最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル

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第35話

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「なるほど、あれは慣れてたり自信ある人達だったんだね」
「そうです。なので僕達みたいなのは端っこの方であの人達が雇われるのを待ってから、次に自分を売り込みに行くんですよ」

 あのあとキプロと一緒に鉄鉱石の納品依頼を受けて、なぜあんなにも真ん中と端っこの方できっぱりとサポーター達の立ち位置が離れていたのかの理由を聞いていた。

「じゃあサポーターを雇うなら真ん中に居る人の方がいいってこと?」
「それも難しいですね。自分に自信のあるサポーターが真ん中に行って、実際は他のサポーターの方が優れてたっていうのもありますし。サポーター同士は皆で価格設定の摺り合わせはしても、師弟関係以外であまり交流する機会がないので、他の人の実力は正直分からないんですよ」

 サポーターにもサポーターの世界があるんだな。

「ちなみにキプロはなんでサポーターになろうと思ったの?」
「僕は鍛冶師を目指してるんですけど、最初は自分で素材も取って、全部1人で出来るようになりたかったんです。でも、戦闘の才能はなかったので、せめてサポーターとしてどういう風に冒険者の皆さんが素材を取ってきてくれるのか確かめたいと思って、たまにサポーターをしてます」

 ええ子や、キプロくんええ子や

「じゃあ今回の依頼で超過した分の鉄鉱石は持ってってよ。使うでしょ?」
「え! いや、そういうつもりで言ったわけではないです! 僕は今鍛冶師ではなくてサポーターですから、サポーターの仕事をさせていただきます!」

 そう言って先端から明るい光を放つ少し手の加えられた松明を持ちながら、採掘ポイントまで俺達を先導してくれるのだが

「ひっ、お、お願いします!」
「了解。ちなみにあんまり大きな声を出すのは良くないかもな」
「ムグッ……」

 手で口を塞いでいるが、もう遅かったらしい。

「あちゃ、こりゃちょっと時間かかるかも。キプロはウルが居る後ろの方で待ってて。ウルはキプロを守りつつ、氷魔法で援護お願い。ルリは俺と一緒に前で戦うよ」
「クゥ!」「アウ!」

 モンスターの光った目がいくつも見えて不気味だが、逃げるわけにもいかないのでこの場で迎え撃つ。

「取り敢えず敵の大きさは暗くて見えないけど、目の数で多いことは分かるな」

 ゆっくりと敵がこちらに近づいてきて、ようやく松明の光で敵の姿が見えた。

「ダークホーンラビットか」

 暗闇の中から頭の角で攻撃してくるんだろうな。

「ルリはこのキプロの明かりが届く範囲で敵の攻撃を避けてくれ。多少攻撃を受けてもいいから、角の直撃だけはしないように」
「アウ!」
『キュッ』『キッ』……

 ルリが返事をした瞬間、モンスター達が一斉に飛びかかってきた。

「攻撃してすぐ暗闇に逃げるから、なかなか倒し辛いな」

 俺はなんとか1体ずつ飛びかかってきたやつを倒しているが、ルリは瞬間火力が足りないのと、タンクをしているせいで倒しきれていない。

「キプロ、その松明をウルに渡して近くまで持ってきてもらうか、自分で持ったまま近くまで来るかしてくれ。ちょっとルリがこのままじゃ大変だ」

 この程度の強さの相手に負けることはないが、姿が見えないと倒せないのも事実なので、松明を持ってきてほしい。
 正直キプロはこっちに来ても遠くにいてもどっちでもいいが、本人はモンスターの近くに行きたくないかもしれないしここは任せよう。

「わ、分かりました! 行きます!」
「クゥ!」

 キプロが来ると明るい場所も増え、ダークホーンラビットも攻撃してすぐに暗闇へ隠れることができなくなった。

「アウ!」「クゥ!」
『ギュ~』『ギュッ』
「2人ともいいぞ」

 モンスターが見えればあとはいつも通りに倒すだけなので、そこまで時間はかからなかった。

「お疲れ様、キプロも来てくれてありがとう」
「いえ、元はと言えば僕が大きい声を出したから集まってきてしまいましたし、すいませんでした!」
「いや、だからちょっと声が大きいかも」
「(す、すいませーん!!)」

 まぁこのあたりのモンスターは倒したししばらくは大丈夫だろう。

「それにしても戦いにくいな。他の人達はどうやって倒してるんだ?」

 自分で近くを照らす道具を持つことができれば良いんだが、プレイヤーに聞いた感じそういうのも持ってなさそうだったし。
 何よりそんな道具があれば、サポーターを連れて行かずにプレイヤーだけで行く人がもっと多いだろう。

「す、すいません。戦闘が始まったらヒカリゴケをばら撒いて一時的に明るくするの忘れてました!」
「なるほど、いや、大丈夫だよ。これで今疑問に思ってたことが解決したから」

 サポーターにはそういう事をしてもらうのか。たぶんこれ以外にももっと役に立つことがあるんだろうな。

「次からはそれを使ってくれるとありがたい。あと、モンスターの近くにいるのが平気なら、出来るだけ離れないようにしてもらってもいい? たぶん松明が1番明るいし、今まで通り誰かがキプロを守るから」
「大丈夫です! 今の戦闘で皆さんがお強いことは分かりましたから!」

 ということで、再びキプロの案内で採掘ポイントまで歩き出す。

「キプロってサポーターの技術は誰から教わったの?」
「親方です。親方は冒険者としても活動してたので、サポーターの動きは親方に連れられて採掘に行く時に少しずつ教えてもらって、その後は冒険者ギルドの方でちょっとずつ講習を受けました」

「じゃあキプロ以外の人はどうなの?」
「そうですね、先輩サポーターに弟子入りしたり、完全自己流だったり、冒険者ギルドで教えてもらったりだと思います。一応サポーターになるには冒険者ギルドで簡単な座学と実技の試験を受ける必要があるので、ギルド内でサポーターを名乗る人達は皆合格者です」

 なるほどな。サポーターになるのがどれくらい難しいのかは分からないけど、簡単な試験ってのと完全自己流の人もいるってことは、そこまで厳しいものではないのだろう。

「じゃあ今キプロがサポーターをやってるのは親方が鍛冶で忙しいからとか?」
「いえ、もう僕は鍛冶の腕は認めてもらえたので、独立するために準備中です。まぁプレイヤー様の依頼で親方が忙しいのはそうなんですけどね」

 あとは冒険もしたいですし、と小声で聞こえたが、案外そっちが本音かもしれない。

「ここが一応親方にも使っていいと許可を得ている採掘ポイントです。他にもあるんですけど、そこは他の人を連れて行かないように言われているので、もっと良い場所は探してみてください!」

 そこは洞窟のようになっており、掘られた形跡がいくつもある。

「採掘ポイントってのはどうやってわかるんだ?」
「前に掘った形跡があればそのあたりに鉱石があることが多いですね。今は周りが見えないかもしれませんが、ここは大きい鉱山なので意外と色んな場所を掘れば良いポイントにあたる可能性があります。スキルを持っているとなんとなく掘れる場所が分かるんですけどね」

 ということで、ものは試しに掘っていこうと思うのだが

「お、魔法のツルハシはそういう機能か。めちゃくちゃ良いな」

 おそらく鉱石が取れる場所に反応して、ツルハシが俺に教えてくれる。
 教えてくれると言っても、そのあたりが気になるな、程度だが。
 それが分かってからはどんどんインベントリに鉄鉱石や他の鉱物が入っていく。

「すごいですね! とても初めてとは思えませんし、そのツルハシも普通には見えないです」
「俺も魔法のツルハシを初めて使ったけど、これがあれば採掘スキル持ちとあまり変わらないんじゃないか?」

 2人で手分けして採掘している間、ウルとルリはモンスターの警戒をしてくれていた。



「そろそろ集まったか」
「そうですね。僕の分だけでも足りそうなくらいです」

「どうする? 依頼を受けに戻って、またここまで来るのでもいいけど、もっと奥の方に行くか?」
「え、いやぁ、それはユーマさんが決めてください」

 そう言いつつも、奥の方をチラチラ見ているので、探索はしたいのだろう。

「じゃあ他の採掘ポイントを見つけに行こうかな。これを持ってたら俺にもなんとなく分かるし。どんな依頼があるかわからないけど、適当に採掘して帰れば2つくらいは依頼達成できるでしょ」
「そ、そうですね。もしかしたら無駄になる鉱石もあるかもしれませんが、買い取ってもらえばいいですし、少しなら僕が買い取ります!」
「じゃあそういうことで他の場所に行こうか」
「クゥ」「アウ」

 モンスターに遭遇するまではツルハシを片手に持って歩く。
 周りが暗くて見えない分、視界の情報に左右されないため、ツルハシからの反応が伝わりやすい。

「お、ここは良さそうかも」
「そうですね。誰も掘ってないと思います」

 俺が好き勝手歩くせいか、他の人が来ないような場所に居るらしく、小さい反応がする採掘ポイントを掘っては移動するを繰り返すことで、いくつも採掘ポイントを見つけることが出来た。

「どの採掘ポイントも他の人に教えるほど大きくないので、ユーマさんが1人で採掘する時に行くのがいいと思います。他のサポーターと一緒に行く場合も注意が必要です。最初にその採掘ポイントを知っているか確認しておく必要があります。他の人に教えられる可能性があるので」

 サポーターには事前に他の人に教えないよう言っておくことが大切らしい。
 それでも隠れて自分が見つけた採掘ポイントということにして、他の冒険者に紹介する人もいるらしいが。
 
 たまたま同じタイミングで採掘ポイントに居合わせたり、冒険者同士の会話で採掘ポイントをそのサポーターが他の人に言っていると聞いたりしない限りは、なかなか気付くことが出来ないのだとか。

「なるほどね、気をつけるよ。まぁ取り敢えず結構掘ったし、採掘はこのくらいでいいかな」

 プレイヤーの俺視点では、次の採掘可能な時間まであと何時間という風に表示されていたので、本当に他の人に取られたくなければ、その時間に合わせて来れば良さそうだ。

「分かりました。では今まで見つけた採掘ポイントの場所を教えますね。ここが1つ目で、この川の近くを進んで……」

 緊張しがちで、急な対応が苦手なキプロだが、採掘の時や落ち着いている時、慣れている行動をとる時は安心して頼れるのだった。


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