最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第57話

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「そ、そろそろ行きますね」
「あぁ、少し話しすぎたかもしれないね。ハセクの件はありがとう」
「いえいえ、では失礼します」

 フカさんのエマちゃん話からやっと逃げることができた。

「もうキプロはルリの装備作ってくれたかな」

 家の近くに来てもカンカンという音はなっていないので、もう出来ているのかもしれない。

「キプロ、今帰ったよ」
「あ、ユーマさん! ちょうどさっきできました。これです!」

 そう言って見せてくれたものがこれだ。

名前:銀の手斧(魔獣)
効果:攻撃力+30、筋力+5、器用+3
説明
製作者キプロ:銀で作られた手斧。筋力値と器用値を上昇。

名前:銀の小盾
効果:防御力+30、頑丈+5、筋力+3、器用+1
説明
製作者キプロ:銀で作られた小盾。頑丈値と筋力値、器用値を上昇。

「凄いな。キプロはこんなに良い性能の装備を作れるのか」
「いえ、それは魔法の金槌のおかげです! いつもより少しステータス値の伸びが良いですし、僕の今の実力が全て出せたような感覚がありました」

 やっぱり魔法シリーズは偉大だったか。

「だがそれもキプロの実力あってこそだ。ありがとう」
「いえ、それでその、もう少しここで装備を作っても良いですか?」
「それなら全然大丈夫。しばらく夜は来ないし音に文句を言う人も居ないと思う。もし言われたらキリのいい所で切り上げてくれるとありがたいけど」
「ありがとうございます! その装備は差し上げるので、また鍛冶部屋使わせてもらいますね! では!」

 そう言うとダッシュで鍛冶部屋の方へと消えていった。

「行っちゃった。まぁまた今度お礼に何かあげるか」
「アウ!」「クゥ!」「……!」

 早速ルリは貰った装備を身に着け、ポーズを取ってはウルとエメラに褒められている。

「似合ってるぞ。なんならその武器は今大半のプレイヤーが使ってるものよりも強いんじゃないか?」

 ルリ用に小さく作られた武器は、それでもあれだけの攻撃力を持っていると考えると、キプロの腕はやはり良いのだろう。

「まぁ流石にそんな武器貰ったら戦いたくなるよな」
「アウアウ!」

 かといってまた北の街から次の街目指すのも、同じことの繰り返しになるしなぁ。

「今回はレベル上げじゃなくて本気でダンジョン攻略をしに行ってみるか」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 断じて今回はレベル上げではない、と思いながらも、少しだけレベルが上がれば次の街にも行きやすくなるな、とも考えている。

 少し前に、次の街に行くために過度なレベル上げはしないと心に決めたのに、レベルが上がりそうな行動は取る。これを誰かに指摘されたら俺は顔を真っ赤にしてしまうだろう。
 自分でも思うが、変なプライドを持っている人は扱いが難しいのだ。もちろん表情には出さないようにするけどね。

「大丈夫、あくまでもレベル上げが目的じゃないから。ルリの新しい装備の確認とダンジョンの攻略だから」
「クゥ?」「アウ」「(コクコク)」

 エメラは分かってますよと言うように頷いてくれるが、それをされるとむしろ恥ずかしくなる。

 それはそうと、そろそろ他にも攻略できた人はいるのだろうか?

「もしかしたら最前線攻略組以外にも踏破したパーティーがいるかもしれないから、俺達も遅れないように頑張るぞ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 こうして俺達は家から南の街のダンジョンまで移動した。



「あ、ユーマさんこんにちは」
「どうも、ミカさんもダンジョンですか?」
「はい、くるみもそろそろログアウトから戻ってくると思います」

 ダンジョンに向かっていると、この前ダンジョンに誘ってくれたミカさんに会った。

「あれ、ユーマじゃん。なになにミカが呼んだの?」
「いや、ちょうどここで会って」
「じゃあ今回は一緒に行こ! あたしらが連れてってあげるし、魔石もあげる」

 まぁ、前に一度断ってるし、今回はルリの装備の感触を確かめるのが1番だからいいか。

「じゃあ、お願いします。あと、魔石はちゃんと分けますから」
「敬語もなしでいいよ。あたしは苦手だし」
「じゃあよろしく。くるみさんはたぶん元々そうだけど、ミカさんも慣れてる話し方でいいよ」
「わ、私は今はこのままで、お願いします」

 と言うことでダンジョンに入るためにパーティーを組むのだが

「ええ! 24レベ!? 高くない?」
「まぁそれなりに高いほうかも。でも、くるみさんとミカさんも25レベルでしょ」
「私達はもう長い間2人でダンジョンに入ってますから」

 2人で攻略していたのは凄いな。多分コネファンは人数が増えると経験値が分散されるタイプだから、2人ならモンスター1体から貰える経験値は多いだろうけど、倒せるモンスターも限られてくるし、倒す時間もかかる、リスクも増えるし結局6人で狩りをする方がいいはずだ。
 それなのにこれだけ高レベルなのは、本人が言う通り本当に実力もあるのだろう。

「確かにあたし達の誘いを断っただけのことはあるね」
「くるみ!」
「あはは、あの時はごめんね。ちょっとこっちも焦ってて。今回は最後まで行こうと思ってるからよろしく頼むよ」
「それはあたし達に任せなさい! なんてったってあたし達は攻略クラン『優美なる秩序』の一員なんだから」

 なんか聞いたことある名前が出てきたな。

「確か構成員が女性だけだったっけか」
「そう! ねぇミカ聞いた? やっぱりあたし達有名人だ!」
「いや、クランが有名なだけで私達はまだまだだよ」
「でもそれならなんで2人なんだ?」

 そんなクランに入っていたらその人達と一緒に行けばいいのに。

「もうみんな運が悪くて、当選したのがあたしとミカだけだったの」
「でも、皆さんも次は来れるはずですから。それまでに私達も出来るだけ頑張ろうって言って、今はダンジョンを攻略してました」
「結局最前線攻略組に先越されたけどね」
「まぁあそこは全員抽選に当たったからな」
「確か新人さんがメインのパーティーに入ったとかで、この前見た時もとても気合が入っているように見えました」

 そっか、俺の後を継いだゆうたも頑張ってるか。俺が辞めると決めてから結構教えたけど、うまくやってるなら良かった。

「まぁ俺達はまず最前線攻略組の次にクリアできるように頑張るしかないな」
「そうだね、良いこと言うじゃん!」
「くるみがすいません」
「なんでミカが謝るの?」

 そんな話をしながら俺達はダンジョンに足を踏み入れた。



「最初はもうスルーでいいよね」
「そうだな。無視して行くくらいでいいかも」

「ちなみにユーマさんはどの階層まで行きましたか?」
「16階を少し見て帰ったから、実質15階のボスまでかな」
「え、それってあたしらとほぼ変わらなくない? あたしら17階なんだけど」
「2人で17階まで行けるのはすごいよ。俺は4人パーティーと変わらないからね」
「てことはユーマも誰かと組んで行ったわけじゃないんだ」

 話している間にも俺たちはどんどん先に進む。

「正直ダンジョンばっかりで飽きてきたんだよね」
「でもくるみがやめないって言うから」
「だって悔しいじゃん! ミカは他の誰かにクリアされて悔しくないの?」
「ちょっとはそう思うけど、2人なら仕方がないよ」
「ユーマならどうする? 途中でやめる?」
「まぁ俺は実際に全然途中でやめて他のことしてたからなぁ」

 そう答えながらも、もう少し前なら俺も必死にクリアを目指してただろうなと思う。

「そっか、確かに前にもダンジョンに来てたもんね。え、ていうかあの時に15階のボス倒したの?」
「多分その時だったかな。あのボス結構強かったよね」
「ユーマさんはテイマーですよね? その、強いですか?」
「自分で戦う時に使えるスキルはテイマーにないけど、その分魔獣が居るし、1人でやってくなら結構テイマーは良いと思うよ。あ、もう5階か、このボスは倒してもいい?」

 多分この中の誰が戦っても倒せると思うけど、早く倒すならエメラに魔法攻撃させ続けるのが1番だし、ルリに武器と盾を使ってほしい。

「じゃあお願い」
「お願いします」
「ありがとう、すぐに終わらせるよ」
「クゥ!」「アウ!」「……!」

 いつも通りルリが前に行くが、今回は武器も持っているため、普通の攻撃でもダメージが相当入る。

「これならもう終わるな」

 前で敵の攻撃をルリが受けているため、ずっとエメラは魔法攻撃を撃てるし、ウルも近接攻撃と氷魔法を絶え間なく当てている。
 そして俺はエメラに魔獣スキル強化、ルリに魔獣ステータス強化のスキルを使い、ウルとエメラにボスが攻撃しないように注意しながら、ルリの攻撃タイミングに合わせて俺も一緒に攻撃する。

「よし、今回はルリの火力も上がったからもっと早く終わったな」
「クゥ!」「アウ!」「……!(コクコク)」

 こうしてレベル差はありながらも、俺達は短時間で危なげなく5階層のボスを倒すのだった。


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