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1 狼は告白する
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「おばちゃん、ラーメンひとつ」
「おばさん。カツ丼大盛りで」
―――誰がおばさんよ。
そう思ったけど、相手は高校生。
いちいち訂正するのも大人げない。
それに高校生から見たら私なんておばさんに見えてしまってもしかたのないことよ。
私の名前は篠坂美知。
今年二十五歳の独身。
彼氏なし。
獣人と適合者が集まるマリアステラ学園の学食で働いている。
高校生からはおばさんなんて呼ばれちゃう私だけど、学食の中では一番若いんだから。
「はい。お味噌汁どうぞ」
今の時間、私は味噌汁係。
若いから前に出る仕事がいいよと言われて、面倒な仕事を押し付けられがちである。
今日は味噌汁か中華スープかセレクトだから、自分から言ってこない生徒にはどちらがいいか聞く必要があった。
ほんっとうまいこと仕事を押し付けるんだから困ったものだわ。
けど、それに勝てない私もまだまだってことよね。
私が学食で働きだしたのは高校を卒業してすぐのことだった。
最初のうちこそ仕事を覚えるのに苦労したけど、今では仕事にも慣れてすっかり周りに溶け込んで馴染んでいた。
ここで働いていれば、職員用の住まいもタダだし、毎食賄いが出るから食べるのにも困らない。
そんな生活を続けて早数年。
慣れに慣れきって、ほとんどノーメイクの私は学生達から見れば一人前の食堂のおばちゃんである。
それなのに―――
「好きです」
突然、九つも下の男子学生に告白された。
味噌汁のお椀を手に持ったまま笑顔で固まった。
学生同士で賭けでもしてる?
それとも私を笑わせようとしているのかも?
なんにせよ、私をからかってるわよね。
うん、絶対にそう。
私に告白してきた相手は狼の獣人で名前は狼谷泉地。
なぜ私が一年生の彼をすでに知っているのかと言えば、彼が有名人だからである。
入学したばかりなのにランクはSクラス。
エリート中のエリート。
マリアステラ学園は成績ランキングに応じて学内での待遇が変わる。
SSからSクラスは使う学食も寮の部屋も一般の学生とはまったく違う。
今年、入学してきた獣人の中でも将来を有望視されている。
すでに二年生や三年生の獣人達は彼から一線引いているのが私の目から見てもわかるくらい。
彼に笑顔を向けながら、私は心の中で。
『ありえないでしょ。こんな嘘に引っ掛かると思ったら大間違い』
なんて思って笑っていた。
ちょっと顔見知りになった年上をからかおうなんて十六歳が考えることよね。
うん?
ちょっと待って?
まだ十五歳という可能性もある。
誕生日が来てないかも。
私を犯罪者にでもするつもりだろうか。
この子は。
冷ややかな目を狼谷君に向けた。
だいたい入学して間もない一年生が同じ年頃の女子、適合者と交流しないで言うことだろうか。
もっと周りを見なさいよと応援するような眼差しを若人に向けた。
「私は誰とも付き合う気はないの。ごめんなさい」
味噌汁を狼谷君のトレイにのせてあげて、きっぱりとお断りしたのだった。
春のうららかなお昼時間。
きっと彼はねぼけていたに違いない。
「はい、次の人ー」
私は彼の表情を見ずに次の人を呼んだ。
今の私にとって大事なのは味噌汁か中華スープかだけだった。
Sクラスの獣人である彼が寮の部屋から遠い一般学生が使う学食にわざわざやってきていることも気にかけていなかった。
私に会いに来ている可能性なんて一ミリも頭の中になかったのだから―――
「おばさん。カツ丼大盛りで」
―――誰がおばさんよ。
そう思ったけど、相手は高校生。
いちいち訂正するのも大人げない。
それに高校生から見たら私なんておばさんに見えてしまってもしかたのないことよ。
私の名前は篠坂美知。
今年二十五歳の独身。
彼氏なし。
獣人と適合者が集まるマリアステラ学園の学食で働いている。
高校生からはおばさんなんて呼ばれちゃう私だけど、学食の中では一番若いんだから。
「はい。お味噌汁どうぞ」
今の時間、私は味噌汁係。
若いから前に出る仕事がいいよと言われて、面倒な仕事を押し付けられがちである。
今日は味噌汁か中華スープかセレクトだから、自分から言ってこない生徒にはどちらがいいか聞く必要があった。
ほんっとうまいこと仕事を押し付けるんだから困ったものだわ。
けど、それに勝てない私もまだまだってことよね。
私が学食で働きだしたのは高校を卒業してすぐのことだった。
最初のうちこそ仕事を覚えるのに苦労したけど、今では仕事にも慣れてすっかり周りに溶け込んで馴染んでいた。
ここで働いていれば、職員用の住まいもタダだし、毎食賄いが出るから食べるのにも困らない。
そんな生活を続けて早数年。
慣れに慣れきって、ほとんどノーメイクの私は学生達から見れば一人前の食堂のおばちゃんである。
それなのに―――
「好きです」
突然、九つも下の男子学生に告白された。
味噌汁のお椀を手に持ったまま笑顔で固まった。
学生同士で賭けでもしてる?
それとも私を笑わせようとしているのかも?
なんにせよ、私をからかってるわよね。
うん、絶対にそう。
私に告白してきた相手は狼の獣人で名前は狼谷泉地。
なぜ私が一年生の彼をすでに知っているのかと言えば、彼が有名人だからである。
入学したばかりなのにランクはSクラス。
エリート中のエリート。
マリアステラ学園は成績ランキングに応じて学内での待遇が変わる。
SSからSクラスは使う学食も寮の部屋も一般の学生とはまったく違う。
今年、入学してきた獣人の中でも将来を有望視されている。
すでに二年生や三年生の獣人達は彼から一線引いているのが私の目から見てもわかるくらい。
彼に笑顔を向けながら、私は心の中で。
『ありえないでしょ。こんな嘘に引っ掛かると思ったら大間違い』
なんて思って笑っていた。
ちょっと顔見知りになった年上をからかおうなんて十六歳が考えることよね。
うん?
ちょっと待って?
まだ十五歳という可能性もある。
誕生日が来てないかも。
私を犯罪者にでもするつもりだろうか。
この子は。
冷ややかな目を狼谷君に向けた。
だいたい入学して間もない一年生が同じ年頃の女子、適合者と交流しないで言うことだろうか。
もっと周りを見なさいよと応援するような眼差しを若人に向けた。
「私は誰とも付き合う気はないの。ごめんなさい」
味噌汁を狼谷君のトレイにのせてあげて、きっぱりとお断りしたのだった。
春のうららかなお昼時間。
きっと彼はねぼけていたに違いない。
「はい、次の人ー」
私は彼の表情を見ずに次の人を呼んだ。
今の私にとって大事なのは味噌汁か中華スープかだけだった。
Sクラスの獣人である彼が寮の部屋から遠い一般学生が使う学食にわざわざやってきていることも気にかけていなかった。
私に会いに来ている可能性なんて一ミリも頭の中になかったのだから―――
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