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3-9.掃討作戦と大きな脅威(前編)
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部屋の中で再び話し合いが行われ、そこには王家と護衛、ミラの面々がいた。
横になっている護衛たちは、毒の耐性や体力のある者から起き上がり、話に加わっている。
彼らが新興の武家の家の者であるというのも大きいかも知れない。魔物との戦闘経験が豊富で、麻痺もすでに受けたことがあった。
仕切るのは王妃のマーガレットである。
「さて、現状は把握できたのですから、残りの襲撃者を撃破して、安全を確保することが必要よ」
それにフローラが聞き返した。
「お母様、聞き出した情報の中に居場所はありませんでした。もしかしてミラさんに?」
「そのとおりよ。ミラさんなら探すことが可能みたいだから、索敵を任せることにして、動けるもので残存勢力を排除しましょう。ミラさんはそれでいい?」
「はい、問題ありません」
フラーラは再びマーガレットに問いかける。
「ではどのような組分けで? それとも全員でまとめて一箇所ずつ潰すのですか?」
それにはレオが答えた。
「いや、護衛の手が空いたのなら、俺と彼女とそれ以外でわけて、3戦力がいいだろう」
ミラは少し驚いた。自分の方を向いていたレオが示す意味に。
それだと、ミラが1人で戦うということだ。
「あの……私がですか?」
「不満か?」
「いえ」
フローラはその勘違いにまみれた会話に、フォローした。
「レオお兄様、それだと王家が権力の傘を来て突撃命令を出しているみたいです。そうではなくて、ミラさんなら大丈夫だと言ってあげればいいんです」
「そうか、そういうことだ。君なら大丈夫そうだから、任せる」
「……わかりました」
(確かに魔人を撃破したことはあるけれど、あの防御っていまだに理由がよくわからないのよね……)
ミラは魔神に対して有効な防御をしたが、理由も理屈もわからない方法だった。
もし、変身した魔人に遭遇した時、あの防御を敗れる魔人だったら、ミラは負けてしまう。薬草も残りがない。
いかにも強そうな護衛の人たちも一緒に来てほしかったが、分散する敵を同時に叩かないといけない。
ミラは、その潜伏地を知るために、広範囲索敵を行うため、内面に意識を集中した。
すると、4箇所に怪しい人たちがいて、2~3人で固まっていた。
倒した黒フードたちの残りだろう。
この王城には一部隊が潜入しているらしく、あくまで先遣隊だ。おそらくバイレンス家の王都別邸にはそれ以上の戦力が大規模に用意されている。
場所を把握したら、戦闘に参加し動ける者をこの王城(の安全地帯だけ)からかき集めた。
***
合図を確認して、ミラも他の部隊と一緒に分散し、一斉に拠点へと攻撃を仕掛けた。
拠点といっても隠れるために偽装した場所というだけだ。
「誰だお前、ぐはっ……」
「なにが、ぐあっ!」
ミラは全力で走り抜け、抵抗を許さない形で全員の背中を斬り伏せた。
次に向かうのは、応援として護衛隊の一部をさらに2箇所に分散したところにだ。
敵人数が3人ずつで、一番の戦力と思われる。
そのどちらかに親玉もいるのだろう。
戦力的に不安という話でなぜかミラもそこに加わるように言われたため、急いで駆けつけた。
1つの目的地に到着すると、敵を倒し終えていた。
合流したまま、護衛騎士たちの数人と残りの場所へと向かうことになった。
「それにしても本当に一人で倒してこられたんですね?」
1人の男性がミラに話しかけてきた。
「え? ええ……不意をつけたのでなんとか」
「そうなんですか? 正直、この黒いフードをかぶった敵は結構強かったですよ?」
「そのようです。あの、その中に異形の魔人はいませんでしたか?」
「いなかったですけど……」
「そうですか」
とすると、もう1箇所はここよりも危険かもしれない。
ミラは覚悟して次の場所に向かった。
***
ミラたちが到着すると、敵の3人のうち、2人がすでに倒されていた。
しかし、護衛も数人が倒されている。
レオも加わっているが、残りの1人にかなり苦戦しているらしい。
ミラはその姿を見て少しホッとした。
魔人ではない。
しかし、変身していなくてもあの人数差で戦線を圧倒している。
以前、魔人に変身した男は、自分の戦力が弱いことを自覚していたのか、爆発物を使い、その後すぐに変身してきた。
つまり、あの男は素でかなりの強さでありながら、魔人に変身する可能性がある。
この部隊の親玉ということになる。
「気をつけて下さい。その人、まだ手加減しています! 全力ではない弱いままの動きに見えます」
ミラはそう叫んだ。
兄の様子と重ねて、手加減していると言っていたときの表情とほぼ同じだった。
苦痛に耐えるふりをして、機を狙っているのだろうと。
「わかった」
レオが叫び返す。
だが、男はミラを見て、怒りに打ち震えていた。
「手加減だと……。これがお前には手加減して弱く見えるのか……」
ミラはぼそぼそいっている黒フードの男の声を聞き取ろうとして失敗した。
「あの人、なにか言っているのでしょうか?」
とりあえず、剣と魔法での戦いということもあり、戦線に加わるタイミングを図ってミラたちはその周囲に待機した。
一瞬、魔法が尽きて、レオが連続戦闘で疲弊し、剣と足を止めたところで、ミラがその間に駆け出した。
突然のことに、護衛たちも止める隙はない。
「厄介なのが来たか……仕方ない」
黒フードの男はアイテムを飲み込んだ。
それを見たミラは、レオのところに進行方向を変える。彼の身体を引っ張るように後ろに下げた。
ミラがその正面に立ち、あの攻撃が来るようなら、防がなければいけない。
それができなければ全員死ぬのだ。
横になっている護衛たちは、毒の耐性や体力のある者から起き上がり、話に加わっている。
彼らが新興の武家の家の者であるというのも大きいかも知れない。魔物との戦闘経験が豊富で、麻痺もすでに受けたことがあった。
仕切るのは王妃のマーガレットである。
「さて、現状は把握できたのですから、残りの襲撃者を撃破して、安全を確保することが必要よ」
それにフローラが聞き返した。
「お母様、聞き出した情報の中に居場所はありませんでした。もしかしてミラさんに?」
「そのとおりよ。ミラさんなら探すことが可能みたいだから、索敵を任せることにして、動けるもので残存勢力を排除しましょう。ミラさんはそれでいい?」
「はい、問題ありません」
フラーラは再びマーガレットに問いかける。
「ではどのような組分けで? それとも全員でまとめて一箇所ずつ潰すのですか?」
それにはレオが答えた。
「いや、護衛の手が空いたのなら、俺と彼女とそれ以外でわけて、3戦力がいいだろう」
ミラは少し驚いた。自分の方を向いていたレオが示す意味に。
それだと、ミラが1人で戦うということだ。
「あの……私がですか?」
「不満か?」
「いえ」
フローラはその勘違いにまみれた会話に、フォローした。
「レオお兄様、それだと王家が権力の傘を来て突撃命令を出しているみたいです。そうではなくて、ミラさんなら大丈夫だと言ってあげればいいんです」
「そうか、そういうことだ。君なら大丈夫そうだから、任せる」
「……わかりました」
(確かに魔人を撃破したことはあるけれど、あの防御っていまだに理由がよくわからないのよね……)
ミラは魔神に対して有効な防御をしたが、理由も理屈もわからない方法だった。
もし、変身した魔人に遭遇した時、あの防御を敗れる魔人だったら、ミラは負けてしまう。薬草も残りがない。
いかにも強そうな護衛の人たちも一緒に来てほしかったが、分散する敵を同時に叩かないといけない。
ミラは、その潜伏地を知るために、広範囲索敵を行うため、内面に意識を集中した。
すると、4箇所に怪しい人たちがいて、2~3人で固まっていた。
倒した黒フードたちの残りだろう。
この王城には一部隊が潜入しているらしく、あくまで先遣隊だ。おそらくバイレンス家の王都別邸にはそれ以上の戦力が大規模に用意されている。
場所を把握したら、戦闘に参加し動ける者をこの王城(の安全地帯だけ)からかき集めた。
***
合図を確認して、ミラも他の部隊と一緒に分散し、一斉に拠点へと攻撃を仕掛けた。
拠点といっても隠れるために偽装した場所というだけだ。
「誰だお前、ぐはっ……」
「なにが、ぐあっ!」
ミラは全力で走り抜け、抵抗を許さない形で全員の背中を斬り伏せた。
次に向かうのは、応援として護衛隊の一部をさらに2箇所に分散したところにだ。
敵人数が3人ずつで、一番の戦力と思われる。
そのどちらかに親玉もいるのだろう。
戦力的に不安という話でなぜかミラもそこに加わるように言われたため、急いで駆けつけた。
1つの目的地に到着すると、敵を倒し終えていた。
合流したまま、護衛騎士たちの数人と残りの場所へと向かうことになった。
「それにしても本当に一人で倒してこられたんですね?」
1人の男性がミラに話しかけてきた。
「え? ええ……不意をつけたのでなんとか」
「そうなんですか? 正直、この黒いフードをかぶった敵は結構強かったですよ?」
「そのようです。あの、その中に異形の魔人はいませんでしたか?」
「いなかったですけど……」
「そうですか」
とすると、もう1箇所はここよりも危険かもしれない。
ミラは覚悟して次の場所に向かった。
***
ミラたちが到着すると、敵の3人のうち、2人がすでに倒されていた。
しかし、護衛も数人が倒されている。
レオも加わっているが、残りの1人にかなり苦戦しているらしい。
ミラはその姿を見て少しホッとした。
魔人ではない。
しかし、変身していなくてもあの人数差で戦線を圧倒している。
以前、魔人に変身した男は、自分の戦力が弱いことを自覚していたのか、爆発物を使い、その後すぐに変身してきた。
つまり、あの男は素でかなりの強さでありながら、魔人に変身する可能性がある。
この部隊の親玉ということになる。
「気をつけて下さい。その人、まだ手加減しています! 全力ではない弱いままの動きに見えます」
ミラはそう叫んだ。
兄の様子と重ねて、手加減していると言っていたときの表情とほぼ同じだった。
苦痛に耐えるふりをして、機を狙っているのだろうと。
「わかった」
レオが叫び返す。
だが、男はミラを見て、怒りに打ち震えていた。
「手加減だと……。これがお前には手加減して弱く見えるのか……」
ミラはぼそぼそいっている黒フードの男の声を聞き取ろうとして失敗した。
「あの人、なにか言っているのでしょうか?」
とりあえず、剣と魔法での戦いということもあり、戦線に加わるタイミングを図ってミラたちはその周囲に待機した。
一瞬、魔法が尽きて、レオが連続戦闘で疲弊し、剣と足を止めたところで、ミラがその間に駆け出した。
突然のことに、護衛たちも止める隙はない。
「厄介なのが来たか……仕方ない」
黒フードの男はアイテムを飲み込んだ。
それを見たミラは、レオのところに進行方向を変える。彼の身体を引っ張るように後ろに下げた。
ミラがその正面に立ち、あの攻撃が来るようなら、防がなければいけない。
それができなければ全員死ぬのだ。
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