最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

文字の大きさ
154 / 214

第143話

しおりを挟む
「じゃあ俺はどっか離れてるね」
「あぁ、あとは任せろ」
「頑張ります!」

 はじめの街に着いた俺達は、あと少しで第2陣が入ってくるため別行動をする。

「流石に人が多いな」

 道の端っこにはプレイヤー達が並んでおり、分かりやすく同じ装備を付けているクランや、クラン名を書いた旗を持っている人、料理やポーション、装備を手に持って自分達のクランがどういうクランなのか一目でわかるようにしているところもある。

「お、入ってきた」

「攻略クランに興味はないか!!」
「鍛冶師をするならうちに来ない?」
「魔法使いになるなら色々教えられるぞ、魔法使い6人で全てを破壊しないか?」
「マイペースにやりたいけどクランにも入りたいって人はこちらまで」
「けんと~、どこ~?」
「プレイヤーの商人組合を作りました。商人になる方はお声がけください」
「早く追いつくためにパーティー組まないか? 俺と同じで第2陣だろ?」

 クランの勧誘にパーティメンバー探し、元々のフレンドを探してる人まで色々いる。

「あ、カジノブレイカー!」
「オークションの人!」
「元最前線攻略組だ!」
「え? 俺?」
「動画見ました! 何であんなにカジノで勝てるんですか?」
「他のテイマーって強くないのに、なんでそんなに魔獣が強いんですか?」
「魔法のアイテムってどうですか? どんな効果を感じました?」
「オークションで買い占めたんだから、魔法のアイテムの説明動画くらい出せよ! それかもっと分かりやすく動画内でアイテム使え!」
「ユニークボスってどうやって見つけたんですか? 重要なところが動画で出てないじゃないですか! 俺もすぐ強くなりたいんで教えてください!!」
「NPCと仲良くなるイベントってどんなことをしたら出てくると思います?」
「ルリちゃんもエメラちゃんも可愛い! 私もテイマーになろっ!」
「あ、アリスちゃんの推しだ! アンチはこれから湧いてくるかもしれないが、俺は応援してるぞ!」
「え、ええと、ありがとうございます。ちょっと色々言われても困るんで失礼します!」

 思った以上に俺も影響力があることを知った。

「はぁ、はぁ、はぁ、走っても疲れないはずなのに、なんか疲れたな」

 これまでコネファンをやってる時はそんなに言われなかったから、おそらく第2陣のプレイヤーの多くが色々言ってきたのだろう。

「やっぱりコネファンをしてない人の方が、色んなコネファンの動画とか配信を見てるって事なんだろうな」

 少し騒ぎにはなったが、他の場所でも今の俺と同じようなことは起こっている。配信者のアリスさん達も今みたいな状況になっている可能性は高い。
 
「俺達の時より更にカオスだな」

 とりあえず久しぶりにここへ来たので、気持ちを落ち着けるためにもギムナさんのところへ挨拶に行く。

「こんにちは」
「おう、元気か?」
「ちょっと今ハプニングもあったんでドキドキしてますけど、元気です」
「そうか、何か食ってくか?」
「あ、じゃあ10人分、いや、20人分くらい小分けで作ってもらってもいいですか?」
「あぁ」

 俺が何も言わなくても、串焼きはおすすめでお願いしていることは伝わっているようだ。

「今日は焼かなくて良いか?」
「あ、素材持ち込みでってことですよね。じゃあ少しだけお願いします」

 いつもならギムナさんの屋台にこんなに長く居たら他の人が来ると思うが、今日はこの辺に人が全然居ない。

「プレイヤー様はあっちにどれくらい居たんだ?」
「もう俺達がこの世界に来た初日よりもうじゃうじゃ居ましたよ」
「あの時は串焼きを買うプレイヤー様なんて余程の物好きしか居なかったがな」

 そう言われてもウルがこの屋台へ吸い寄せられたのだから仕方ない。

「ほら、出来たぞ」
「ありがとうございます」
「頑張れよ」
「はい、行ってきます」

 こんなにギムナさんとゆっくり話したことはなかったが、あと少ししたらここもプレイヤー達でいっぱいになって、食欲をそそるこの香りに色んな人が負けて、串焼きを買うのだろう。

「ウル達も美味しかったか?」
「クゥ!」「アウ!」「……!」「コン!」

 もうギムナさんは何も言わなくてもウル達の分を最初に用意してくれたため、さっきの代金にウル達が食べた分のお金が入っているのかどうかも分からない。

「じゃあ先に探すか」
 
 クリスタルの近くから更に離れ、ガイル達から面接して欲しいと言われた時のための場所を探しておくことにする。

「いらっしゃいませ」
「こんにちは。あの、ここって個室とか無いですよね?」
「そうですね」
「ユーマ様」
「あ、ベラさん、こっちに来てたんですか?」

 俺はベラさんのお店に来たのだが、ここに来た時はほぼベラさんが出てきてくれるのは凄い。

「今日はプレイヤー様が来られる日ですので、私もこちらで待機しておりました」
「そうなんですね。あの、このお店って個室とかないですよね?」
「隣に小さい部屋はありますが、どうされました?」
「ちょっとうちに入ってくれるクランメンバーを探してて、面接をする場所が欲しかったんですけど」
「何もない部屋ですが使われますか?」
「良いんですか? 最終的にどこもなかったら商人ギルドで部屋を借りようとは思ってたんですけど」

 ベラさんがここに居てくれたこともそうだが、個室を借りることが出来て良かった。

「このお店のケーキを面接に来た人には食べてもらおうと思ってたので、自分で毎回選んで持ってきて貰う形にしても良いですか? 後でまとめてお金は俺が払いますので」
「かしこまりました」
「新しいプレイヤー様へのお店の宣伝にもなるわけですね」
「まぁ結果的にはそうなるのかもしれないですね。俺としては話してる間に何か食べるものがあればいいなと思っただけですけど」
「部屋はご自由にお使いください、後はよろしくお願いします」
「かしこまりました」
「ありがとうございます」

 ベラさんが店員さんに何か話しかけていたが、とにかくこれで面接場所は確保できた。

「次は遠くから見るか」

 さっきみたいに色んな人が同時に押しかけてくるような状況は嫌なので、目立たないように見る。

「クゥ」「アウ」「……!」「コン」
「まぁ目立たないのは無理かもな」

 皆姿勢を低くしたところで、魔獣4体は流石に目立つ。

「ユーマ?」
「はい?」
 
 名前を呼ばれて振り返ると、見慣れた背の高い黒髪の女性がいた。

「あ、テミスさん」
「久しぶりね。ユーマの動画は見せてもらってるわ。ユーマは最前線攻略組を抜けてどう? 楽しい?」
「今のところ楽しく遊べてますね。特に今日からは更に面白くなりそうですし」

 テミスさんは優美なる秩序の団長で、ミカさんやくるみさんが入っているクランのリーダーだ。クランの人達からは団長と呼ばれている。

「今日から最前線攻略組以外の攻略組も、ほとんど揃うらしいわね」
「そうみたいですね。テミスさん達はこれからすぐ追いかけるんですか?」
「最前線攻略組も待って2日か3日でしょうし、そうなるわね」
「じゃあ、あの、他の方々は? サブリーダーのププさんとかテミスさんを探してたりしてないですか?」
「今もチャットでどこに居るのか聞かれてるわね」
「えっと、じゃあそろそろ戻る方がいいんじゃないですか?」

 いつもサブリーダーのププさんはテミスさんに振り回されている。

「ユーマは私のパーティーに入らない?」
「あの、いつも言ってますけど、俺は男なので無理です」
「今回も駄目なのね」
「1回本気で勧誘してきた時は焦りましたけどね」
「今回も本気よ?」
「俺も本気で断ってます」
「なら仕方がないわね。コネファンではユーマが私の先輩だし、色々教えてくれる?」
「協力出来るところはしますよ。でも、最前線攻略組を他の攻略クランと組んで倒すとかなら、俺は協力出来ませんけどね」
「それはそうね」

 この人は俺が軽いノリでオッケーを出したら、そのまま本当に入れてしまいそうな気がするので慎重に答えないといけない。

「あ、あとミカさんとくるみさんとはダンジョンへ一緒に行きました」
「見たわ。動画が出る前から少しユーマっぽいプレイヤーの話はミカ達から聞いていたのだけど、あの子達ユーマが最前線攻略組とも知らずに一緒に行動していたのは面白かったわね」
「まぁ元ですけどね」
「まだユーマのことは知らないから、今度会ってもバラしちゃ駄目よ?」
「自分から言うことはたぶん無いですよ」

 優美なる秩序も十分凄いが、流石に元最前線攻略組のプレイヤーに向けて、攻略組の一員なんだと自慢気に話したことは恥ずかしいだろう。
 くるみさんに恥をかかせないように、出来るだけ俺が最前線攻略組だったことは隠したい。

「はぁ、そろそろ行くわ。ププが怒ってるの」
「あまりププさんを困らせないであげてくださいね。あと、たぶんこれから寝不足になると思いますし、体調に気をつけてください」
「ありがとう。ユーマも視聴者のプレイヤーには気を付けなさいね?」
「確かに……気を付けます」

 アリスさんとの一件をテミスさんも知っているのか、最後に俺へ一言注意を残して行ってしまった。

「お、早速加入希望者が居るのか」

 俺はガイルから来たチャットにベラさんのお店へ来るよう返信し、面接部屋へと向かうのだった。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

処理中です...