13 / 14
一章
10 面倒ごとの気配
しおりを挟む「やったな! ケーン! カイギスは罪を認めて追放になったぞ!」
バシン! と背中を騎士の皆に叩かれて、カイギスは追放になったことを聞かされた。
俺の知らないうちに先輩騎士や、裏で情報を集めていた者達のおかげでもある。
「先輩達や、情報を集めてくれたおかげですよ」
俺は皆に言った。食堂で集まって、乾杯をしていた所だ。
「ケーン、飲んでいるか?」
声をかけてきたのはレガシー。飲んでいる物は残念ながらジュースだ。いつ、魔物が襲って来るか分からないため、休暇の者以外、お酒は飲めない。
「ああ。酒を飲みたいところだけどな」
チーン! とグラスをお互いあてて乾杯し、グラスの中身を飲み干した。
「まったくだ」
レガシーはそっと俺に近づいて小声で話しかけてきた。
「どうやらカイギスと関わりがあった大臣は、証拠不十分で何も罪にならなかったらしいぞ」
「なんだと?」
あの大臣……。うまいこと何も関係のないように逃げたな。
「みんな、カイギスが単独でやらかしたことと結論が出た」
レガシーは大臣を思い出して苦い顔をした。俺もあの大臣を思い出して、ムカついてきた。
「関係ないはずないのに。くそっ」
関係がないなら、なぜカイギスが大臣の部屋へ行ったのか。
「マキシムド騎士団総団長は、なんて?」
俺達の訴えを聞いてくれた騎士団総団長。大臣の事も調べたはず。レガシーは言いにくそうに俺を見た。
「それが……。なにも」
なにも、だと? あんなに厳しくカイギスを追い詰めたのに。
俺はマキシムド騎士団総団長がこのまま、大臣を無関係とするのが信じられなかった。
「まさかマキシムド騎士団総団長は……」
俺は、マキシムド騎士団総団長と大臣が裏で繋がっていたら? と考えてしまった。
「それはない。裏で繋がっていたら、まず俺達が消される」
レガシーの言葉に俺はゾッとした。……確かに、まず俺達が消されるだろう。
「そう、だな。マキシムド騎士団総団長は、信用できる人物と考える」
「とりあえず、今の所は信用できる人物とみていいと思うぞ?」
レガシーに言われて、とりあえず信用することにした。レガシーがさらに声を低くして俺に言ってきた。
「俺達の身辺に注意した方がいい。カイギスは下っ端のコマだった。そう考えれば、目障りな俺達が危ないかもしれない」
「……かもな」
レガシーは近くに置いてあったジュースの樽を見つけて、グラスにジュースを汲んだ。ゴクゴクとそれを飲んだ。
「まあ、お前は強いから心配ないと思うが」
ニッ! と笑って俺の肩を叩いた。
「じゃ、俺はうまいメシを食べてくる」
そう言い、他の騎士の所へ行った。食堂のお姉さま達がお祝いだと、たくさん美味しいご飯を作ってくれた。
「また、面倒な事にならないといいが……」
この国の面倒ごとに巻き込まれたくない。そう思った。
応援ありがとうございます!
16
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる