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日乃本 義に手を出すな
拾
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「ウォータークローゼットで話し込むのもなんだし、場所を移動しようか。
近くにソファーがあったはずだよ」
彼に声を掛けられ、二人で洗面所を後にすると、左に曲がって二メートルくらいのところにバロック調のソファーを見つけて、そこに並んで腰掛けた。
柾彦は再び、先程彼から渡されたメモを見た。
he' sempai …?
「…これ、なんかの暗号?」
柾彦がメモを指差すと、
「自分の下の名前を少しアレンジしたHNだよ。
…そうだ。折角だし、これを暗号だと思って当ててみてよ、僕の名前」
彼は意味ありげな笑みを浮かべると、口元に人差し指を立てた。
柾彦はメモを片手に考え始めた。そして
「ひーセンパイだから、名前の頭文字は『ひ』、だな!」
自信たっぷりに彼の方を向くと、彼は「安直すぎるでしょ」と言って、白い歯を見せながら笑った。
「まあでも、本名が『ひ』から始まるというのは、合っているよ」
「お、ヒントが出た」
柾彦は再びメモに視線を落とす。
he' sempai…ひー、じゃなくて、彼、先輩?
『sempai』が律儀にヘボン式なのにも、理由があるのだろうか?
そしてheの横にある点……これは何を意味……
「!……アナグラムか」
彼は無言で、肯定も否定もしない。流石にもうヒントは出してくれないか。
とりあえず逆から読んでみるが、意味不明だった。
柾彦は閃きを得られなかったので、先に四文字のアルファベットを抜き取り、残りの四文字を意味が繋がるように脳内で組み換える地道な消去法に切り替えた。
same、seem、heap…どれも違う。余った四文字と全く繋がらない。なら、次は五文字と三文字で…。
「…まだ、かかりそう?」
柾彦を覗き込むと、彼が声を掛けた。
「もうちょっとだけ……。
……あ」
sheep……羊。
残りの文字を、意味を為すように組み変えると…。
「僕は、羊……、
そうだろ?――ヒツジ」
彼は柾彦の手からメモを取ると、アルファベットとリーダーの一文字一文字の真下に、矢印を入り交わせていった。
そして、矢印の先が同じ文字になるように、順番に書き連ねていくと…
「お見事。……アイム・ア・シープ」
答え合わせが終わったメモを雅彦に差し出し、彼――ヒツジは満足そうに笑った。
近くにソファーがあったはずだよ」
彼に声を掛けられ、二人で洗面所を後にすると、左に曲がって二メートルくらいのところにバロック調のソファーを見つけて、そこに並んで腰掛けた。
柾彦は再び、先程彼から渡されたメモを見た。
he' sempai …?
「…これ、なんかの暗号?」
柾彦がメモを指差すと、
「自分の下の名前を少しアレンジしたHNだよ。
…そうだ。折角だし、これを暗号だと思って当ててみてよ、僕の名前」
彼は意味ありげな笑みを浮かべると、口元に人差し指を立てた。
柾彦はメモを片手に考え始めた。そして
「ひーセンパイだから、名前の頭文字は『ひ』、だな!」
自信たっぷりに彼の方を向くと、彼は「安直すぎるでしょ」と言って、白い歯を見せながら笑った。
「まあでも、本名が『ひ』から始まるというのは、合っているよ」
「お、ヒントが出た」
柾彦は再びメモに視線を落とす。
he' sempai…ひー、じゃなくて、彼、先輩?
『sempai』が律儀にヘボン式なのにも、理由があるのだろうか?
そしてheの横にある点……これは何を意味……
「!……アナグラムか」
彼は無言で、肯定も否定もしない。流石にもうヒントは出してくれないか。
とりあえず逆から読んでみるが、意味不明だった。
柾彦は閃きを得られなかったので、先に四文字のアルファベットを抜き取り、残りの四文字を意味が繋がるように脳内で組み換える地道な消去法に切り替えた。
same、seem、heap…どれも違う。余った四文字と全く繋がらない。なら、次は五文字と三文字で…。
「…まだ、かかりそう?」
柾彦を覗き込むと、彼が声を掛けた。
「もうちょっとだけ……。
……あ」
sheep……羊。
残りの文字を、意味を為すように組み変えると…。
「僕は、羊……、
そうだろ?――ヒツジ」
彼は柾彦の手からメモを取ると、アルファベットとリーダーの一文字一文字の真下に、矢印を入り交わせていった。
そして、矢印の先が同じ文字になるように、順番に書き連ねていくと…
「お見事。……アイム・ア・シープ」
答え合わせが終わったメモを雅彦に差し出し、彼――ヒツジは満足そうに笑った。
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