最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第44話

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「ユーマさんすいません、お役に立てなくて」
「いや、キプロのせいじゃない。たまたま運が悪かっただけだ。それにここに戻ってきたのは良かったかもしれない。このタマゴを孵化させるにはここが良かったんだよきっと」

 先程まで俺達はキプロの案内で南の街近くの採掘場に居て、洞窟の奥で手に入れたタマゴの様子を見ようとしていた。
 すると奥から採掘しにきたパーティーがいたので、結局洞窟の奥まで逆戻りしてきたわけだ。

「ユーマさんはテイマーなんですよね? すぐに孵化させますか?」
「どうしようかな。自然に孵化する時間まで待つ意味もないだろうし。まぁ結局この場所に戻ってきたってことは、ここで孵化させろって言われている気がするし、今から孵化させるか」
「クゥ!」「アウ!」

 ウルとルリも新たな仲間の誕生が楽しみなのだろう。タマゴの前でソワソワしている。

「よしじゃあ行くぞ!」

 目の前のタマゴに孵化のスキルを使う。

「ど、ドライアドじゃないですか!!」
「……!?」
「おいキプロ、大きな声を出すんじゃない。ええっと、俺が孵化のスキルで呼び出したんだが、名前を付けていいか?」
「……(コクッ)」

 キプロが言った通り、植物っぽい身体で森の妖精って感じがする。
 全体的に緑色だしなぁ。そのまま緑って名前は駄目か?

「うーん、最近この辺りで宝石も取ったし、身体が緑、宝石、緑、緑の宝石はエメラルド。よし、エメラで」
「(コクッ)」

《ユーマのレベルが上がりました》 

「もしかしてユーマさんって名前付けるのにが「よしじゃあエメラのステータスを見せてもらうな」」

 自分で言うのはいいが、人に言われると嫌な気持ちになることはあると思っている。
 俺はその嫌な気持ちにならないために、キプロの話は途中で切らせてもらった。

名前:エメラ
レベル:18
種族:樹の精霊
パーティー:ユーマ、ウル、ルリ、エメラ
スキル:支配、成長、インベントリ、『樹の精霊』『樹魔法』
装備品:なし

樹の精霊:大地の芽吹き、植物強化、樹の癒し
樹魔法:初級

 これは今俺達に足りていない後衛の役割を補ってくれるのでは?

 そしてスキル欄の支配ってなんだ? 他のスキルは大体想像がつくがこれだけ分からない。
 ウルの勤勉とか、ルリの忍耐と同じようなものだろうから少し楽しみだな。

「ステータスとしては完全に後衛だな。俺達は皆近接寄りだからありがたい。これからよろしくな」
「クゥ!」「アウ!」
「……!(コクッ)」

 まさか新しい仲間をこの洞窟で見つけることになるとは全く思わなかったが、エメラが仲間になってくれてよかった。

「ユーマさん。これからどうしますか?」
「そうだなぁ」

 洞窟も攻略したし、仲間も手に入ったし、これだけでも満足だが、まだ時間はある。

「じゃああれを見つけに行くか」
「あれ? なんのことでしょう」
「キプロも見てるはずだけどな」

 これはキプロが居ないと出来ないことでもあるし、ちょうどいいだろう。

「これを見てくれ」

 そう言って俺は宝箱から出てきた宝の地図を渡す。

「あっ、確かにありましたね! ちょっと待ってください。絶対にどこか探し当てますから!」
「ゆっくりでいいよ。エメラと交流する時間も増えるし」

 地図のことはキプロに任せておけば大丈夫だろう。
 
 俺は自前の照明があるし、キプロは自分で戦えないし、隠された道は俺が見つけるしで、多分キプロは今日活躍した気がしないのだろう。必死になって探してくれている。

「(ここかなぁ。いや、ここの形が違うかも。山が横にあって、川が……)」
「ある程度ここらへんかもってわかったら声をかけてくれ。間違っててもそれはそれで良いから」
「了解です!」

 しばらく俺はエメラとコミュニケーションを、キプロは宝の地図とにらめっこを、ウルとルリはエメラと俺のやり取りを見ているのだった。



「とりあえずいくつか候補はあります。近くの場所から行きましょう!」
「ありがとう。案内は任せるよ」

 エメラはまだ装備がないため、ウルと一緒に居てもらう。キプロには案内をしてもらわないといけないので、今は俺の隣だ。

「確かこのあたりだと思います」
「確かに山も川もあるが、こんなに地図の川みたいに細いか?」

 少し違うような気がするし、キプロもそう思っているようだ。

「そうですね。では次の場所に行きますか」
「そうしよう」

 道中ダークホーンラビットが襲ってきたが、もうキプロの松明とヒカリゴケ、そして俺の照明があれば日中と同じように倒すことが出来るようになった。

「着きました!」
「確かにここは川が狭いけど、山と離れすぎてる気がするな」
「そうですね。僕が探せたのはあと1つです。どうかありますように!」

 川に落ちてる石も少し拾いつつ、キプロに案内されるまま道を歩く。

「ここですね。どうですか?」
「確かにここは地図と同じ場所かもしれないな」

 山や川の位置も、大きさも、形も、全部その通りになっている。

「で、ここからまたお宝探しか。正直夜にやることじゃないな」
「たしかにそれはそうですね」

 魔法のツルハシや魔法の手袋を付けてみるが、普通に生えている草に反応したりするだけで、お宝には反応していない気がするためインベントリにしまっておく。

「印はここにあるよな」
「そうですね。掘りますか?」

 川から少し離れた何も無い地面を掘っていくしかないのか。

「魔法の万能農具を持って来ればよかった」

 宝探しといえば穴掘りの可能性も考慮しとくんだった。これは予想できたな。

「すまん、そのスコップを貸して欲しい。俺がやるよ」
「ではお願いします」

 キプロからスコップを借り、この辺だと思う場所をひたすら掘る。

「ん? なんか当たったな」
「ありましたか!」

 少し硬いものにスコップの先端が当たった。地面の中にある大きな岩に当たったとかだったら分からないけど。

「これは、箱だな」
「そうですね。予想とは少し、いや、かなり小さい箱でしたね」

 溶岩の番人を倒した時の宝箱とは比べられないほど小さい。筆箱くらいの大きさだ。

「いや、でもよく見つけた。これは自分を褒めたい」
「たしかにあれが見つからなかったら、このあともずっと掘り進めていましたしね」

 箱についている土を払って、中を見るため蓋を慎重に開ける。

「何が入ってました?」
「手紙だな。それ以外は栞か? あとは空っぽだ」

 手紙の内容は俺が読んでいいのだろうか。
 見るからにプレイヤーに使ってもらうための装備だったり素材だったら貰うんだけど、手紙ってどうなんだ?

「これって誰に向けた手紙なんだろう?」
「分かりませんけど、埋めていたってことは何か重要な事が書いてあるかもしれませんよ!」

 どうしようか。確かにこんなところに10年後の自分へ、なんて手紙は埋めないよな。

「まぁ手紙だったけど宝は手に入れたし、一旦これで終わりにしようか。俺の方でこの手紙に関係する人は探しておくよ」
「そうですか、分かりました。じゃあこれからどうしますか?」
「エメラの動きも見たいし、少し戻ってモンスターと戦おうかな」
「分かりました。戦いやすい広い道を通っていきますね!」
「ありがとう、穴だけ埋めて行こうか」

 それ以上キプロも手紙のことには触れず、サポーターとしての役割を全うしてくれた。



「お疲れ様、エメラの動きも良かったぞ」
「……!」「クゥ!」「アウ!」

 エメラの戦い方としては、樹の精霊スキルの大地の芽吹きを発動してから、植物強化だったり樹魔法で攻撃する感じだった。

「でも少し火力不足は感じたな」
「(コクッ)」

 やっぱり樹魔法のスキルが初級ってのが原因か。

「エメラ、この本読めるか?」
「……?」

 不思議そうにしながらも、エメラは中級魔法習得本を開く。

「……!?」
「おお、なんか光ってたな。本は……消えたか」

 そして重要なのはエメラの樹魔法が中級になっているかだが、

「覚えられたな」
「……!(コクコクコクッ)」

 これで魔獣もあの本を使えることがわかったし、良かった良かった。

「今横で凄いことをしてた気がしますけど、お疲れ様でした!」
「あぁ、キプロもお疲れ様。いい経験になったよ」

 エメラの戦闘を皆で見ている時も、キプロは周りを警戒していたし、サポーターとして本当によくやってくれた。

「じゃあ依頼だけ見とくか」

 依頼掲示板を見てみると、鉱石系の納品依頼は駄目だったが、上薬草10本の納品は出来たのでそれだけしておく。

「じゃあ少ないけど今回はこれだけで」
「いえ! むしろ昨日がもらい過ぎでした。今日もいくつか鉱石をいただきましたし」

 まだ時間は5時だが、キリも良いので今日はここまでだな。

「まぁこれからは鍛冶の方頑張って。俺の家は北の街にあるから、また暇だったら遊びに来てよ」
「い、いいんですか!! 実は前話していた魔法の金鎚が気になってまして」
「確かに鍛冶師としては使ってみたいか。タイミングが合うかわからないけど、家に来た時は使っていいよ」
「ありがとうございます!」

 こうして2日間にわたるキプロとの夜間の冒険を終えるのだった。


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