最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

文字の大きさ
77 / 214

第69話

しおりを挟む
「あ、どうもこんばんは」
「こんばんは。サポーターは居ないんですか?」
「南の街に来たのが遅かったので、サポーターを探せる時間じゃなかったんですよ」

 歩いている途中に明かりがこっちに向かってきてるのは見えていたので、誰かがいることに驚きはなかった。

「その照明はどうやって?」
「宝箱から出たんです。ただこれがあってもサポーターは必要だと思いますよ。戦闘になると結局ヒカリゴケを撒いてもらわないと戦いにくいですし」

 嘘は言っていない。ユニークボスを倒したあと出てきた宝箱から入手したものだが、おそらくダンジョンの宝箱とこの人達は勘違いするだろう。

「ちなみにここに来たのはなんでですか?」
「え、いや、たまたま通りかかっただけですよ」

 流石にそれは嘘だと思うし、サポーターが居るならルールも教えてもらっているはず。

「自分達が元々目指していた採掘ポイントや採取ポイントで偶然重なってしまうのは仕方がないですけど、緊急時以外わざわざ人がいる場所を目指したり追いかけたりするのはルール違反だと聞いてませんか? 俺達はここからあまり動いてないので、向かってきたのがそちらなのは明らかですし。もしかしてサポーターさんがルールのことを説明してなかったとか?」
「い、いえ、私はプレイヤー様に他のパーティーに接触するのはやめてくださいとお願いしました!」

 流石にこのまま黙っていてはこれからの自分の立場も危うくなると思ったのか、相手のパーティーに居るサポーターは説明したことを伝えてくる。

「じゃあこのルールを知っていながらも、他のパーティーが居るだろう明かりを目指して来たんですね」
「いや、ちょっと他のパーティーと話したくなっただけだって」
「それが相手のパーティーの迷惑になってもですか? 次の街に続く広い道の近くにはパーティーが結構いると思いますけど、そっちに声をかけずになんでわざわざこんな道から外れたパーティーを目指したんでしょう?」
「それはまぁ、そっちの方が良い情報を持ってると思って」

 ここまでの会話の中で自分から謝ってくるのであれば俺も今回のことはこれで終わりにしようと思ってたが、これだけ言っても誤魔化そうとしてくるなら容赦しない。

「それなら俺もGMに連絡しますね。確かコネファンは最初に配信者凸したプレイヤーがBANされて以降は誰もBANされていないと思いますし、今回もそんなことにはならないと思うので安心してください。酷くても一定時間ログイン出来なくなるくらいだと思います。なので本当に悪気がなかったのなら怯えることはないですよ。そこら辺の判断はしっかりしてくれると思うので」
「いや、それはやめてくれ! 俺達は別に迷惑はかけてないだろ?」
「なら呼んでも大丈夫ですね」

 相手がこちらに話しかけてくる内容を右から左に聞き流しながら、俺はGMに連絡した。

《ユーマ様ですね。少しそちらのプレイヤー様達と別空間でお話しますので、良ければそちらのサポーターを街まで届けていただけないでしょうか? 断っていただいてもこちらでテレポートさせるだけなので大丈夫です》

 急に目の前に声と文字が出てきてびっくりした。

「大丈夫ですよ。なんならサポーターをこのまま雇ったりしても良いですか?」

 もしこのまま雇えるなら俺としてもありがたい。

《そちらはお任せいたします》

 そう聞こえたあと、目の前に居たプレイヤー達は一瞬で消えた。

「てことでサポーターさんは街まで送るけど、出来れば雇いたいからお願いできます?」
「わ、分かりました!」

 ということでさっきのプレイヤー達に雇われていたサポーターを俺が雇う。

「あの、先程のプレイヤー様達はどうなってしまうのですか?」
「今頃は事情聴取を受けてると思うから、その結果によってどうなるか決まるんじゃないかな」

 他のパーティーがいる場所に故意に近づくことがなぜ駄目なのかと言うと、このエリアでは採掘ポイントや採取ポイントなどの、他の人には知られたくない場所が山程あるからだ。
 だからこそサポーターを雇ってついていけばそういった心配はなくなるし、たぶんだけどサポーターは他のパーティーの近くを通らないように案内もしてくれてるんだろう。キプロの時も採掘場以外の場所で他のパーティーと会うことは無かったし。
 
 かと言ってサポーター無しで探索するのが駄目だということでもなく、あくまでも故意に他のパーティーが居るところから良い場所の情報を盗もうとするのは良くないよという話だ。 
 今はまだ人が少ないから今回のようなことも問題になるが、あと数週間もすればここらへんは開拓され尽くして、情報屋なんかに聞けばどこに何があるか分かるようになるだろう。
 ゲーマーはこういった未開拓の場所を明らかにしていくのが好きなのだ。

「それにしてもあんな凄そうなカプセルベッドに入って皆ゲームしてるのに、まだ何をしてたかゲーム側にバレないとでも思ってるのかな? まぁあの人達は悪意があったってよりも、ちょっとズルしてみようくらいの感じだったかもだけど」

 最初にBANされた人もその場でアカウント停止されたって噂だし、AIがプレイヤーの履歴や過去の映像を見て一瞬で判断出来ることは明白だ。
 インターネット上で行われていないことはAIも判断出来ないだろうけど、このご時世でそんなことはほとんど無い。配信も、動画も、ゲームも、他の人とのやり取りも、ほぼ全てにインターネットが関わっているため、AIがその人のことを知ることなんて簡単にできるだろう。

「プレイヤー様達は私が教えられる採取ポイントを全て取り尽くしたあと、他のパーティーに違う場所を教えてもらおうと話してました。皆でそれは名案だと盛り上がってたので、私は止めるに止められず」
「まぁそれなら今回は正直マナー違反くらいのものだし問題ないと思うよ。でも別空間で話し合いをするってことは、もしかしたらあのプレイヤー達は過去に誰かを困らせるようなことをしてたのかもね。だからそこまでサポーターさんが気に病む必要はないと思うよ。俺はあんなことをする人達は一度GMを呼んで、過去も含めてしっかりと確認してもらおうと思っただけだから」
「ですが、プレイヤー様達を止められなかった私の責任でもあります」

 そう言ってサポーターさんは落ち込んでしまう。

「いや、俺達プレイヤーは本当に悪いことをしたらもうこの世界に来れなくなるし、それを判断してくれる存在もいるから大丈夫。今回のはルール違反でも、これくらいなら大丈夫だろっていう感覚だったんだろうね。相手の態度が良くなかっただけで、実際俺もそこまで悪いことだとは思わないし」
「ありがとうございます」

 そしてこの話は一度ここでやめて、これからの探索のことについてサポーターさんと話をする。

 先程の話であった通り、探索で役に立つスキルは採取だけど、もう自分の知ってる採取ポイントは無いということなので、今は歩きながらそこら辺の落ちている石やら草やらを取ってもらっている。

「あ、これは貴重なものですよ」
「へぇ、それが?」

 そう言って見せてくれたのは赤く輝いている石だった。

「なんか前にも拾ったことがあるような、ないような」

 どっち道そういう素材はガイルとメイに渡しちゃったから今は手元にないけど。
 
「これは一応錬金の素材にもなりますが、何か災いを呼ぶとも、幸福を呼ぶとも、いろいろな言い伝えがある石なので、売る場合は色んな場所に持っていってみてくださいね。お店によって全く違う金額になると思うので」

 サポーターさんにそう説明を受けたので覚えておくことにしよう。しっかりとインベントリに入れておくことも忘れない。

「『熱想石』って名前か。なら記憶にないし拾ったことがないかもしれないな」

 そしてそんな話をしながら着いたのは、ユニークボスを倒したあの場所。

「えっと、ユーマ様についてきましたけど、ここは一体?」
「前はボスが居たんだ。その後もう一回来たら何も現れなかったけどね」

 ここは前にマグマの番人を倒した場所で、サポーターさんの反応を見るとやっぱり知られていない場所なんだろう。

「今日はこの奥の洞窟を見て終わりかな。サポーターさんが居てくれて良かったよ」
「あ、あの、本当に大丈夫でしょうか」
「1回行って帰ってきてるからね。その時よりも俺達は強くなってるし、大丈夫だと思うよ」

 正直サポーターさんがめちゃくちゃビビってるので本人が洞窟に行きたくないと言えば帰るが、そう言われる前に奥へと進む。

「じゃあちゃんとついてきてね。離れたら危ないから」
「は、はい!」

 そうして俺達はエメラのタマゴを見つけたあの洞窟の奥に向かうのだった。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

処理中です...