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一章

10 面倒ごとの気配

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  「やったな! ケーン! カイギスは罪を認めて追放になったぞ!」
バシン! と背中を騎士の皆に叩かれて、カイギスは追放になったことを聞かされた。

 俺の知らないうちに先輩騎士や、裏で情報を集めていた者達のおかげでもある。
「先輩達や、情報を集めてくれたおかげですよ」
 俺は皆に言った。食堂で集まって、乾杯をしていた所だ。

 「ケーン、飲んでいるか?」
 声をかけてきたのはレガシー。飲んでいる物は残念ながらジュースだ。いつ、魔物が襲って来るか分からないため、休暇の者以外、お酒は飲めない。
 「ああ。酒を飲みたいところだけどな」
 チーン! とグラスをお互いあてて乾杯し、グラスの中身を飲み干した。
「まったくだ」
 レガシーはそっと俺に近づいて小声で話しかけてきた。

 「どうやらカイギスと関わりがあった大臣は、証拠不十分で何も罪にならなかったらしいぞ」
 「なんだと?」
 あの大臣……。うまいこと何も関係のないように逃げたな。
 「みんな、カイギスが単独でやらかしたことと結論が出た」
 レガシーは大臣を思い出して苦い顔をした。俺もあの大臣を思い出して、ムカついてきた。

 「関係ないはずないのに。くそっ」
関係がないなら、なぜカイギスが大臣の部屋へ行ったのか。
 「マキシムド騎士団総団長は、なんて?」
 俺達の訴えを聞いてくれた騎士団総団長。大臣の事も調べたはず。レガシーは言いにくそうに俺を見た。
 「それが……。なにも」
 なにも、だと? あんなに厳しくカイギスを追い詰めたのに。

 俺はマキシムド騎士団総団長がこのまま、大臣を無関係とするのが信じられなかった。
 「まさかマキシムド騎士団総団長は……」
俺は、マキシムド騎士団総団長と大臣が裏で繋がっていたら? と考えてしまった。
 「それはない。裏で繋がっていたら、まず俺達が消される」
 レガシーの言葉に俺はゾッとした。……確かに、まず俺達が消されるだろう。

 「そう、だな。マキシムド騎士団総団長は、信用できる人物と考える」
「とりあえず、今の所は信用できる人物とみていいと思うぞ?」
レガシーに言われて、とりあえず信用することにした。レガシーがさらに声を低くして俺に言ってきた。
 「俺達の身辺に注意した方がいい。カイギスは下っ端のだった。そう考えれば、目障りな俺達が危ないかもしれない」
 「……かもな」

 レガシーは近くに置いてあったジュースの樽を見つけて、グラスにジュースを汲んだ。ゴクゴクとそれを飲んだ。
 「まあ、お前は強いから心配ないと思うが」
ニッ! と笑って俺の肩を叩いた。
 「じゃ、俺はうまいメシを食べてくる」
 そう言い、他の騎士の所へ行った。食堂のお姉さま達がお祝いだと、たくさん美味しいご飯を作ってくれた。
 
「また、面倒な事にならないといいが……」 
この国の面倒ごとに巻き込まれたくない。そう思った。
 
 
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