色彩色盲

カミーユ R-35

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参ったな…

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翌朝、いつものように登校し教室に入る。
何人かのクラスメイト達と挨拶を交わしながら自分の席へと向かう。(あ、今日は隣の〇〇がいる!!)

転入生「お、おはよう!」

「ああ…おはよう」
挨拶を交わしつつ、俺は席に着いていつものように朝のホームルームの時間まで時間をつぶす。しかし、今日はなんだかいつもより教室の雰囲気が少し暗いような気がした。何かあったのかな?と思っていると、一人の見知らぬ男子生徒が教室の扉からひょっこっと現れる。

??「突然ですが……転入生くんはいらっしゃいますか?」

転入生「え!?あ、はい!自分です!!」
突然の呼びかけに戸惑いながらも返事をすると、「ちょっとこっちに…」と呼びかけに従い、俺はその男子生徒に近づく。

??「突然呼び出してすみません。
実は、転入生くんに頼みたいことがあってきたんです」

転入生「あ、はい。なんでしょうか?」
緊張しながら俺は男子生徒に尋ねる。一体なんだろう??

??「えっと、その……ちょっとここでは話しにくいことなので……放課後に校舎裏に来てくれませんか?」

男子生徒は少し照れくさそうにしながら言う。なんだろう?この前といい昨日といい、正直嫌な予想しかしない俺は、とりあえず今は話を合わせる事にした。

転入生「わ、わかりました」
緊張した声で返事をすると、男子生徒はニコッと笑って教室を出ていった。(マジで嫌な予想しかしないわ…)俺は心の中でそう呟いた。
複雑な気持ちでトボトボと自分の席へ戻ると、椋橋が何故かコチラをじっと見つめていた。

椋橋「行くの?」

転入生「え? ああ~、ほんとは行きたくないけど行かなきゃ後々面倒そうだし放課後行くつもりだけど…」

椋橋「ふーん。行くんだ」
椋橋はいつものポーカーフェイスでそう言った。けどどうしたんだろ?いつもの彼なら、そんなコト普段は言わないだろうに。

転入生「なんか怒ってる?」
そう言うと、彼は何故か少し驚いた様な顔で俺を見る。

椋橋「それって僕に言ってる?」

(え?俺、何か不味いコト言ったか?)
転入生「そりゃそうだろ。急にそんな表情で言われたらびっくりする」

椋橋「表情?僕の顔が?」

不思議そうにそう問いかけられ、俺の頭が?マークでいっぱいになる。

椋橋「そっか、そうだよね。
なんか自分でもよくわからないんだけど、少し君の馬鹿さ加減にイライラしちゃってるみたい」

そう言った椋橋の表情は、云って普段通りの顔に戻っている。俺はなんだか不思議な気分だったが、でもこれ以上詮索するのは良くないと思い、話題を変えることにした。

転入生「それにしても君がそんなに怒った表情するなんて何か新鮮」
悪い意味じゃないとの意味も込めて俺は微笑みながらそう尋ねると、彼は少し考え込んだ後、ぽつりと呟いた。

椋橋「やっぱり僕って感情表現が下手なのかな」
ホントに悩んでるのだろう、表情こそ変わらないがなくとなくそう思えた。

(何か可愛いな…)
転入生「そんなことないだろ?少なくとも俺は〇〇の素直なところに好感を持っているけど」

椋橋「……本当に?」

確かに俺が見る限り彼はポーカーフェイスで感情があまり表に出ない方だとは思うが、別にそれが欠点だとは思えない。むしろ彼の魅力の一つだと思う。それに何より彼自身も感情を表に出せないことで悩んでいるようだ。それなら俺が言う冪コトは一つだろう。

転入生「ああ、本当だよ」
そう答えると、彼は少し照れた様な嬉しそうな表情を見せた。
椋橋「そっか、ありがとう」
彼はそう言って微笑む。その笑顔を見て、俺は改めて思った。椋橋にはもっと色々な表情をしてほしいな、と。と、同時に教室内が少しざわついた。


ボブ「なあ今の見たッ⁉」
ボブ「見た見た‼椋橋様って笑うんだ」
ボブ「俺初めてかも…」

彼の笑顔を見たクラスメイト達が皆、興奮とどよめきが辺り一帯を覆い尽くす。そんな光景を眺めながら、俺は改めて椋橋の魅力について考えた。

ボブ「あんな笑顔見せられたら誰だって好きになるわ!!」
ボブ「椋橋様可愛すぎるだろ……」
ボブ「椋橋様と付き合いたい」

クラスメイト達が口々に好き勝手言う中、俺は思わず吹き出してしまった。

「なに?急に笑って」

(椋橋様と付き合いたい、って)
転入生「いや、君も人間なんだなって思ってさ。笑えば普通に可愛いしさ」

俺がそう言うと彼は一瞬きょとんとした表情を浮かべ「男に可愛いって変だよ」って心做しか迷惑そうな表情にも見えた。

転入生「なんかごめん。別に君を不愉快にさせるつもりじゃないんだ。だだ、本当にそう思っただけ」

椋橋「そう…」
彼は呟くようにそう言った後、窓の外に目を向けた。そんな彼を見て、俺はふと思ったことを口にしてしまう。
転入生「君ってさ、好きな人とかいるの?」
(あ、やべっ)

言った後に後悔した。(もしかしたら嫌われたかも…)
つい聞いてしまったが、普通に考えればこの流れでこんなことを今聞くのは不自然だ。
そう思い慌てて誤魔化そうとすると、彼は一瞬驚いたように目を見張った後、小声で「……分からない」と答えた。

転入生「えっ?」
予想外の回答に今度は俺が驚いた表情を見せると、彼は少し困ったように言った。

椋橋「正直、この感情がどう言うものなのか僕にもよく分からなくて……。でもその人と同じ空間で同じ時間を過ごしているだけで、心が満たされるような気持ちになる。でもそれが恋なのかと言われるとよく分からない……」
そう言うと彼は目を伏せた。俺はその言葉を聞いて、自分がどれだけ的外れなことを言ってしまったのかを痛感する。
(何も考えずに聞いちゃったな)でも……。
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