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本編
11 彼の婚約者
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「羽花さん。少し席を外します。礼華。話がある」
「いいわよ」
礼華さんは冬悟さんの腕に手をからめて部屋から出て行った。
親しげな二人の様子を目の当たりにした私は呆然としたまま、黙って見送るしかなかった。
私には『羽花さん』で礼華さんは呼び捨てなの?
これは知り合った年月の差?
それに自然に腕を絡めるくらい二人は近い距離なのかな。
恋人的なスキンシップに戸惑ってモタモタしている私とは大違い。
ショックを受けている私に竜江さんが励ますように声をかけてくれた。
「心配しなくても大丈夫ですって!冬悟さん……社長ともうヤッちゃったんでしょ?社長の女なんだから、どーんと大きく構えていたらいいですよ」
「そ、そんなこと……まだ……」
「「まだ!?」」
竜江さんだけじゃなく、先崎さんまで同時に声をあげた。
「えっ!?えええっ!?冬悟さんが女に手を出してない!?」
「どこか体の具合でも悪いのだろうか」
二人の様子からいって、冬悟さんが私に手を出さなかったことは意外なことだったらしい。
あんなにモテるのだから、女性の一人や二人、いてもおかしくないけれど、冬悟さんにしたら珍しいことだと言われるとやっぱり私に女としての魅力が少ないということよね……
ズーンと落ち込んでしまった。
うつむくと貧相な自分の胸が目に入り、追い打ちをかけるようにズドーンと気持ちが落ちていった。
たしかに礼華さんは胸もあってミニスカートもよく似合っていた。
ミニスカートはいちゃう?
ちらりと窓ガラスを見た。
百六十センチない身長に平たい体。
―――やめとこう。
着物は似合うって言われるんだけどな……
「やっぱり私、冬悟さんと釣り合っていないですよね……」
「あ、いえいえっ!そうですよねぇー。まだお付き合いされたばかりですからね」
竜江さんはそう私に言ったくせに本音は違っていた。
「嘘だろー……。手を出さねぇとか、どういうことだよー」
ぶつぶつとつぶやいているのが聞こえた。
本音がダダ洩れだし。
私の色気うんぬんはこの際、どうでもいい……よくないけど。
横に置いといて。
「冬悟さんの婚約者がどうして矢郷組の方なんですか?」
「それはですねぇ……っと、仙崎さん」
パスと言うように竜江さんは仙崎さんに話を振る。
「冬悟さんに訊いてください」
なにこのタライ回し。
二人が私の質問を拒否したその時―――
「私達はロミオとジュリエットなのよね?冬悟?」
礼華さんが社長室に戻ってきた。
さっきの勢いはあるものの、いくぶんトーダウンしているように感じた。
「面白い冗談ですね」
「冗談なんかじゃないわ。教えてあげる」
「礼華」
冬悟さんの低い声に礼華さんがびくっと身を震わせ、ふんっと顔を背けた。
「でも、間違いではないでしょ。私達の家は敵同士。私と冬悟が結婚することで、この長い争いを終わらせましょうよって話なのよ。約束を反故にするつもりなら私の祖父が黙ってないわよ」
「結婚……」
こんな大きな会社の社長である冬悟さん。
当たり前だけど、結婚相手だって家の人が決めてしまっていてもおかしくない。
政略結婚というものだろうけど、私も歴史ある『柳屋』の娘。
そういう結婚の形があることくらいわかってる。
わかってるけど……
冬悟さんが不安になっている私に気づいてか、私の目を見てそっと頬をなでた。
「勝手に親が決めたことです。承知していません」
「冬悟が承知していなくてもみんなのためには私と結婚した方がいいのはわかっているでしょ?そこの幼児体型よりはふさわしいと思ってるわ」
い、言われたー!
幼児体型ってどんぴしゃりに言われてしまった。
しかも、反論のしようがない。
「私が嶋倉建設の受付で働いているのだって、あなたと結婚するためなのよ?嫁入り前の行儀見習いに来ているようなものじゃない。そんな私と婚約をやめるっていうの?そんなことができるの?」
「孫娘を入社させてほしいとあなたのおじいさんが頼んできたからですよ」
「でも、入社させたってことは私との婚約を受け入れたってことよね」
冬悟さんがきっぱりと言っているのに礼華さんはあきらめない。
「言っておくけど冬悟。あなたはこちら側の人間よ。本当の姿も見せることができない女と結婚?できるわけないわ。私が結婚相手なら、そのおかしな演技もしなくてすむわよ」
話についていけず、戸惑っている私を見て、礼華さんはバカにするようにくすっと笑った。
「なーんにも知らないのね。それで冬悟と付き合ってるつもり?ただのおままごとじゃない」
私のそばまで礼華さんは歩いてくると耳元で囁いた。
「本当の彼の姿も知らないでいい気なものね」
そう言って礼華さんは身を離した。
「今日のところはここで引いてあげる」
じゃあねと礼華さんは笑って出て行った。
本当の彼って……?
冬悟さんが私に見せる姿は全部演技だってこと?
混乱したまま、礼華さんが去ったドアのほうをずっと眺めていた。
「いいわよ」
礼華さんは冬悟さんの腕に手をからめて部屋から出て行った。
親しげな二人の様子を目の当たりにした私は呆然としたまま、黙って見送るしかなかった。
私には『羽花さん』で礼華さんは呼び捨てなの?
これは知り合った年月の差?
それに自然に腕を絡めるくらい二人は近い距離なのかな。
恋人的なスキンシップに戸惑ってモタモタしている私とは大違い。
ショックを受けている私に竜江さんが励ますように声をかけてくれた。
「心配しなくても大丈夫ですって!冬悟さん……社長ともうヤッちゃったんでしょ?社長の女なんだから、どーんと大きく構えていたらいいですよ」
「そ、そんなこと……まだ……」
「「まだ!?」」
竜江さんだけじゃなく、先崎さんまで同時に声をあげた。
「えっ!?えええっ!?冬悟さんが女に手を出してない!?」
「どこか体の具合でも悪いのだろうか」
二人の様子からいって、冬悟さんが私に手を出さなかったことは意外なことだったらしい。
あんなにモテるのだから、女性の一人や二人、いてもおかしくないけれど、冬悟さんにしたら珍しいことだと言われるとやっぱり私に女としての魅力が少ないということよね……
ズーンと落ち込んでしまった。
うつむくと貧相な自分の胸が目に入り、追い打ちをかけるようにズドーンと気持ちが落ちていった。
たしかに礼華さんは胸もあってミニスカートもよく似合っていた。
ミニスカートはいちゃう?
ちらりと窓ガラスを見た。
百六十センチない身長に平たい体。
―――やめとこう。
着物は似合うって言われるんだけどな……
「やっぱり私、冬悟さんと釣り合っていないですよね……」
「あ、いえいえっ!そうですよねぇー。まだお付き合いされたばかりですからね」
竜江さんはそう私に言ったくせに本音は違っていた。
「嘘だろー……。手を出さねぇとか、どういうことだよー」
ぶつぶつとつぶやいているのが聞こえた。
本音がダダ洩れだし。
私の色気うんぬんはこの際、どうでもいい……よくないけど。
横に置いといて。
「冬悟さんの婚約者がどうして矢郷組の方なんですか?」
「それはですねぇ……っと、仙崎さん」
パスと言うように竜江さんは仙崎さんに話を振る。
「冬悟さんに訊いてください」
なにこのタライ回し。
二人が私の質問を拒否したその時―――
「私達はロミオとジュリエットなのよね?冬悟?」
礼華さんが社長室に戻ってきた。
さっきの勢いはあるものの、いくぶんトーダウンしているように感じた。
「面白い冗談ですね」
「冗談なんかじゃないわ。教えてあげる」
「礼華」
冬悟さんの低い声に礼華さんがびくっと身を震わせ、ふんっと顔を背けた。
「でも、間違いではないでしょ。私達の家は敵同士。私と冬悟が結婚することで、この長い争いを終わらせましょうよって話なのよ。約束を反故にするつもりなら私の祖父が黙ってないわよ」
「結婚……」
こんな大きな会社の社長である冬悟さん。
当たり前だけど、結婚相手だって家の人が決めてしまっていてもおかしくない。
政略結婚というものだろうけど、私も歴史ある『柳屋』の娘。
そういう結婚の形があることくらいわかってる。
わかってるけど……
冬悟さんが不安になっている私に気づいてか、私の目を見てそっと頬をなでた。
「勝手に親が決めたことです。承知していません」
「冬悟が承知していなくてもみんなのためには私と結婚した方がいいのはわかっているでしょ?そこの幼児体型よりはふさわしいと思ってるわ」
い、言われたー!
幼児体型ってどんぴしゃりに言われてしまった。
しかも、反論のしようがない。
「私が嶋倉建設の受付で働いているのだって、あなたと結婚するためなのよ?嫁入り前の行儀見習いに来ているようなものじゃない。そんな私と婚約をやめるっていうの?そんなことができるの?」
「孫娘を入社させてほしいとあなたのおじいさんが頼んできたからですよ」
「でも、入社させたってことは私との婚約を受け入れたってことよね」
冬悟さんがきっぱりと言っているのに礼華さんはあきらめない。
「言っておくけど冬悟。あなたはこちら側の人間よ。本当の姿も見せることができない女と結婚?できるわけないわ。私が結婚相手なら、そのおかしな演技もしなくてすむわよ」
話についていけず、戸惑っている私を見て、礼華さんはバカにするようにくすっと笑った。
「なーんにも知らないのね。それで冬悟と付き合ってるつもり?ただのおままごとじゃない」
私のそばまで礼華さんは歩いてくると耳元で囁いた。
「本当の彼の姿も知らないでいい気なものね」
そう言って礼華さんは身を離した。
「今日のところはここで引いてあげる」
じゃあねと礼華さんは笑って出て行った。
本当の彼って……?
冬悟さんが私に見せる姿は全部演技だってこと?
混乱したまま、礼華さんが去ったドアのほうをずっと眺めていた。
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