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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「黒龍ラザフォードとマッドサイエンティスト」その2

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ラザフォードは炎竜だった時の常識から考えても自分が異常な強さを得てしまったと分かったので。

「「ふははははははは!!力だ!我は力を得たぞ!
愚かなる愚民共よ!平伏するが良い!」」シャキーン☆

と、ラノベ風なセリフとポーズを決めて見た・・・ドラゴンの姿で!

Orz・・・・・「む・・・虚しい・・・」
自分で言っておきながら余りの痛々しさに落ち込むラザフォード。

ラザフォードは想像する・・・暴れる自分、逃げ惑う人間達・・・
「「そんなの全っ然!!面白くない!!」」
何が悲しくてそんな真似をせにゃならん!と、早々にラザフォードは黒龍王の果たすべき役割を放棄する。

世界が黒龍王に与えた役割は「破壊と創造」だ。
破壊する者を破壊して、破壊しない者も破壊して、世界に住む者に圧倒的な暴力を無差別に撒き散らす・・・ 

その結果、破壊しない者は新たな物を作り上げる力として、破壊をする者には抑止力として、その為の力の根源たる黒龍王が誕生した。

つまり理由や目的はともかく巨大な敵に一致団結して戦い、何かを生み出す原動力とするのだ。

まぁ、言わば巨大な「敵役」と言う訳やね。

そしてその黒龍の使命を世界の言葉として新たな黒龍王になったラザフォードに語り掛けて来たのだ。

「「えっ?何?何の声???」」

いきなり聞こえて来た声に困惑するラザフォード。
『新たに黒龍として産まれた者よ、其方に使命を授けよう』
そんな感じに世界の言葉はラザフォードに黒龍が世界に産まれるその意義の説明を始める。

説明を聞くうちに見る見る眉毛が吊り上がるラザフォード。
実際には黒龍に眉毛は無いのだが感覚的に吊り上がって来たのだ!

世界の言葉が紡ぐ話しに不快感を感じて、その不快感は怒りへと繋がる。

そしてラザフォードは・・・・・・・
おそらくは神様であろう存在にマジでブチ切れた?!

「「その「破壊しなければ何を生み出せない」と外野が勝手に決めつけている事が凄く!もの凄ごーーーーーく!!気に入らないわ!!」」

『えええええ???』
いきなりブチ切れたラザフォードに困惑する世界の言葉。

仮にも「音楽で世界を繋ごう!」と本気で頑張って来たアーティストには侮辱以外の何物で無い暴論なのだ。

『え?・・・・・・いや、そうやって世界は回って来たし・・・』

「「回す?!世界を回して来たのは外から見ている貴方?違うでしょ?!
この世界に実際に住んで居た者が回して来たのよ!何言ってんの?!
大体からしてその「破壊」とやらで世界を動かせる凄ーい逸材が死んじゃったら、
どうやって責任取れって言うのよ?!貴方は責任取れるの?!」」

『それは!そうですね・・・はい取れません・・・すみません』
世界の言葉が秒速で論破された?!

『しかしそれでは黒龍王が果たすべき使命が・・・』
論破された分際でしつこい世界の言葉・・・だんだんと儂もイラついて来たわ!

「「何度も何度も使命使命とうるさーい!
私は音楽のアーティストよ!そんな無意味な破壊なんて許さないわ!」」

聞こえて来る破壊を促す世界の言葉に真っ向から対立するラザフォード。

「「だったら無から有を作り出す音楽のアーティストの力を見せてあげるわ!
どこの誰だが知らないけど貴方は黙って見ていなさいな!」」

全然言う事を聞いてくれないラザフォードに頭を抱えるどっかの誰かさん。
どこか中間管理職の悲哀を感じる。
神様にも中間管理職ってあんのかね?知らんけど。

こうして新たな黒龍王ラザフォードは世界の言葉なんぞフルシカトして自分の好き勝手に生きると決めて動き出した!

先ずはとにかく危険だと分かっているが空を飛んで炎竜の群れを探すのだ。
今の自分は憎っくき黒龍王の姿・・・仲間に攻撃されるかも知れない。
でもやっぱり仲間や両親の安否が心配なのだ。

基本的に炎竜は定住しないが今回の襲撃で近くに持っている緊急時の時用の隠れ家に潜み怪我を癒しているだろう。

「「えーと?確かこの辺での隠れ家は・・・」」
炎竜以外は絶対に知らない隠れ家の存在だが、ラザフォードは元炎竜、全ての隠れ家を把握している。

ちなみにこの時はまだ彼女は自分をラザフォードと名乗っていない。

これから音楽活動をする時に自分で名乗った芸名だから。
今はまだ炎竜の父親が付けてくれた「ポポ」と言う可愛い名前だ。

「「あった!確かここのはず!」」
中規模の山岳の中腹にある谷間、そこにあるガス噴出孔洞洞窟に隠れ家がある。
真っ直ぐに隠れ家の洞窟に滑空すると?!

「「おのれーーーー!!!娘の仇めーーーー!!!」」
カウンター気味に、その洞窟から怒り狂ったラザフォード父が飛び出して来た?!

ドオオオオオン!!ガブウ!!

「「きゃああああああ??!!おとーさん!!待ってぇーーー!!
痛い!痛い!私はポポ!!ポポなのよーーー!おとーさーん!!」」

ゴロゴロと地面を転がる二体のドラゴン!
そしてガブリと腕に噛み付かれて痛さの余り思わず父親を上下にブンブンと振るラザフォード。

「「ふぉのほえは?!!!ほほ??!!」」(その声はポポ?!)

「「おとーさん!!分かったのなら噛むのをやめてーーーーー!!」」

幸いな事に父親が真っ先に飛び出して来て、性懲りも無くやって来た黒龍王がポポだと仲間に証明してくれたのでこれ以上、炎竜達に攻撃されずに済んだラザフォード。


「「うう~・・・おとーさんに思い切り噛まれたー」」グスグス泣くラザフォード。

「「すっ、スマン!」」ペロペロとラザフォードの腕を舐める父。

「「ポポ~・・・良かった~」」

無事だった母親もラザフォードの顔を泣きながらペロペロと舐める。
俄かには信じられない話しだが、この黒龍王が自分たちの娘ポポだと認識してしまえば魔力も気配も匂いも娘のモノだと分かる両親。

ちなみに炎竜はどちらかと言うと哺乳類に分類され卵からで産まれるのでは無く、
母親のお腹の中で幼竜に成長してから出産される。

その為に家族愛は人間と変わらないのだ。

「「まぁ・・・二人がそう言うならポポなんだろうな」」

そんな父親と母親の直感を信じて、まだ少し警戒はされているが群れに受け入れられるラザフォード。

「「疲れた・・・眠い」」

激動の一日を終えて疲れ果てた黒龍王ラザフォードはスリスリスリと母親に甘えながら眠りについた。

面倒くさい事は明日から考えよう。

とにかく今は眠りたいラザフォードだったのだ・・・
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