を受けた。
 と思ったら、今度は抱きついていた木が、俺諸共に空へ打ち上げられた。
 勿論周囲の木々も御一緒コースだ。

 「マジかよ……」

 あれ、スゲェ勢いのあるフ○ーフォール、遊園地の落下体験遊具に乗ったらこんな感じ……

 激しい勢いで打ち上げられて、一瞬止まってからの……落下……
 
 「のっ……わああぁぁぁぁぁぁ!!」

 重力加速が半端ネェっっっ!
 木っ?!木かっ?!木の重みかぁあっ?!
 このまま地面に激突したらっ文字通りの木っ端微塵だぞぉぉおっ?!
 せめてっせめて湖でもっっあればっっ!

 【キングスライム】
 ・非常に危険

 ︵ズボムッ!︶

 突っ込む寸前に見た【鑑定】が間違いなければ、キングスライムに突き刺さって木っ端微塵は回避できた……

 ︵ジュボボボボボォォォ︶

 が、絶賛消化中らしい!?
 続々と突っ込んで来た木々も激しい泡立ちを見せているっ。
 俺も水中ってか、スライム体内で泡立ち始めて、全身が痛みだしたぞっ?!

 溶ける溶ける溶ける溶けるっっ!!

 藁をも掴む思いでかき回していた手に硬い物がぶつかった……

 【キングスライムの核】
 ・魔物の命の源

 【アイテムボックス】回収っっ!!

 核の消失したキングスライムが急激に溶け、俺は再び森に排出された……

 「い……生きてた……お、俺、生きてた……」

 地面に全身で抱きつく形の俺……
 衣服がほぼ全て溶け全裸状態の俺……
 今、全身で生命の喜びを感じている……

 メチャクチャだな……異世界……

 『ゲギャ?』

 ︵ビクンッ︶
 ……まさか?まさかの……?

 『『『『ゲギャギャッ!!』』』』

 【ホブゴブリン】
 ・危険
 【ゴブリンメイジ】
 ・危険
 【ゴブリンアーチャー】
 ・危険
 【ゴブリン】
 ・危険

 異世界テンプレお約束ぅっ!!
 今なのかっ?!
 今来ちまうのかっ?!
 安息を得た瞬間、全身がプルプルで力が抜けきった、今っ?!
 そりゃないダロぉおお~~~?!

 

 『ゲギャ!ゲギャゲギャ』
 『ゲゲゲギャ』 
 『『『『ゲギャギャギャギャギャ!!』』』』

 ……ゴブリンの愉快な仲間達が、俺を獲物縛りで運んでいる。
 大事な所だけギリギリ残った服の欠片で守られてるが、きっとすぐに意味のない物になるだろうな。
 十中八九、餌にする気だから。

 『※その認識でOKです』

 言われんでもわかるから……
 あれ?認識さん、戻った?
 あぁ……敵のレベルが下がって阻害されなくなったからか。

 『※その認識でOKです』

 と言う事は、かなり人里近くまですっ飛ばされたのか……

 『※その認識でOKです』

 ……どっちにしろ厄介だな……
 あれ?
 俺の最後の防具……どこに行った……?
 ……えっ?まさか……消化液で、溶けきった……?

 『※その認識でOKです』

 ノォォォオォォォ~~~~!!
 オッサンの露出はダメだろぉぉぉっ!!
 犯罪者確定だろぉぉ!!
 
 『『『『ゲギャギャギャギャ!』』︵ジュル︶』』

 あっ、それより先に食われる……詰んだな……

 『ゲッ………︵ドサッ︶』
 『ゲギャ?ッ?!︵ドサッ︶』 
 『ギャギャ?!グゲッ?!︵ドサッ︶』
 『ギャギャッ!!』

 「︵ドスンッ︶あたっ……」

 急に俺を運んでいたゴブリンが倒れた。
 尻から落ちて、打ち付けたのが微妙に痛い。
 どうやら、弓矢でゴブリンを貫いたみたいだ。
 倒れたゴブリンが起き上がらない所を見ると、一撃必殺だった様だ。

 『ゲギャッ?!』
 ︵ガギンッ!!︶
 「チッ!!……ホブゴブリンは簡単にいかねぇかっ!!」

 ぬおっ?! いきなり現れたっ?!って、速すぎて見えなかっただけか?
 スゲェ……動きが全然見えねぇ。
 
 【鑑定】
 名前    リック
 種族 人族
 年齢    32歳
 職業    冒険者
 Lv        38
 スキル 【剣】【槍】【アイテムボックス】
 魔法     【生活魔法】

 おぉ……スゲェな。レベル40手前だと、こんなにも強いのか……
 ……あっ、俺の【ステータス】ヤバいっ!
 種族抜けてやがるっ! 
 付けとけよっ仮神っっ!!
 ヤバっ! 【称号】【加護】の枠、隠してなかったっ!
 素早く隠せっ!

 激しい打ち合いの後、ホブゴブリンが倒れた。
 トドメは弓矢だったみたいだ。
 他にも仲間がいるんだな。

 「おい、大丈夫か?」
 
 背が高く、引き締まったマッチョボディ。
 短髪の赤髪がサラッとなびくイケメンだ。
 きっと世の女性達にキャーキャーされるタイプだろう。
 羨ましい。
 そんなリックが話しかけてきた。
 助けて貰ったが、丁寧に話し掛ける……はダメだろうな。
 冒険者は、粗野な感じにしてないと、色々バレるからな。

 「……すまん。助かった」

 「しかし……何が起きて事になってたんだ?」

 一瞬だが、眼力が増したな……探ってるんだろうか。

 「俺にも何が何だか……森で迷ったんだが、気付いたらこうなってたんだ……」

 「こうなる前は、どこから来た?」

 探り確定だな。

 「それが……ちょっと怪しいんだよ。同行者達とはぐれた事や、巨大な魔物同士が戦って必死に逃げてた事……スライムに襲われた事は思い出してるんだが、気付いたらコレだ……」

 「……同行者とは?親しかったのか?」

 「いや……初めて会ったはずだ……あぁ、呼び込みで集められた……のか?妙に俺だけ浮いてたな……嫌な感じだった……」

 「ソイツらの顔、覚えてるか?男か?」

 「いや、顔は思い出せないな……男もいたが……女が多かったな……」

 頭が痛んだフリもしておこう。
 詐偽にでもあって、騙されたフリだ。
 それに、騙されたのも嘘じゃないからな。

 「そいつが言った事はじゃないな」

 「そうか……」

 ……やっぱりもう1人いた。
 ご丁寧に嘘発見器の能力付きで。

 【鑑定】
 名前    タバサ
 種族 人族
 年齢    28歳
 職業    冒険者
 Lv        32
 スキル 【弓】【短刀】【真偽の目】【鑑定】
 魔法     【生活魔法】【回復魔法(小)】

 「お前の名前は?」

 「多分……ソブル……だ」

 「そうだ。合っている……って、全裸か?!」 

 細身だが引き締まった筋肉のある女性が弓矢装備で出て来た。
 キツい顔立ちだが、冷たい感じはしないな。
 若干顔を赤らめる所に好感が持てる……って、俺は変態じゃないぞ?
 見られて喜ぶなんて趣味は、断じて持ち合わせていないからなっ?!

 「多分、スライムっぽい……」

 「あぁ……だろうな……」

 「【アイテムボックス】のはどうだ?」

 「全部使……」

 「不運なヤツだな、お前……」

 「俺もそう思うよ……」

 リックがマントを差し出してくれたので、ありがたく羽織らせて貰った。
 タバサは平気だと言っているが、女性。
 微妙に目をそらしているので、変態認識されてるのでは……と不安だ。

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