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ムカムカする気分を深呼吸で落ち着けながら次の店に入る。盥や木椀を買った雑貨屋だ。
「いらっしゃい。おや、あんたさっきの。どうしたい?盥が水漏れでもしたかい?」
先ほど対応してくれた女性が驚いた顔をしている。
「いえ、盥は立派な物で、水滴一つ溢れませんでした。先ほどは盥と木椀しか見ていなかったので、改めてゆっくり見たくて伺いました。」
そう告げると笑顔になる。
「そうかい、そりゃぁ良かった。他にも良い物が沢山あるから、ゆっくり見てお行き。」
「はい、お邪魔します。」
声をかけて奥へ進む。布製品、木製品、鉄製品、携帯用の食料に岩塩、蜂蜜、油、様々な物が売っている。
俺は携帯食料と堅パンを30食分ずつ、蜂蜜を6瓶、油を2瓶、オイルランプを2つ、ブッシュハットのような形をした濃い緑色の帽子と茶色の帽子を1つずつ、大中小の鉄鍋と大小のフライパン、ボウルのような大きい木椀を4つ、大中小の木椀を4つずつ、鉄製のスプーンとフォークを4セット購入する事にした。
「こんなにいっぺんに、大丈夫かい?かなりの金額だよ?」
女性が驚いている。確かにそうだよね。携帯食料はなんと1食30銅貨もするのだ。食堂で夜に出される定食の平均的な値段の1.5倍だからね。堅パンも1個5銅貨。これだけで銀貨1枚を超えてしまう。
だが、ここに来る前に65銀貨も稼いできたのだ。宿代と食費が無料な分、その他の買い物で地元還元しないと申し訳ない。今回稼いだ分は全てこの村で使い切るつもりだった。
「棒銀貨10枚以内なら大丈夫です。」
そう言って実際に棒銀貨10枚をカウンターに並べて見せた。現物を見せるのが一番手っ取り早いからね。
「ちょいと待っておくれよ。さすがにこの数だと計算が大変だ。」
女性は藁半紙を出し、品物を確認しながら各品目ごとの合計金額を書き込んでいく。最後に全部足し込んで総合計金額を出す。
「全部で61銀貨と5銅貨だけど、半端はサービスだ。61銀貨で良いよ。」
堅パン1個分サービスか。ありがたい。俺はカウンターに並べた棒銀貨のうち4枚をしまい、新たに銀貨を1枚出した。
「うん、ちょうどだね。こんなに大きな売り上げが出たのはこの店始まって以来かもしれないよ。今日は店じまいして一杯やろうかね。」
女性は上機嫌だ。既に生活基盤が確立した者ばかりの村だ、そうそう大きな買い物は無いだろう。
村を出る時だって、荷物を減らすのが当たり前だからわざわざここで買い物をして村を出るはずも無い。
ある程度在庫整理にもなったのだろうし、こちらは他人に見せられない異世界道具の代用になる現地の道具を入手できた。お互いにwin-winだ。購入した品物を収納し、女性に頭を下げて表に出る。
さて、買い物の続きだ。順番に回るなら肉屋、魚屋、八百屋だ。
もちろん変に順番を変える必要なんて無いので、隣の肉屋へ。
ガタイの良い中年男性がお客の要望に合わせて肉を切り分けている。スライド式の天秤ばかりを使っている。度量衡が定められているという事だ。公平な取引には欠かせないからな。
生肉は部位にもよるが、見た限り100gで10銅貨くらいで販売されているようだ。野生動物を狩って肉にしているのだから、それくらいは当たり前か。なかなかのご馳走だな。
「すいません、干し肉をいただきたいのですが。」
と声をかけると、
「おう、ちょっと待ってくれ。おおい!干し肉が欲しいお客さんだ!頼む!」
と奥に声をかける。少しして大きなお腹をした女性がふうふう言いながら出てきた。
「ごめんなさいね。この通りなので長い時間立っているのは大変なのよ。何より、あまり長い時間店に出てると夫がうるさいしね」
と笑顔で言う。ガタイの良い旦那さんが耳を赤くしている。初心だなおい(笑)。
「大変でしょうが楽しみですね。男の子と女の子、どっちなんでしょうね?」
前世で妻のお腹に話しかけていた頃を懐かしく思い出す。お腹が邪魔で足を洗い辛いというので、一緒に風呂に入っていたなぁ。
「健康に生まれれ来てくれればどっちでも良いわ。夫は女の子を望んでるけどね。可愛いい服を着せてジニアル領で一緒にお買い物をしたいんですって。」
コロコロと笑いながら奥さんが言う。それに被せて低い声で、
「よそ様に余計なことを言うな。」
ボソッと呟くように旦那さんが言う。まだ耳が赤いよ(笑)。
「大変なのに余計な話をしてすみません。大きめの干し肉を6塊ほど頂きたいです。出来れば色々な肉を食べてみたいのですが、干し肉にする獲物は決まっているのですか?」
奥さんに尋ねる。
「うちではウサギ、シカ、イノシシを使っているわ。脂の乗った部分は生肉として売って、脂の少ない赤身を干し肉にしているの。今はちょうど3種類揃っているわよ。」
「ではそれぞれ2塊ずつ、なるべく大きい物をお願いします。」
「良いわよ。ウサギは100g50銅貨、シカは60銅貨、イノシシは80銅貨よ。それぞれ計ってみるからちょっと待ってね。」
奥さんはそう言うと、木箱の中から干し肉を選び出し、奥にある小さな椅子に腰掛けて天秤ばかりで重さを測り出した。
「ウサギが2塊で450g、シカが600g、イノシシは900gね。えーっと、こうでこうでこうだから、銀貨13枚と銅貨5枚だけど、銀貨13枚で良いわよ。」
奥さんが笑顔で言う。と言うか、ずっと笑顔だ。幸せそうでなによりだ。
棒銀貨1枚と銀貨3枚を渡して収納する。
「あら、収納持ちなのね。商人としてはもちろん、冒険者になっても引く手数多よ。でも、無茶しちゃダメよ。命が一番大事だからね。」
「生きてさえいれば何をしてでも食っていける。コツコツと積み重ねてりゃ良い事もあるさ。欲を出すなよ。」
旦那さんの声が続く。俺の容貌を見て心配してくれてるんだろう。見ず知らずの若造なのに、ありがたいことだ。でも、中身はアラフィフなのよね(笑)。
「ありがとうございます。また買い物に来れるよう頑張ります。」
そう言って2人に頭を下げ、店を出る。さあ、次は魚屋だ。隣へと向かう。
魚屋は30半ばの女性が店を取り仕切っているようだ。10代前半の娘と10歳になるかならないかくらいの娘が手伝っている。
店先には生魚がそのまま並んでいる。購入した各家庭で捌くのだろう。内臓や頭は肥料にするのか罠の餌にするのか、何かしら利用できるのだろう。
樽が幾つも並んでいるところを見ると塩漬けもあるんだな。梁から下がったロープには干物が吊るされている。麦からも糠が取れるので、糠床を教えたら喜ばれそうだな。
「すいません、軽く炙れば食べられるくらいの干物が欲しいのですがありますか?」
声をかけると威勢の良い返事が返ってくる。
「日保ちしなくて良いんだね?だったら干して2日目のやつがあるから出してあげるよ。ヤマメ、イワナ、サクラマスがあるけどどれが良い?」
「それぞれ10尾ずつお願いします。」
「うーん、構わないけど、日保ちしないんだよ?大丈夫かい?」
わざわざ確認してくれるなんて、良い人だ。
「大丈夫です。すぐに食べますので。」
そう言うと安心したように大きく頷く
。
「なるほど、パーティーの買い出し係かい。感心じゃないか。下積みは大事だからね。腐るんじゃないよ。」
そう声をかけてくれる。パーティーって言っても、1人と1匹なんだけどね(笑)。本当、良い人だな。
女将さんと話しているうちに、年下の女の子が大きなザルを4枚持って店の裏手に回っていった。干してある魚を取りに行ったのだろう。
女将さんとお客のやりとりを見ながら待っていると、重ねたザルを抱えて危なっかしい足取りで戻って来た。そのザルを抱えてちゃ足元が見えないもんね。
それでも転びもせず無事に秤のところまで辿り着いた。もう一度裏へと向かっていく。サクラマスはデカいもんね。一回じゃ無理だったか。
再びヨタヨタと戻って来た。途中で上の娘がザルを受け取り秤の前に運ぶ。
「ヤマメは100g15銅貨、イワナは25銅貨、サクラマスは35銅貨だ。間違うんじゃないよ!」
女将さんが大きな声で娘に言う。下の娘が秤に乗せ、上の娘が算板をいじっている。
「銀貨38枚と銅貨50枚よ。」
上の娘が下の娘に耳打ちしている。大きく頷いた下の娘がチョコチョコと近づいてくる。
「全部で銀貨38枚と銅貨50枚です!」
笑顔で両手を出している。
「はい、じゃあこれでお願いします。」
そう言って棒銀貨4枚を渡すと、大事そうに握りしめて上の娘の所に走っていく。
上の娘は棒銀貨なのを確認して、お釣りを用意している。また下の娘がチョコチョコと歩いてくる。
「銀貨1枚と棒銅貨5枚のお返しです!革袋はありますか?」
元気に訊いてきた。
「収納持ちだから、そのままで大丈夫です。持って来てもらえますか?」
と声をかける。
「はい!今お持ちします!」
と元気な返事。すると上の娘も一緒に重ねたザルを抱えてやって来た。
上のザルから順に収納していくと、下の娘が目を輝かせながら見ていた。
全て収納して3人に頭を下げる。
「お世話になりました。」
「またおいでよ!」
女将さんの大きな声に送り出された。さあ、最後は八百屋だ。
八百屋は夫婦で店に立っているようだ。10歳くらいの娘が1人手伝っている。
商品は根菜類が中心だ。ジャガイモ、人参、玉ねぎ、ニンニク、ゆり根、ゴボウ。レンコンもあった。そういえば麦粥にも入っていたような気がする。湖の中で栽培されているのだろうか?それとも野生なのかな?
「すいません、ジャガイモと玉ねぎを40銅貨分ずつ、人参とニンニクとレンコンを10銅貨分ずつください。それと精麦した麦はありますか?あれば80銅貨分ください。」
「ずいぶん買うねぇ。1人で持って帰れるのかい?」
奥さんに尋ねられる。
「収納持ちなんですよ。」
と簡潔に答える。
「なるほどね。買い出しも立派な仕事だからね。頑張んなよ。あんた!聞こえてた?」
奥さんがザルに野菜を乗せながらご主人に声をかける。
「おう、すぐ用意する。」
待っているとご主人が藁で編んだ大きなカマスのような袋を3つ担いで持ってきた。
袋の口は荒縄で縛ってある。多分それぞれにジャガイモと玉ねぎと麦が詰められているのだろう。1袋20kgくらいはありそうだ。
ジャガイモと玉ねぎは1kgあたり200円、麦は400円ってとこか。人参は10本、ニンニクは3塊、レンコンは大きいのが1本だった。
「190銅貨だ。」
ご主人が手を出す。銀貨2枚を渡し、棒銅貨1枚をもらう。
「頑張れよ。」
ご主人はボソリとそう呟くと店の中へ戻って行った。
全て収納して店の中へ向けてぺこりと頭を下げておく。奥さんは笑顔で、ご主人は仏頂面でそれぞれ頷き返してくれた。
さあ、宿に戻ろう。
「いらっしゃい。おや、あんたさっきの。どうしたい?盥が水漏れでもしたかい?」
先ほど対応してくれた女性が驚いた顔をしている。
「いえ、盥は立派な物で、水滴一つ溢れませんでした。先ほどは盥と木椀しか見ていなかったので、改めてゆっくり見たくて伺いました。」
そう告げると笑顔になる。
「そうかい、そりゃぁ良かった。他にも良い物が沢山あるから、ゆっくり見てお行き。」
「はい、お邪魔します。」
声をかけて奥へ進む。布製品、木製品、鉄製品、携帯用の食料に岩塩、蜂蜜、油、様々な物が売っている。
俺は携帯食料と堅パンを30食分ずつ、蜂蜜を6瓶、油を2瓶、オイルランプを2つ、ブッシュハットのような形をした濃い緑色の帽子と茶色の帽子を1つずつ、大中小の鉄鍋と大小のフライパン、ボウルのような大きい木椀を4つ、大中小の木椀を4つずつ、鉄製のスプーンとフォークを4セット購入する事にした。
「こんなにいっぺんに、大丈夫かい?かなりの金額だよ?」
女性が驚いている。確かにそうだよね。携帯食料はなんと1食30銅貨もするのだ。食堂で夜に出される定食の平均的な値段の1.5倍だからね。堅パンも1個5銅貨。これだけで銀貨1枚を超えてしまう。
だが、ここに来る前に65銀貨も稼いできたのだ。宿代と食費が無料な分、その他の買い物で地元還元しないと申し訳ない。今回稼いだ分は全てこの村で使い切るつもりだった。
「棒銀貨10枚以内なら大丈夫です。」
そう言って実際に棒銀貨10枚をカウンターに並べて見せた。現物を見せるのが一番手っ取り早いからね。
「ちょいと待っておくれよ。さすがにこの数だと計算が大変だ。」
女性は藁半紙を出し、品物を確認しながら各品目ごとの合計金額を書き込んでいく。最後に全部足し込んで総合計金額を出す。
「全部で61銀貨と5銅貨だけど、半端はサービスだ。61銀貨で良いよ。」
堅パン1個分サービスか。ありがたい。俺はカウンターに並べた棒銀貨のうち4枚をしまい、新たに銀貨を1枚出した。
「うん、ちょうどだね。こんなに大きな売り上げが出たのはこの店始まって以来かもしれないよ。今日は店じまいして一杯やろうかね。」
女性は上機嫌だ。既に生活基盤が確立した者ばかりの村だ、そうそう大きな買い物は無いだろう。
村を出る時だって、荷物を減らすのが当たり前だからわざわざここで買い物をして村を出るはずも無い。
ある程度在庫整理にもなったのだろうし、こちらは他人に見せられない異世界道具の代用になる現地の道具を入手できた。お互いにwin-winだ。購入した品物を収納し、女性に頭を下げて表に出る。
さて、買い物の続きだ。順番に回るなら肉屋、魚屋、八百屋だ。
もちろん変に順番を変える必要なんて無いので、隣の肉屋へ。
ガタイの良い中年男性がお客の要望に合わせて肉を切り分けている。スライド式の天秤ばかりを使っている。度量衡が定められているという事だ。公平な取引には欠かせないからな。
生肉は部位にもよるが、見た限り100gで10銅貨くらいで販売されているようだ。野生動物を狩って肉にしているのだから、それくらいは当たり前か。なかなかのご馳走だな。
「すいません、干し肉をいただきたいのですが。」
と声をかけると、
「おう、ちょっと待ってくれ。おおい!干し肉が欲しいお客さんだ!頼む!」
と奥に声をかける。少しして大きなお腹をした女性がふうふう言いながら出てきた。
「ごめんなさいね。この通りなので長い時間立っているのは大変なのよ。何より、あまり長い時間店に出てると夫がうるさいしね」
と笑顔で言う。ガタイの良い旦那さんが耳を赤くしている。初心だなおい(笑)。
「大変でしょうが楽しみですね。男の子と女の子、どっちなんでしょうね?」
前世で妻のお腹に話しかけていた頃を懐かしく思い出す。お腹が邪魔で足を洗い辛いというので、一緒に風呂に入っていたなぁ。
「健康に生まれれ来てくれればどっちでも良いわ。夫は女の子を望んでるけどね。可愛いい服を着せてジニアル領で一緒にお買い物をしたいんですって。」
コロコロと笑いながら奥さんが言う。それに被せて低い声で、
「よそ様に余計なことを言うな。」
ボソッと呟くように旦那さんが言う。まだ耳が赤いよ(笑)。
「大変なのに余計な話をしてすみません。大きめの干し肉を6塊ほど頂きたいです。出来れば色々な肉を食べてみたいのですが、干し肉にする獲物は決まっているのですか?」
奥さんに尋ねる。
「うちではウサギ、シカ、イノシシを使っているわ。脂の乗った部分は生肉として売って、脂の少ない赤身を干し肉にしているの。今はちょうど3種類揃っているわよ。」
「ではそれぞれ2塊ずつ、なるべく大きい物をお願いします。」
「良いわよ。ウサギは100g50銅貨、シカは60銅貨、イノシシは80銅貨よ。それぞれ計ってみるからちょっと待ってね。」
奥さんはそう言うと、木箱の中から干し肉を選び出し、奥にある小さな椅子に腰掛けて天秤ばかりで重さを測り出した。
「ウサギが2塊で450g、シカが600g、イノシシは900gね。えーっと、こうでこうでこうだから、銀貨13枚と銅貨5枚だけど、銀貨13枚で良いわよ。」
奥さんが笑顔で言う。と言うか、ずっと笑顔だ。幸せそうでなによりだ。
棒銀貨1枚と銀貨3枚を渡して収納する。
「あら、収納持ちなのね。商人としてはもちろん、冒険者になっても引く手数多よ。でも、無茶しちゃダメよ。命が一番大事だからね。」
「生きてさえいれば何をしてでも食っていける。コツコツと積み重ねてりゃ良い事もあるさ。欲を出すなよ。」
旦那さんの声が続く。俺の容貌を見て心配してくれてるんだろう。見ず知らずの若造なのに、ありがたいことだ。でも、中身はアラフィフなのよね(笑)。
「ありがとうございます。また買い物に来れるよう頑張ります。」
そう言って2人に頭を下げ、店を出る。さあ、次は魚屋だ。隣へと向かう。
魚屋は30半ばの女性が店を取り仕切っているようだ。10代前半の娘と10歳になるかならないかくらいの娘が手伝っている。
店先には生魚がそのまま並んでいる。購入した各家庭で捌くのだろう。内臓や頭は肥料にするのか罠の餌にするのか、何かしら利用できるのだろう。
樽が幾つも並んでいるところを見ると塩漬けもあるんだな。梁から下がったロープには干物が吊るされている。麦からも糠が取れるので、糠床を教えたら喜ばれそうだな。
「すいません、軽く炙れば食べられるくらいの干物が欲しいのですがありますか?」
声をかけると威勢の良い返事が返ってくる。
「日保ちしなくて良いんだね?だったら干して2日目のやつがあるから出してあげるよ。ヤマメ、イワナ、サクラマスがあるけどどれが良い?」
「それぞれ10尾ずつお願いします。」
「うーん、構わないけど、日保ちしないんだよ?大丈夫かい?」
わざわざ確認してくれるなんて、良い人だ。
「大丈夫です。すぐに食べますので。」
そう言うと安心したように大きく頷く
。
「なるほど、パーティーの買い出し係かい。感心じゃないか。下積みは大事だからね。腐るんじゃないよ。」
そう声をかけてくれる。パーティーって言っても、1人と1匹なんだけどね(笑)。本当、良い人だな。
女将さんと話しているうちに、年下の女の子が大きなザルを4枚持って店の裏手に回っていった。干してある魚を取りに行ったのだろう。
女将さんとお客のやりとりを見ながら待っていると、重ねたザルを抱えて危なっかしい足取りで戻って来た。そのザルを抱えてちゃ足元が見えないもんね。
それでも転びもせず無事に秤のところまで辿り着いた。もう一度裏へと向かっていく。サクラマスはデカいもんね。一回じゃ無理だったか。
再びヨタヨタと戻って来た。途中で上の娘がザルを受け取り秤の前に運ぶ。
「ヤマメは100g15銅貨、イワナは25銅貨、サクラマスは35銅貨だ。間違うんじゃないよ!」
女将さんが大きな声で娘に言う。下の娘が秤に乗せ、上の娘が算板をいじっている。
「銀貨38枚と銅貨50枚よ。」
上の娘が下の娘に耳打ちしている。大きく頷いた下の娘がチョコチョコと近づいてくる。
「全部で銀貨38枚と銅貨50枚です!」
笑顔で両手を出している。
「はい、じゃあこれでお願いします。」
そう言って棒銀貨4枚を渡すと、大事そうに握りしめて上の娘の所に走っていく。
上の娘は棒銀貨なのを確認して、お釣りを用意している。また下の娘がチョコチョコと歩いてくる。
「銀貨1枚と棒銅貨5枚のお返しです!革袋はありますか?」
元気に訊いてきた。
「収納持ちだから、そのままで大丈夫です。持って来てもらえますか?」
と声をかける。
「はい!今お持ちします!」
と元気な返事。すると上の娘も一緒に重ねたザルを抱えてやって来た。
上のザルから順に収納していくと、下の娘が目を輝かせながら見ていた。
全て収納して3人に頭を下げる。
「お世話になりました。」
「またおいでよ!」
女将さんの大きな声に送り出された。さあ、最後は八百屋だ。
八百屋は夫婦で店に立っているようだ。10歳くらいの娘が1人手伝っている。
商品は根菜類が中心だ。ジャガイモ、人参、玉ねぎ、ニンニク、ゆり根、ゴボウ。レンコンもあった。そういえば麦粥にも入っていたような気がする。湖の中で栽培されているのだろうか?それとも野生なのかな?
「すいません、ジャガイモと玉ねぎを40銅貨分ずつ、人参とニンニクとレンコンを10銅貨分ずつください。それと精麦した麦はありますか?あれば80銅貨分ください。」
「ずいぶん買うねぇ。1人で持って帰れるのかい?」
奥さんに尋ねられる。
「収納持ちなんですよ。」
と簡潔に答える。
「なるほどね。買い出しも立派な仕事だからね。頑張んなよ。あんた!聞こえてた?」
奥さんがザルに野菜を乗せながらご主人に声をかける。
「おう、すぐ用意する。」
待っているとご主人が藁で編んだ大きなカマスのような袋を3つ担いで持ってきた。
袋の口は荒縄で縛ってある。多分それぞれにジャガイモと玉ねぎと麦が詰められているのだろう。1袋20kgくらいはありそうだ。
ジャガイモと玉ねぎは1kgあたり200円、麦は400円ってとこか。人参は10本、ニンニクは3塊、レンコンは大きいのが1本だった。
「190銅貨だ。」
ご主人が手を出す。銀貨2枚を渡し、棒銅貨1枚をもらう。
「頑張れよ。」
ご主人はボソリとそう呟くと店の中へ戻って行った。
全て収納して店の中へ向けてぺこりと頭を下げておく。奥さんは笑顔で、ご主人は仏頂面でそれぞれ頷き返してくれた。
さあ、宿に戻ろう。
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