十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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芽生えた気持ち

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美咲は久堂が部屋を出て行くと鍵を締めた。
さっきまで久堂が座っていた所に膝を抱えて座る。

(今日は色々ありすぎたな・・・。)

今日一日の事を思い出す。
まさかあんな事件に巻き込まれるなんて思っていなかった。
そして、久堂に抱きしめられるなんて。
抱き締められた感触を思い出す。自分を包み込む様に優しく腕の中に閉じ込められた事を。

「どうしてあんなこと・・・?」

思い出すだけで、頬が熱くなり鼓動が早鐘を打つ。
そんな自分に戸惑った。
今まで自分の周りには居なかった人だ。
大人で優しくて・・・だけど結婚している。

「きっと誰にでも優しいんだ、、、、。」

そう思うことで自分の思いに蓋をした。

(あの人は好きになっちゃいけない人。)

そう自分に言い聞かせた。

「・・・・。」

ぼんやりそんな事を考えていると不意にスマホが鳴る。
びっくりして画面を見るとライン通知だ。

「誰だろう?」

不思議に思いながら開くと中垣からだった。

『おつかれ。今日は大変だったな、大丈夫か?』

一見、ぶっきら棒なメッセージにみえるが中垣らしくて思わず笑みがこぼれる。

『お疲れ様。大丈夫だよ、今はもう家だし。中垣君はもう仕事終わったの?』

『終わった。駐車場に如月の車があったから気になって。』

久堂に送って貰ったから自分の車の事をすっかり忘れていた。

『久堂さんに家まで送って貰ったから。明日休んで良いって言われてるから明日取りに行く。』

『ふーん。久堂さんに送ってもらったんだ・・・?』

『?。そうだけど?』

『わかった。大丈夫ならそれで良い。また、飯でも食べに行こうな?』

『ありがとう。そうだね、みんなでまた食事したいね!』

『・・・ああ。またな、おやすみ。』

『はーい。おやすみなさい。』

ラインを閉じるとスマホをテーブルの上に置く。
一息ため息をつくと、テーブルの上のカップをキッチンに持っていく。

「今日は疲れたし、もう寝よう。」

寝支度を整えてベッドに潜り込む。
予想以上に疲れていたのか直ぐに眠気が襲ってきた。目を閉じると深い眠りに落ちていく。




✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻




「うっ・・・。」

眠りに落ちた美咲の口から苦悶の吐息が溢れる。
夢を見ていた。
昼間の続きの様な場面だったが妙にリアルだった。
犯人に首筋にカッターを突き付けられている。
周りには刑事や久堂、中垣達がいた。
カッターを振り上げると躊躇無く美咲の首を切りつけた。
血が大量に流れ崩れ落ちる自分が目にしたのは薄笑いを浮かべている犯人だった。

「いやぁぁぁぁぁ!!」

美咲は飛び起きると、恐る恐る首に手を当てる。
何もない事に安堵した。

「何だ、夢か・・・。」

時計を見ると午前1時を回ったところだ。
喉がカラカラに渇いているのに気付き冷蔵庫からミネラルウォーターを取ると一気に飲む。
ため息をつきベランダに出ると爽やかな風が頬を撫でた。
4月とはいえまだ夜は肌寒い。
ベランダから近くの公園の満開の桜が見える。
桜の花を見ていると心が凪いでいくのがわかった。
美咲は暫く桜の花を見つめていた。
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