最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第56話

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「お、お邪魔しました!(やっばい、あれはやばいぞ、流石に俺には無理だ)」

 配達先の家にお邪魔したところ、配達のお礼として出てきたものが昆虫食だった。
 昆虫食に慣れていない俺も悪いのかもしれないが、せめて食べることができるかの確認は取って欲しかったな。

 恐るべしコネクトファンタジー

「ウル達は美味しそうに食べてたな」
「クゥ」「アウ」「(コク)」

 偉いよ。出してもらったものを食べられないなんて、俺は恥ずかしい。別にアレルギーなんかで食べれないものでもないのに。

「はぁ、まぁいいか。依頼の報告に行こ」

 俺だけ気分が下がっているが、冒険者ギルドで依頼達成の報告をして、みんなと家に帰る。

「とんでもない目にあったな」

 せめて、せめて現実でも見るようなサイズの昆虫食が良かったな。
 全部ありえない大きさだったし、そこまで大きくなるなら昆虫っぽさ出さないでくれよとも思ってしまった。

「おお、おかえり。どうだった?」
「あ、モニカさん。ひどい目に遭いました」

 そこからは少し愚痴のようになってしまったが、先程の状況を説明する。

「まぁ、食べたくないとはっきり言って良かったと思うぞ。あれは人を選ぶ食べ物だと分かっているだろうしな」
「でも、お礼で出されたものを拒否するのも申し訳なくて」
「ユーマは考えすぎだ。少なくとも私ならはっきり伝えてくれる方が助かるな」

 そこからはモニカさんと深いのか浅いのか分からない話や、カジノの話、どうでもいい話まで色んなことを話した。

「お、誰か来たな」
「俺が出ますね」

「こ、こんにちは」
「あぁエマちゃん、どうしたの?」
「あの、モニカさんは居ますか?」
「居るけど、入る?」
「お、お邪魔します!」

 ということで意外なお客様を連れてリビングに向かう。

「おお、エマか。どうしたんだ?」
「あの、わたし、モニカさんに鍛えてもらいたいです!」

 そう言うとエマちゃんはモニカさんに頭を下げた。

「それはいいが、身体は大丈夫なのか?」
「お父さんが、ユーマさんの家に居るほうが身体にも良いだろうからって」
「そうか、じゃあ最初はそこまで激しくないものにするか。そうだな、ユーマの家の裏を散歩でもしよう。ちょうどいいしユーマ、案内を頼めるか」
「まぁそれくらいなら良いですよ」

 ということで、皆で家の裏に行く。

「まずはここが畑。結構育ってるでしょ?」
「色々なものが植えてありますね」
「真ん中の方にある1列は不思議な種を植えたから、何が咲くのか、何の実ができるのか、全く予想がつかないんだ」
「面白いですね!」
「私は食べ物ができると嬉しいぞ」

「で、ここが苗を植えた場所。果物ができる木が多いけど、ここも不思議な苗を植えたから20本は何になるかわからないね」
「木に実が成るのが楽しみですね!」

「そしてここが厩舎。今は中に何もいないけど、外のマウンテンモウとライドホースが寝る場所だね」
「さっきいたライドホースの赤ちゃん可愛かったです」
「すぐに成長するだろうから、見たいなら今のうちに思う存分見ておくといいぞ」

「で、もう1つ誰もいない小さな厩舎があって、奥に見える池にはたまにカモが来るくらいかな」

 エマちゃんに説明しながらいろんな場所を回ったが、しんどそうな表情も見えないし、本当に体調は大丈夫なのだろう。

「じゃあ俺の役目はこれくらいかな」
「ユーマありがとう。エマはこれだけ歩いても大丈夫なら、明日から少しずつ訓練は始めよう」
「はい! よろしくお願いします!」

 そんなやり取りをした後、エマちゃんはライドホースの子どもが気になるらしく、モニカさんと一緒にまたライドホースの場所まで歩いて行くのだった。

 

「じゃあ俺達はどうしようか。ルリの装備を買いに行きたいけど、魔獣用の武器なんて売ってるところなかったよな」

 このパーティーで今すぐ強化できる部分はルリの装備くらいなので、できれば早く手に入れたい。

「しまったな。カヌスさんに頼むことができれば作ってもらえたかもしれないのに、もうオーダーメイドしちゃった」

 はじめの街のアンさんに作ってもらいに行くか? なんて考えていると、また家に誰か来た。

「今日は来る人が多いな」

 もしかしたらガイルやメイちゃんかとも思ったが、チャットも来てない。

「はいはい、どちら様ですか?」
「ユーマさん! 来ちゃいました!」

 扉を開けてそこにいたのは、とても興奮しているキプロだった。

「ユーマさんの家が大きいです! 家のさらに奥もユーマさんの敷地なんですよね! 実際に見てみると本当に大きいなぁ」
「まぁゆっくりしてってくれ。今一緒に住んでる人と、隣の家の娘さんが来てるから、会ったら挨拶しておいて」
「分かりました! それでその、早速で申し訳ないんですけど、魔法の金槌の方を使い「それだ!」ひっ、すいませんすいません、いきなりでしたよね」

 キプロはなぜか突然謝りだしたが、このタイミングでキプロが来たのは本当に良かった。

「キプロ、頼みがある。うちのルリの装備を作って欲しいんだ」
「アウ!」
「えっと、魔獣用のアクセサリーは専門の人に作ってもらうほうがいいと思いますけど。僕はそこまでアクセサリー作りは得意じゃないですよ?」
「いや、装備と言っても武器と盾をお願いしたい。身体が小さいからそれに合わせて欲しいんだが、力はあるから重さはあまり気にしなくていい」

 キプロは真剣な表情になって、何を作るか考えてくれている。

「このまま鍛冶部屋まで案内するよ」

 キプロに立ち入り許可を出しておき、1度も使ったことがない魔法の金槌を渡す。

「これが、ユーマさんの言ってた魔法の金槌ですね。まさかこんな凄いものを使える日が来るなんて」
「まぁキプロならいつでも来て使っていいぞ」
「ありがとうございます。僕は使い慣れた物があるので、この金鎚を使うことでより良い装備が作れると思った時は来ますね」
「じゃあ素材は出しとくから、たぶんあんまり使えるのはないと思うけど、使えそうなのがあったら使って。欲しいのは持ってっていいから」

 そう言ってさっきまで狩りまくっていたモンスターの素材を出す。

「そ、そんなに出されても作るのは普通のものより小さいですから!」
「じゃあ少し減らすから。言った通り余ったのは持ってって、要らなかったら置いといて」

 流石にNPCのキプロはインベントリを持っていないから、ここで素材をいっぱい出されても困るだけだろう。

「では、作ってみますけど、どんな武器がいいとかあります?」
「ルリの戦いは一緒に探索した時に見てるだろうし、任せるよ。本人も細かい要望は無さそうだし」
「アウ!」
「分かりました、精一杯頑張ります!」

 そしてこの後1時間ほど俺の家からカンカンと聞き慣れない鍛冶屋の音がするのだった。



「またすぐ帰るとして、何かすることあるか?」

 時間は長くても1時間半くらいで家には帰ろうと思っているので、やれることが少ない。

「あ、ユーマくん、エマは来たかい?」
「あ、フカさんどうも。来ましたよ。今はモニカさんとライドホースを見に行ってます」
「そうか、良かった。それでユーマくんに少し話したいことがあるんだけど、時間はあるかい?」
「えぇ良いですよ」

 ということでフカさんの家にお邪魔する。

「広いなぁ」
「前にも来たことはあるじゃないか」
「それでも広いのは変わらないですよ」

 そして今回はフカさんの部屋だと思われる場所に案内された。

「早速ユーマくんに話しておきたいことなんだけどね、ライドホースの出産のためにセバスと一緒に君の家に来た者が居ただろう?」
「確か白髪の人ですよね。あの時はセバスさんがモンスターに詳しい人を連れて行くって言って、あの人が来てくれました」
「そう。その彼なんだけど、声を出すことができなくてね。だから一度もユーマくん達に挨拶は出来なかったはずなんだけど」

 確かに思い返してみてもあの人が話していたのは見たことがないな。セバスさんと会話しているように見えた時も、あの人は頷いたり紙に何か書いていただけだった気がする。

「その彼なんだけど、ライドホースの世話がなくなってからあまり元気がなさそうでね。本人はモンスターが大好きだから、出来ればユーマくんの家に入る許可をくれないかなと思って」
「そんなことなら全然大丈夫ですよ。あの人にはうちのライドホースがお世話になりましたし、来たいならこれからもいつでも来てもらって」
「あの、ユーマくん、頼んでいる立場で言うのもなんだが、もう少し人を疑うほうがいいと思うよ」

 確かにこの世界の人にも、マルスさんをはめようとしたゲウスさんみたいな人が居ることを忘れていた。
 何の罪も犯さない普通の人か、聖人みたいな人、そして完全な悪人しかゲームのNPCは居ない事がほとんどなので、その感覚がまだ抜けていなかった。

「まぁフカさんの紹介ですし、家には比較的モニカさんもいますからね。あの白髪の人もこれから居てくれるようになると考えたら、もし変な人を連れ込んだとしてもどうにかしてくれそうです」
「いや、それは少し私が言いたいこととズレているのだけど。まぁ、ユーマくんはそういう人だったね。では早速彼を連れてこよう」

 少ししてフカさんは白髪の人を連れて来た。

「改めて紹介しよう。こちらがユーマくんで、彼がハセクだ」
「よろしくお願いします」
「(ペコリ)」
「大体ハセクの事情は説明したし、ユーマくんの所でこれからハセクにはモンスターの面倒をたまに見てもらいたい。だからユーマくんにはハセクの立ち入り許可をお願いしたんだ」
「!?」

 なるほど、俺の家のモンスターの世話をハセクさんにお願いするという設定なんだな。

「知っての通り俺が家にいる時間は少ないので、モンスター達のお世話をお願いできると助かります」
「!(ぶんぶんぶん……)」

 縦に頭を振る力が強すぎて風切り音が聞こえる。

「じゃ、そういうことだからこれからよろしくね。まだユーマくんとは話すことがあるから、ハセクはここで。なんなら今から様子を見に行ってもいいんじゃないかい?」

 ハセクさんはこちらに綺麗なお辞儀をした後、急いで部屋を出ていった。

「というわけで、これから宜しくお願いするよ」
「俺こそいつも家に誰かいるのは安心できますし、むしろありがとうございました」

 こうしてこの後フカさんの部屋では、エマちゃんの体調は良さそうだったか、エマちゃんやターニャさんと一緒に暮らせることの喜び、家でのエマちゃんの話等、エマちゃんの話を延々とされるのだった。


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