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還章⑤ ウェルバインド領Ⅱ
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日は地平線に沈み、黒の幕が下りた。
青く、冷えた空気がオレの喉を震わせる。
それもそのはずだ。
オレの体は、血に染まっている。
単眼から槍を引き抜き、肺に取り込んだ鉄の匂いを絞り出すように、細い息を吐いた。 魔力器官が、悲鳴を上げる――限界だった。
群れのほうは大した事がなかった。
だが、単眼族は違う。圧倒的な質量差があった。
棍棒との剣戟。一振りで、オレの筋肉が断裂し、使い物にならなくなった。
こいつが眷属ではなくて良かった。もし、眷属であれば、オレにトドメはさせない。
ブランウェンから借りた槍は二つに折れている。
……いや、槍の問題じゃない。
そうだ。オレに聖剣は扱えないからだ。
――溜息をつく。
単騎で竜魔四天王とやり合おうとした勇者は、いったいどんな努力を重ねたのだろう。 オレが勇者に選ばれなかった理由――それは、なんだったのだろう。
……分かっている。
その理由は既に、分かっている。
目を背けていた。
直視してしまうと、すべてが壊れる気がして。
改めて、村を回る。
井戸から水を汲んで、頭から被る。
戦闘の興奮が冷め切らないのか、不思議と寒さは感じなかった。
村には、人っ子ひとり居ない。
住んでいた痕跡はあるが、血痕はない。おそらく、侵攻の直前で退避できていたのだろう。
使われていたであろう炉跡を使って、念のために焚き火の準備を始める。体を冷やしてしまえば、彼らに心配されてしまうから。
……姫様に、心配されてしまう――果たして、そうなのだろうか。
オレは騎士だ。主君である、姫様を護るための。
彼女を護るためなら、どんな力でも捻り出せた。限界など、越えてみせた。
だが。
今、魔物を討伐するために、全力を出せたのだ。
今のオレは、騎士ではないのに。
護るべき主君は居ないのに。
――――何故、オレは、姫様を護っていたのだろう。
適当な椅子に、腰を下ろす。
夜空を見上げて、想い返す。
十年以上も前のことだ。
建国祭の日。
メルキセデク王に招待され、オレは父上と共に、王城で数日間を過ごす事となった。
父上と王は、旧知の仲だ。これを好機と見なし、オレは父上に頼み込んで、聖剣に触れたのだ。なんと言ったかな。――ああ、そうだ。『勇者になる』だ。
悔しくて、みっともなくて、暴れ回った。
掌の火傷を庇いながら、走った。
刃こぼれした剣で裂いたような痛みが取れない。永遠に痛みが取れないんじゃないかと思うくらい、痛かった。
窓の外を見ると、砂金をこぼしたような黒の空が広がっている。
全てがどうでもよくなった。
気がつけば、訓練場の前に居た。もしかすると、暴れ足りなかったのかもしれない。
訓練場の扉を開く――オレはそこで、
星を見たのだ。
剣の素振りをしている少女だった。
彼女の頭部には角があって、腰には尾も生えている。
見蕩れた。
身体が動かなくて、思考が停止していた。音が遠くへ行ってしまう。
見えていた世界がぐるりと回って、星しか見えなかった。
掴めない、星を見た。
子どもたちの笑い声が混ざり込み、徐々に世界が音を取り戻していく。
いつの間にか現れた同年代の少年少女が――身なりからして、貴族だろう――彼女に石を投げつけていた。
石が彼女の額にぶつかり、切れる。少女は一瞬だけ、体を震わせたが、素振りを続ける。血が流れていて、唇を痛々しく噛んでいる。なのに、それでも、素振りをやめなかった。
一滴の涙を流し、その瞳は強く輝く。
煌めく星々の奥には、決意が見えた。
オレはそれを、美しいと感じてしまったのだ。
もう一度、石を投げつけられても、まだやめない。やめないのだ。
石がぶつかる度に、彼女は涙を流した。
その頃だろうか。オレの心の底に、何かが生まれた。
怒りだ。
美しいモノを汚す奴らを、許せなかった。お前たちが一歩も及ばないくらい、美しいのに。
何故、何故そんなことが出来るんだと。
掌の火傷を忘れて、
『――おい!!』
オレは吠える。
貴族の子どもたちが、散っていく。
その時、王の側近が現れた。
彼は慌てていて、いとも簡単に星を捕まえてしまった。
行ってしまう! オレはとっさに、こう言ったのだ。
『煌めく星のような君! 名前を教えてほしい!』
脇に抱えられた彼女は、キョトンとした表情を見せた。
そして、『リリス……』と呟いて、小さく手を振る。
行ってしまった。消えてしまった。
いつの間にか、オレは自分の心臓を抑えていた。灼かれた掌で、心臓を抑えていた。
心の底から何か出てきそうで、それを押しとどめるために。
だけど、結局、出てきてしまう。
底で渦巻いていた夜が、白んだ空に溶けて消えた。朝日が顔を出すように、照らされる。
もう一度、星を見たいと。
……勿論、石を投げていた奴らは、オレが成敗した。
下級貴族の子どもらを怪我させたことは、大した問題にならなかった。いま思えば、オレが上級貴族だからだ。
だが、父上にはたっぷりと叱られた。しばらくの外出禁止令まで付いてきた。
オレは、まだかまだかと、外に出られる日を待ちわびていた。
外出が許された後。
リリスに会えないかと、これ見よがしに王城を散歩していた。
すると、王とリリスが一緒にいる場面に、鉢合わせる事が出来たのだ。
何事かと様子を伺っていたのだが、リリスはオレに気がついた。オレのことを覚えてくれていたらしい。
メルキセデク王は、『内緒だよ』と、彼女の紹介をしてくださった。
彼女は、王の子だという。それは、王の側近たちも知らないことだった。
その時に、彼女が教えてくれたのが、生まれについてだ。
どこか、安心したような表情の王を尻目に、オレたちはよく遊んだのだった。
しばらくして、ウェルバインド領に戻る日がやって来る。
王の脚に隠れながら、手を振った彼女――決意が生まれた。
あの小さな手を、星空のような美しい瞳を護りたいと。
そうしてオレは、ボレアス騎士団に入団することを決めたのだ。
……騎士団長として就任した直後、彼女が戦姫として部下になるとは思わなかったが。
なんて、なんて浅いのだろう。オレは。
――思い返してみれば、浅ましい男だ。
今もそれは、変わっていない。
火の粉が爆ぜる音がする。揺らめく焔の奥を覗いた。
――ああ、オレが映っている。
聖剣に灼かれたオレ。部下に避けられるオレ。父上を嘲弄するオレ。勇者に嫉妬した、オレ。
傲慢で、器が小さくて、嫉妬深い。
オレに、騎士である資格は、なかったのだ。
成し遂げられない者を嫌う理由。
それは、勇者に選ばれなかった『バルムンク・ウェルバインド』を、憎んでいるからだ。
ようやく……ようやく、自分自身を理解した。
オレは、オレ自身を憎んでいたのだ。
――ガサリと。
草木が揺れる。人間の足音。
オレは折れた槍に手を添え、振り返った。
「誰だ?」
「あっ……バルムンク……? ッ! 怪我ですか!?」
姫様だった。何故ここに?
駆け寄ろうとした姫様を、手で制す。
彼女は水浴びをしていたのか、薄い布一枚を肌に当てていた。布は水分を吸って張り付き、お体の丸みが露わになりかけている。
「姫様!? 構いません、返り血です。それよりその、お体を……」
「す、すいません。その、近くで水浴びを。……火が見えたものですから、バルムンクかなって……あっ、予言で、近くにバルムンクがいるって分かってて、それで……」
矢継ぎ早に口を動かし――顔を赤らめた彼女は、木陰に身体を隠す。
「……こちらこそ、単独行動をしてしまい申し訳ありません。ですが、護衛を付けてください……男連中とはいかなくとも、メルルを呼ぶとか……」
「私一人でも……大丈夫ですよ?」
今夜は冷える。そのお声が震えていた。
そうだ。姫様一人でも、問題ないのだ。彼女は強い。オレが護らなくとも――。
「――お寒いでしょう。オレは血生臭いので、離れてあちらを向いておきます。どうぞ、火の前に」
椅子から立ち上がり、懐のハンカチーフを探した。
……あった。血に濡れていなくて、本当に良かった。
指先で汚さないように、椅子に敷く。慎重にだ。
よし、問題ないな。
視界から焚き火を外して、対角の地面に座り込んだ。
背中に焔の熱さを感じる。
すぐに、椅子の軋む音が聞こえた。
続けて、布を伸ばす音がする。
「お寒くはないですか?」
「うん……大丈夫、……です」
なんと言うか迷った。
「そう、ですか」
しばらく、口を開くことはなかった。
薪が大きく弾けて、
「えっと……バルムンク……?」
姫様が口を開いた。
「いかがなさいましたか?」
「先日は、ごめんなさい……あなたの気持ちを、考えていませんでした」
「いえ! そんな……謝られないでくださ――失礼しました」
姫様が謝られることなど無いと。思わず振り向きかけて、すぐに視線を戻す。尻目に一瞬、姫様のお体が映ったが、すぐに忘れることにする。
「あなたが……謝られる道理など無いのです。全て、自分の責任です」
「ううん……そんなこと……」
また、静かになった。
何か話題を――話題を探したい。だが、今のオレでは、何も出てこなかった。
そんな中、またもや姫様が口を開く。
「その……ええと……皆さんのお耳に入れる前に、相談したいことが……」
なんの話だろうか。
『戦士の里』での夜を思い出す。
「……私、確信に近いことがあるんです。水の四天王も、地の四天王も、私と同じ角を持っていた。だから彼らは、勇者一行の前に現れるんじゃなくて、私の前に現れるんじゃないかって。それなら、私はここで――」
ここで置いていってほしい、とでも言いたいのだろう。
「何を、言っているんです……」
「きっと、私の生まれは、本当の父は――」
あの夜。
彼女から伝えられた言葉の続き。
その時から、思っていた事なのだろう。
だけど。
「生まれなど、関係ないでしょう!?」
最後まで言わせたくなくて、姫様に大声を上げてしまった。
息を呑んだ音で、目が覚める。
「申し訳ありません。大声をあげてしまって……。あなたの両親は、王です。そして、第二王姫様なのです」
オレは姫様に、王姫様のことを伝える覚悟をした。
「でも……」
言語がまとまらない。だけど今、言わなければならない。
あなたは、魔物ではない。そう思わないでほしい、と。
オレは、言葉を捲し立てる。
「第二王姫様は、あなたを逃がすために、命を懸けたのです。……申し訳ありません。勝手ながら、調査させていただきました。あなたのお母様のご遺体は、『戦士の里』の森で、発見されたのです。状況から考えると――お母様は、魔王領から王国まで、あなたを届けようとしたのでしょう。途中で力尽きてしまったようでしたが、親として、最後まで全力を尽くしたのです! あなたは、魔物なんかじゃない。人の親じゃなければ、そこまでするものか――! いや、しない! ついには、命を狙うなど――! そんなもの、親では――!」
また、姫様の息を呑む音。
――勝手な行動をしてしまった後悔が、オレを襲う。
だけど、言わなければならなかったのだ。
「申し訳ありません……言葉が上手く、まとまらなくて……ですが!」
オレは、自身の腿を殴った。なんて自己満足だ。
無意味な自己満足を、いくつ重ねようとするのだ。
「たとえ、たとえそうでも、オレはあなたを――!」
あなたを――なんだ?
「……ありがとうございます。ごめんなさい、戦士の里から、どうにも胸騒ぎがしていて」
彼女の言葉から、感情が無くなったかのように思えた。
…………話すべきでは、無かった。
「……いえ。申し訳、ありません」
また、静かになった。
だがすぐに、物音がする。椅子から立ち上がった音。
……当然だ。
オレのような人間はもう、必要ない。
彼女は去ってしまうだろう。
オレは、俯くことしかできない。
去って行く足音を、受け入れることしかできない。
だが、彼女の足音は、オレの背後まで移動した。
その腕が、オレを抱いた。
「姫様……? 汚いですよ、離れてください」
「……嫌です」
何も、言えなかった。
口を開けるが、言葉が出てこない。
「ねえ……バルムンク? なんて、言おうとしたんですか?」
「なんて……とは?」
「……あなたを、なんですか?」
耳に入るそのお声が、脳髄を震わせる。
香る彼女の甘い匂いが、思考を奪わせる。
「あ――オレは、あなたを――護ります、と」
「……どうして? 騎士だから?」
どうして。
否。オレに、騎士である資格はない。
「――いえ、私にはもう、騎士である資格はない。ないのです」
「騎士でない、なら……なぜ、私を護ってくれるのですか?」
――――。
「――あ、オレは、オレは……」
言い淀んだ。
オレは――。
心の底を探した。黒く、泥だらけの心の中を両手で探る。
爪先を黒く染め上げながら。
まるで、玩具箱の隅を覗く少年のように。
きらりと光るモノがあった。
――輝く星があった。
少年は、星を両手で握りしめる。
それを胸に近づけた。
心の底から浮き上がる感情――これを、なんと言うのだろう。
ふと、幼き日の記憶が、閃光のように駆け抜けた。
そこには、オレと……母上と、父上?
優しげな笑みを湛え、腕を伸ばす二人。
その腕は、オレを抱く。温もりを感じて――こんなひと言が聞こえた。
『愛しているよ』
と。
口が、動く。
「愛……」
自分でも気がつかないくらい、小さい声で呟いた。
そうか。これは、愛なのだ。
目の前に、少年が立っている。
幼き日のオレが、立っている。
『もう自分自身を憎まなくてもいい』
そう言っている気がした。
与えられた、『愛』という単語を、反芻する。
姫様は動揺したかのように、腕をビクッと震わせた。
「――姫様?」
その腕が解かれる。
「え、あ、あの、私も……――」
――――。
耳を澄ませた――魔物か?
遠くから声が聞こえる。
姫様~? という声が聞こえる。
「私も、バルムンクを――!」
オレの正面。木立から顔を出したのは、メルルだった。
「お召し物を忘れてますよ~……ぎゃぁっ!? お邪魔だった!? ご、ごめん! 本当にごめん!!」
彼女は、衣服を――姫様のものだ――中空にばらまいて、木陰に引っ込んだ。
「――おい!?」
完全に散らばる前のそれを、キャッチする。
「落として汚したらどうする……」
深い溜息をついた。
困り顔のメルルが再び顔を出して、舌を出す。
続けて、勇者とゴンザレスの声が聞こえてきた。
「メルル~?」「あ。火です!」
暗闇から走ってくる二人組。徐々に、暗黒の中から彼らの輪郭が見えてくる。
――そうだ。メルルが姫様の衣服を持ってきたということは、姫様は今、裸だ。
彼女の身体の丸みが思い起こされる。
急いでマントを広げた――瞬間、メルルが勇者の顔面に拳を叩き込んだ。
中空で縦に三回転はする勇者の肉体。何事かと驚愕するゴン――すぐに察したのか、彼は顔を手で隠して、滑るように蹲った。
「ウギャアアアアアア!!」
「オイラは何も見てない、オイラは何も見てない、オイラは何も見てない……」
肩で息をするメルルは、勇者を睨み付けた。
一気に騒がしくなった。
ふと、声が出る。
「……はは」
――ああ。なんだか、拍子抜けだ。
持っている衣服に気がついて、顔を向けないよう、背後の姫様に差し出す。
「姫様」
「…………」
彼女は無言で受け取り――何故か、力強くだ――テキパキと着替える……音がする。
勇者の叫び声と、メルルの怒声。怯えるゴン。
「……もう、こっちを向いてもいいですよ」
それではと、姫様に向き合う。
彼女は顔を赤らめて、下唇を噛み、衣服の裾を両手で掴んでいる。
その眼は、オレを睨んでいた。
喧噪を背負いながら、姫様に尋ねた。
「姫様、先ほどはなんと言おうと?」
赤色が深まっていく。目蓋を閉じ、眉が歪んでいった。
「もう! 何でもないです!!」
語気を強めて、肩を怒らせる。
そのまま、ズンズンと足音を立てて、先ほど来た方向に向かってしまわれた。
急いで火に土をかけ、消化する。
「姫様?」
「もう!!」
どうしたのだ。
だけど、やっと、オレの中の感情に決着を付けることができた。
オレは、姫様を愛している――。
□ □ □
オレが戦っていた場所から、小半刻歩いた場所。
勇者たちは、『ギルレモ村』で野営をしていた。
焚き火に照らされながら、情報共有を行う。
……姫様の機嫌が悪そうだった。やはり、オレの情報を伝えるべきではなかった。
彼らがウェルバインド家で朝食を摂っていたときだ。
突如、メルルに神託が下りたという。
内容は、日が昇る頃、『ギルレモ村』と『アンドリュ村』に魔王軍が侵攻すると。
『アンドリュ村』にオレが向かうことまで見えていたようだ。
合流することも考えていたが、『ギルレモ村』には魔物の群れしか見えなかった。
侵攻には、魔王軍の者が群れを統率することが多い。だが、群れの長だけが見えなかった。
竜魔四天王、またはその眷属が関与している可能性が高く、数が大規模だったため、勇者一行の戦力を『ギルレモ村』に注力させたという。
戦力を偏らせたことについて、メルルに頭を下げられた。
「いや、謝るな。正しかったと思う。オレのところは数が少なかったから、なんとかなった」
紙一重ではあったが、それを口にはしない。
「それより、村人たちは無事か? 『アンドリュ村』の人たちは、既に退避していたようだったが……」
答えたのは、ゴンだ。
「オイラたちが向かっている最中、たくさんの馬車で退避していました。魔物の侵攻があった際は、全てを投げ捨ててでも逃げなさい。……事前に、領主様がそう命じていたそうです。そのために、馬車と馬を多く支給していたそうで」
――父上が?
勇者が引き継ぐ。
「朝にご同席されたウェルバインド公に聞いたんだ。ずっと前からそうしてるんだってさ。『民は、領地の宝だ』とも言ってた。討伐隊も民の一部。喪いたくないから、戦うより逃げることを優先させている――って。あと、これはイゾルダさんが言っていたことなんだけど、魔物の侵攻で村が潰れてしまったとき、ウェルバインド公が私財を擲って、街に住まわせてるらしい」
――驚いた。
その判断が正しいとは思えない。だが、やりたいことは分かった。
自分自身に向き合えた直後だからか、やっと、父上の事を理解できた気がする。
「そう、だったか……。それで、竜魔四天王は倒したのか?」
勇者は肩を竦める。
「いいや……群れを先導していたのは、竜魔四天王の眷属――風の児の眷属だった。『魔力風』っていう、魔力を吸収する上級の風魔法を使ってくる」
風の眷属の特徴を聞くと、それは翠色の球体で、球の周りに風を纏っていると。
「了解した。複数体いる可能性を考慮して、朝日が昇るまでは待機しよう」
全員が頷く。
先ほど姫様からお聞きした、四天王と眷属が姫様の前に現れること。それが本当なら、次も姫様を狙う。
……オレのやることは変わらない。
彼女を、愛しているから護る。
それがオレの、『バルムンク・ウェルバインド』としての使命だ。
決意を胸に秘めた。
――光だ。
オレの胸に付けた結束の紐飾りの水晶が、輝いている。
メルルが、ゴンが、姫様が、驚くように見つめた。
勇者だけが、それを安心したような瞳で見つめている。
戦士の里でゴンの紐飾りが輝いた時と同じ……。
暗闇を裂くような光は、胸に吸い込まれていく。
漏れないように、胸を押さえる。
光は、心に――泥に侵された底を、照らした。
憎悪も、嫉妬も、傲慢も。全て、オレのモノだ。オレ自身のモノなのだ。
全てが『バルムンク・ウェルバインド』なのだ。
――ああ。ひとつ。ひとつだけ、彼に言わなければならない事がある。
絶対に口に出さないと誓っていたことだ。
だから、口が滑らかに動くことに驚きを隠せない。
「勇者」
「ん? どうした、バルムンク」
彼は話しかけられたことに、意外な顔をしていた。
「お前を見つけた大樹の森。あのとき、姫様を護ってくれて……ありがとう。イサム」
オレは、やっと彼の名前を口にした。口に出来たのだ。
「そして、今まで『勇者』に当たり、邪険にしてすまなかった。許してくれ」
立ち上がって、頭を下げた。
これも、自己満足だ。
彼が許さなくとも無理はない。
だけど、言わなければならなかったのだ。
オレの心の傷が癒えた訳ではない。でも――受け入れることはできた。
「――――」
イサムからの返答は無い。
「…………」
駄目、だったか。
仕方がない。オレの過去の言動は、消えないのだから。
目を伏せる。
すると、メルルの声が聞こえた。
「ね、イサム。良かったね」
――?
何事かと顔を上げると、イサムが俯いていた。その背に、メルルが手を添えている。
彼は静かに肩を振るわせながら、涙を零していた。
「お、おいイサム。どうした? 嫌だったか? 嫌だったよな、すまん……。なら、今まで通り、役職名で――」
涙を手で拭った彼は、顔を上げた。
「んいや……嬉しくてさ、また、名前を呼ばれて。――ありがとう、バルムンク。これからもよろしくな」
イサムは手を伸ばした。
ふと、掌の火傷を見る。もう、痛くはなかった。
その手を強く掴む。
「――ああ。よろしく頼む」
オレたちは真に、仲間となった。
「ところでイサム。また、と言ったが……以前はいつ呼んだのだったか?」
疑問だった。
名前だけは呼ぶものかと、自分で言うのも何だが、頑固を押し通していたはずだ。
思い出を探るように、勇者は言った。
「あー……あれだよ、戴剣式の時」
「そうだったか……」
王の前だ。そうだったのかもしれない。
「ま、そんなこといいだろ? てか、さっきメルルがワーキャー言ってたけど、姫様と何してたんだよ?」
イサムは水差しを傾けながら、姫様とオレの顔を交互に見る。
固唾を飲み込むゴンの嚥下音。
目を細めてイサムを見るメルル。『ジュノ高原』に住む狐のようで、愉快な顔だ。
姫様は慌てふためいた。右手に持っている水差しから水が溢れ、零している。
「え!? い、いえそんな、何も……。ねぇ? バルムンク?」
オレも、イサムに倣って喉を潤す。
ああ、何もなかった。
姫様に相談された件については、彼女の口から話した方がいいだろう。
オレとしては、自分の感情に名前を付けられただけだ。
「ええ。仰る通りです。ただ――」
ほっと胸に手を当て、一息を付く姫様。
イサムの目を見て、オレは口を開く。
「ただ、オレが姫様を愛しているということが、分かっただけだ」
もう一度、喉を鳴らしながら水を飲む。
なんだ? やけに水が美味く感じるな。戦闘の後、何も飲み食いしていなかったというのはあるが……。これはおそらく、メルルの水魔術で出した飲料用の水だろう。
優秀な魔導師の水魔術から生み出された水は、井戸水などとは比べものにならない質を誇ると聞く。
今のオレの肉体状況だと、有り難いものだな。
水差しが空になってしまった。
「すまない、メルル。もう一杯くれ」
水差しの奥を覗いてから、メルルに顔を向ける。
が、メルルは口を大きく開けていた。
「……? どうした?」
怪訝に思ったオレは、周りを見る。
ゴンとイサムはメルルと同じ表情をしている。
姫様は、今までに見たことがないような、赤い顔をしていた。
「なんだ? みんな、変な顔をして……メルル、水を頼む」
もう一度、水差しを差し出す。
「お、おう……」
ようやく口を閉じたメルルが、水差しに水魔術を注ぐ。
「助かる……」
ああ、喉が潤う。一息で飲み干した。
酒はさっぱり分からんが、飲料水については分かる気がするな。
世界を平和にしたら、商売に手を広げてみるのも面白いかもしれん。近々、相談してみるか。
時間も時間だ。休息を提案しよう。
「さて、そろそろ休息を取ろう。姫様はお疲れでしょう。オレたちが見張っておくので、お休みください。イサム、ゴン。半刻交代でいいか?」
男連中に言う。メルルも……休んで貰っていいだろう。
「お、おお」
「…………あ、はい」
オレは腕を伸ばす。断裂した筋繊維が悲鳴をあげる。
忘れていた。
「ぐっ……姫様、お休みになるまえに、回復魔術をかけていただけますか……? 戦いの最中、やられていたことを失念していました」
顔を赤くしたまま、彼女は静かに頷く。
そして、上級の回復魔術をかけてくださった。
筋繊維に、上級は勿体ないのでは……? と言いたがったが、余計な事は言わないでおく。
「ありがとうございます――助かりました。……ん? なんだイサム。言いたいことがあるなら言え」
イサムはまだ口を開けている。
「え? 嘘?」
「何がだ」
「いやいやいや、だってバルムンクお前、愛してるって……」
ああ、言ったとおりだろう。
「そうだが」
「ええ~……え? ってことは……?」
イサムは姫様に顔を向けるが。
姫様はふるふると顔を振った。
彼は椅子から転げ落ちた。
「【なんてこった】……」
よく分からない単語を言い放つ。
悪口を言われた気分だ。
「……どんな意味だ? それは」
「こっちの台詞だよ……」
そう勇者は呟いた。
いつの間にか、メルルが姫様の頭を抱きしめている。
姫様の角が、豊満な胸に埋もれる。
珍しい光景だった。メルルはいつも、必要以上に姫様には近寄らない。だが初めて、仲の良い友人同士のようなやり取りを見せていた。
「かわいそうに。かわいそうに……お姉さんが話聞いてあげるからね……」
「うぅ~! メルルさぁん……!」
と、二人で天幕の中に入っていく。
男だけが、焚き火の前に残った。
「……バルムンクさん、聞きたいんですけど」
ゴンに問われ、答える。
「なんだ?」
「愛してるって、その……交際したいとか、その、そうなりたいとかって意味ですか?」
四つん這いとなっているイサムが小声で言う。
「よく言ったぞ、ゴン」
聞こえているぞ。
交際。つまり、恋慕の心があるかという事か。
なるほど、こいつらが騒いでいたのはそれか。
合点がいった。
だが、オレの中ではそういった意味ではない……気がする。何というのだろう。またもや、言葉が見つからない。
口に出して、整理をしてみる。どうやらオレは、言葉に出すのが苦手なようだから。
「そうか。愛とは、色々な意味があるのか……」
頷く二人。
「そ、そうっすよ! 例えばイサムさんなんか、もうメルルさんとそんな感じじゃないっすか! それと比べるとどうですか!?」
え? ゴンってそういうの分かるの? と呟くイサムを尻目に考える。
それは――否定することはできない。間違いなく、姫様は魅力的な女性だ。欲望が湧くことも……ある。
――幼い頃、彼女という星を魅た時はまた、別の意味だったように思える。
……数刻前に、姫様に抱かれて思い起こされたのは、母上と父上の情景だった。
「ううむ……当然、姫様は魅力的なお方だ。しかしこの愛は、また別のモノのような気がする。そうだな……」
そうだ。
言葉に出来る。
「――ああ、『家族』だ。当然、王族になりたいだのと言うつもりはない。だが、彼女とは『家族』になりたいのだと思う。……何なのだろうな、この気持ちは。――いや、不敬だった。忘れてくれ」
何を失礼なことを口走ってしまったのだ。
こいつらの前だから、かもしれない。
「あー……」
「もう段階すっ飛ばしてるんですね」
納得したような表情を見せられた。
「――? 意味が分からんぞ」
大きく溜息をつくイサム。
ゴンもそれを真似た。
「バルムンクってさ……結構鈍感な奴だよな……」
「ですね」
「おい、貴様ら……」
イサムは地面に寝転びながら目を閉じた。
「まあいいか……近々、姫様の方からアプローチされるだろ。……しかし、なんでこの歳になって【シュウガクリョコウ】の夜みたいなことしてるんだ、俺たちは……」
また、意味の分からない単語を放った。
青く、冷えた空気がオレの喉を震わせる。
それもそのはずだ。
オレの体は、血に染まっている。
単眼から槍を引き抜き、肺に取り込んだ鉄の匂いを絞り出すように、細い息を吐いた。 魔力器官が、悲鳴を上げる――限界だった。
群れのほうは大した事がなかった。
だが、単眼族は違う。圧倒的な質量差があった。
棍棒との剣戟。一振りで、オレの筋肉が断裂し、使い物にならなくなった。
こいつが眷属ではなくて良かった。もし、眷属であれば、オレにトドメはさせない。
ブランウェンから借りた槍は二つに折れている。
……いや、槍の問題じゃない。
そうだ。オレに聖剣は扱えないからだ。
――溜息をつく。
単騎で竜魔四天王とやり合おうとした勇者は、いったいどんな努力を重ねたのだろう。 オレが勇者に選ばれなかった理由――それは、なんだったのだろう。
……分かっている。
その理由は既に、分かっている。
目を背けていた。
直視してしまうと、すべてが壊れる気がして。
改めて、村を回る。
井戸から水を汲んで、頭から被る。
戦闘の興奮が冷め切らないのか、不思議と寒さは感じなかった。
村には、人っ子ひとり居ない。
住んでいた痕跡はあるが、血痕はない。おそらく、侵攻の直前で退避できていたのだろう。
使われていたであろう炉跡を使って、念のために焚き火の準備を始める。体を冷やしてしまえば、彼らに心配されてしまうから。
……姫様に、心配されてしまう――果たして、そうなのだろうか。
オレは騎士だ。主君である、姫様を護るための。
彼女を護るためなら、どんな力でも捻り出せた。限界など、越えてみせた。
だが。
今、魔物を討伐するために、全力を出せたのだ。
今のオレは、騎士ではないのに。
護るべき主君は居ないのに。
――――何故、オレは、姫様を護っていたのだろう。
適当な椅子に、腰を下ろす。
夜空を見上げて、想い返す。
十年以上も前のことだ。
建国祭の日。
メルキセデク王に招待され、オレは父上と共に、王城で数日間を過ごす事となった。
父上と王は、旧知の仲だ。これを好機と見なし、オレは父上に頼み込んで、聖剣に触れたのだ。なんと言ったかな。――ああ、そうだ。『勇者になる』だ。
悔しくて、みっともなくて、暴れ回った。
掌の火傷を庇いながら、走った。
刃こぼれした剣で裂いたような痛みが取れない。永遠に痛みが取れないんじゃないかと思うくらい、痛かった。
窓の外を見ると、砂金をこぼしたような黒の空が広がっている。
全てがどうでもよくなった。
気がつけば、訓練場の前に居た。もしかすると、暴れ足りなかったのかもしれない。
訓練場の扉を開く――オレはそこで、
星を見たのだ。
剣の素振りをしている少女だった。
彼女の頭部には角があって、腰には尾も生えている。
見蕩れた。
身体が動かなくて、思考が停止していた。音が遠くへ行ってしまう。
見えていた世界がぐるりと回って、星しか見えなかった。
掴めない、星を見た。
子どもたちの笑い声が混ざり込み、徐々に世界が音を取り戻していく。
いつの間にか現れた同年代の少年少女が――身なりからして、貴族だろう――彼女に石を投げつけていた。
石が彼女の額にぶつかり、切れる。少女は一瞬だけ、体を震わせたが、素振りを続ける。血が流れていて、唇を痛々しく噛んでいる。なのに、それでも、素振りをやめなかった。
一滴の涙を流し、その瞳は強く輝く。
煌めく星々の奥には、決意が見えた。
オレはそれを、美しいと感じてしまったのだ。
もう一度、石を投げつけられても、まだやめない。やめないのだ。
石がぶつかる度に、彼女は涙を流した。
その頃だろうか。オレの心の底に、何かが生まれた。
怒りだ。
美しいモノを汚す奴らを、許せなかった。お前たちが一歩も及ばないくらい、美しいのに。
何故、何故そんなことが出来るんだと。
掌の火傷を忘れて、
『――おい!!』
オレは吠える。
貴族の子どもたちが、散っていく。
その時、王の側近が現れた。
彼は慌てていて、いとも簡単に星を捕まえてしまった。
行ってしまう! オレはとっさに、こう言ったのだ。
『煌めく星のような君! 名前を教えてほしい!』
脇に抱えられた彼女は、キョトンとした表情を見せた。
そして、『リリス……』と呟いて、小さく手を振る。
行ってしまった。消えてしまった。
いつの間にか、オレは自分の心臓を抑えていた。灼かれた掌で、心臓を抑えていた。
心の底から何か出てきそうで、それを押しとどめるために。
だけど、結局、出てきてしまう。
底で渦巻いていた夜が、白んだ空に溶けて消えた。朝日が顔を出すように、照らされる。
もう一度、星を見たいと。
……勿論、石を投げていた奴らは、オレが成敗した。
下級貴族の子どもらを怪我させたことは、大した問題にならなかった。いま思えば、オレが上級貴族だからだ。
だが、父上にはたっぷりと叱られた。しばらくの外出禁止令まで付いてきた。
オレは、まだかまだかと、外に出られる日を待ちわびていた。
外出が許された後。
リリスに会えないかと、これ見よがしに王城を散歩していた。
すると、王とリリスが一緒にいる場面に、鉢合わせる事が出来たのだ。
何事かと様子を伺っていたのだが、リリスはオレに気がついた。オレのことを覚えてくれていたらしい。
メルキセデク王は、『内緒だよ』と、彼女の紹介をしてくださった。
彼女は、王の子だという。それは、王の側近たちも知らないことだった。
その時に、彼女が教えてくれたのが、生まれについてだ。
どこか、安心したような表情の王を尻目に、オレたちはよく遊んだのだった。
しばらくして、ウェルバインド領に戻る日がやって来る。
王の脚に隠れながら、手を振った彼女――決意が生まれた。
あの小さな手を、星空のような美しい瞳を護りたいと。
そうしてオレは、ボレアス騎士団に入団することを決めたのだ。
……騎士団長として就任した直後、彼女が戦姫として部下になるとは思わなかったが。
なんて、なんて浅いのだろう。オレは。
――思い返してみれば、浅ましい男だ。
今もそれは、変わっていない。
火の粉が爆ぜる音がする。揺らめく焔の奥を覗いた。
――ああ、オレが映っている。
聖剣に灼かれたオレ。部下に避けられるオレ。父上を嘲弄するオレ。勇者に嫉妬した、オレ。
傲慢で、器が小さくて、嫉妬深い。
オレに、騎士である資格は、なかったのだ。
成し遂げられない者を嫌う理由。
それは、勇者に選ばれなかった『バルムンク・ウェルバインド』を、憎んでいるからだ。
ようやく……ようやく、自分自身を理解した。
オレは、オレ自身を憎んでいたのだ。
――ガサリと。
草木が揺れる。人間の足音。
オレは折れた槍に手を添え、振り返った。
「誰だ?」
「あっ……バルムンク……? ッ! 怪我ですか!?」
姫様だった。何故ここに?
駆け寄ろうとした姫様を、手で制す。
彼女は水浴びをしていたのか、薄い布一枚を肌に当てていた。布は水分を吸って張り付き、お体の丸みが露わになりかけている。
「姫様!? 構いません、返り血です。それよりその、お体を……」
「す、すいません。その、近くで水浴びを。……火が見えたものですから、バルムンクかなって……あっ、予言で、近くにバルムンクがいるって分かってて、それで……」
矢継ぎ早に口を動かし――顔を赤らめた彼女は、木陰に身体を隠す。
「……こちらこそ、単独行動をしてしまい申し訳ありません。ですが、護衛を付けてください……男連中とはいかなくとも、メルルを呼ぶとか……」
「私一人でも……大丈夫ですよ?」
今夜は冷える。そのお声が震えていた。
そうだ。姫様一人でも、問題ないのだ。彼女は強い。オレが護らなくとも――。
「――お寒いでしょう。オレは血生臭いので、離れてあちらを向いておきます。どうぞ、火の前に」
椅子から立ち上がり、懐のハンカチーフを探した。
……あった。血に濡れていなくて、本当に良かった。
指先で汚さないように、椅子に敷く。慎重にだ。
よし、問題ないな。
視界から焚き火を外して、対角の地面に座り込んだ。
背中に焔の熱さを感じる。
すぐに、椅子の軋む音が聞こえた。
続けて、布を伸ばす音がする。
「お寒くはないですか?」
「うん……大丈夫、……です」
なんと言うか迷った。
「そう、ですか」
しばらく、口を開くことはなかった。
薪が大きく弾けて、
「えっと……バルムンク……?」
姫様が口を開いた。
「いかがなさいましたか?」
「先日は、ごめんなさい……あなたの気持ちを、考えていませんでした」
「いえ! そんな……謝られないでくださ――失礼しました」
姫様が謝られることなど無いと。思わず振り向きかけて、すぐに視線を戻す。尻目に一瞬、姫様のお体が映ったが、すぐに忘れることにする。
「あなたが……謝られる道理など無いのです。全て、自分の責任です」
「ううん……そんなこと……」
また、静かになった。
何か話題を――話題を探したい。だが、今のオレでは、何も出てこなかった。
そんな中、またもや姫様が口を開く。
「その……ええと……皆さんのお耳に入れる前に、相談したいことが……」
なんの話だろうか。
『戦士の里』での夜を思い出す。
「……私、確信に近いことがあるんです。水の四天王も、地の四天王も、私と同じ角を持っていた。だから彼らは、勇者一行の前に現れるんじゃなくて、私の前に現れるんじゃないかって。それなら、私はここで――」
ここで置いていってほしい、とでも言いたいのだろう。
「何を、言っているんです……」
「きっと、私の生まれは、本当の父は――」
あの夜。
彼女から伝えられた言葉の続き。
その時から、思っていた事なのだろう。
だけど。
「生まれなど、関係ないでしょう!?」
最後まで言わせたくなくて、姫様に大声を上げてしまった。
息を呑んだ音で、目が覚める。
「申し訳ありません。大声をあげてしまって……。あなたの両親は、王です。そして、第二王姫様なのです」
オレは姫様に、王姫様のことを伝える覚悟をした。
「でも……」
言語がまとまらない。だけど今、言わなければならない。
あなたは、魔物ではない。そう思わないでほしい、と。
オレは、言葉を捲し立てる。
「第二王姫様は、あなたを逃がすために、命を懸けたのです。……申し訳ありません。勝手ながら、調査させていただきました。あなたのお母様のご遺体は、『戦士の里』の森で、発見されたのです。状況から考えると――お母様は、魔王領から王国まで、あなたを届けようとしたのでしょう。途中で力尽きてしまったようでしたが、親として、最後まで全力を尽くしたのです! あなたは、魔物なんかじゃない。人の親じゃなければ、そこまでするものか――! いや、しない! ついには、命を狙うなど――! そんなもの、親では――!」
また、姫様の息を呑む音。
――勝手な行動をしてしまった後悔が、オレを襲う。
だけど、言わなければならなかったのだ。
「申し訳ありません……言葉が上手く、まとまらなくて……ですが!」
オレは、自身の腿を殴った。なんて自己満足だ。
無意味な自己満足を、いくつ重ねようとするのだ。
「たとえ、たとえそうでも、オレはあなたを――!」
あなたを――なんだ?
「……ありがとうございます。ごめんなさい、戦士の里から、どうにも胸騒ぎがしていて」
彼女の言葉から、感情が無くなったかのように思えた。
…………話すべきでは、無かった。
「……いえ。申し訳、ありません」
また、静かになった。
だがすぐに、物音がする。椅子から立ち上がった音。
……当然だ。
オレのような人間はもう、必要ない。
彼女は去ってしまうだろう。
オレは、俯くことしかできない。
去って行く足音を、受け入れることしかできない。
だが、彼女の足音は、オレの背後まで移動した。
その腕が、オレを抱いた。
「姫様……? 汚いですよ、離れてください」
「……嫌です」
何も、言えなかった。
口を開けるが、言葉が出てこない。
「ねえ……バルムンク? なんて、言おうとしたんですか?」
「なんて……とは?」
「……あなたを、なんですか?」
耳に入るそのお声が、脳髄を震わせる。
香る彼女の甘い匂いが、思考を奪わせる。
「あ――オレは、あなたを――護ります、と」
「……どうして? 騎士だから?」
どうして。
否。オレに、騎士である資格はない。
「――いえ、私にはもう、騎士である資格はない。ないのです」
「騎士でない、なら……なぜ、私を護ってくれるのですか?」
――――。
「――あ、オレは、オレは……」
言い淀んだ。
オレは――。
心の底を探した。黒く、泥だらけの心の中を両手で探る。
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きらりと光るモノがあった。
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心の底から浮き上がる感情――これを、なんと言うのだろう。
ふと、幼き日の記憶が、閃光のように駆け抜けた。
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その腕は、オレを抱く。温もりを感じて――こんなひと言が聞こえた。
『愛しているよ』
と。
口が、動く。
「愛……」
自分でも気がつかないくらい、小さい声で呟いた。
そうか。これは、愛なのだ。
目の前に、少年が立っている。
幼き日のオレが、立っている。
『もう自分自身を憎まなくてもいい』
そう言っている気がした。
与えられた、『愛』という単語を、反芻する。
姫様は動揺したかのように、腕をビクッと震わせた。
「――姫様?」
その腕が解かれる。
「え、あ、あの、私も……――」
――――。
耳を澄ませた――魔物か?
遠くから声が聞こえる。
姫様~? という声が聞こえる。
「私も、バルムンクを――!」
オレの正面。木立から顔を出したのは、メルルだった。
「お召し物を忘れてますよ~……ぎゃぁっ!? お邪魔だった!? ご、ごめん! 本当にごめん!!」
彼女は、衣服を――姫様のものだ――中空にばらまいて、木陰に引っ込んだ。
「――おい!?」
完全に散らばる前のそれを、キャッチする。
「落として汚したらどうする……」
深い溜息をついた。
困り顔のメルルが再び顔を出して、舌を出す。
続けて、勇者とゴンザレスの声が聞こえてきた。
「メルル~?」「あ。火です!」
暗闇から走ってくる二人組。徐々に、暗黒の中から彼らの輪郭が見えてくる。
――そうだ。メルルが姫様の衣服を持ってきたということは、姫様は今、裸だ。
彼女の身体の丸みが思い起こされる。
急いでマントを広げた――瞬間、メルルが勇者の顔面に拳を叩き込んだ。
中空で縦に三回転はする勇者の肉体。何事かと驚愕するゴン――すぐに察したのか、彼は顔を手で隠して、滑るように蹲った。
「ウギャアアアアアア!!」
「オイラは何も見てない、オイラは何も見てない、オイラは何も見てない……」
肩で息をするメルルは、勇者を睨み付けた。
一気に騒がしくなった。
ふと、声が出る。
「……はは」
――ああ。なんだか、拍子抜けだ。
持っている衣服に気がついて、顔を向けないよう、背後の姫様に差し出す。
「姫様」
「…………」
彼女は無言で受け取り――何故か、力強くだ――テキパキと着替える……音がする。
勇者の叫び声と、メルルの怒声。怯えるゴン。
「……もう、こっちを向いてもいいですよ」
それではと、姫様に向き合う。
彼女は顔を赤らめて、下唇を噛み、衣服の裾を両手で掴んでいる。
その眼は、オレを睨んでいた。
喧噪を背負いながら、姫様に尋ねた。
「姫様、先ほどはなんと言おうと?」
赤色が深まっていく。目蓋を閉じ、眉が歪んでいった。
「もう! 何でもないです!!」
語気を強めて、肩を怒らせる。
そのまま、ズンズンと足音を立てて、先ほど来た方向に向かってしまわれた。
急いで火に土をかけ、消化する。
「姫様?」
「もう!!」
どうしたのだ。
だけど、やっと、オレの中の感情に決着を付けることができた。
オレは、姫様を愛している――。
□ □ □
オレが戦っていた場所から、小半刻歩いた場所。
勇者たちは、『ギルレモ村』で野営をしていた。
焚き火に照らされながら、情報共有を行う。
……姫様の機嫌が悪そうだった。やはり、オレの情報を伝えるべきではなかった。
彼らがウェルバインド家で朝食を摂っていたときだ。
突如、メルルに神託が下りたという。
内容は、日が昇る頃、『ギルレモ村』と『アンドリュ村』に魔王軍が侵攻すると。
『アンドリュ村』にオレが向かうことまで見えていたようだ。
合流することも考えていたが、『ギルレモ村』には魔物の群れしか見えなかった。
侵攻には、魔王軍の者が群れを統率することが多い。だが、群れの長だけが見えなかった。
竜魔四天王、またはその眷属が関与している可能性が高く、数が大規模だったため、勇者一行の戦力を『ギルレモ村』に注力させたという。
戦力を偏らせたことについて、メルルに頭を下げられた。
「いや、謝るな。正しかったと思う。オレのところは数が少なかったから、なんとかなった」
紙一重ではあったが、それを口にはしない。
「それより、村人たちは無事か? 『アンドリュ村』の人たちは、既に退避していたようだったが……」
答えたのは、ゴンだ。
「オイラたちが向かっている最中、たくさんの馬車で退避していました。魔物の侵攻があった際は、全てを投げ捨ててでも逃げなさい。……事前に、領主様がそう命じていたそうです。そのために、馬車と馬を多く支給していたそうで」
――父上が?
勇者が引き継ぐ。
「朝にご同席されたウェルバインド公に聞いたんだ。ずっと前からそうしてるんだってさ。『民は、領地の宝だ』とも言ってた。討伐隊も民の一部。喪いたくないから、戦うより逃げることを優先させている――って。あと、これはイゾルダさんが言っていたことなんだけど、魔物の侵攻で村が潰れてしまったとき、ウェルバインド公が私財を擲って、街に住まわせてるらしい」
――驚いた。
その判断が正しいとは思えない。だが、やりたいことは分かった。
自分自身に向き合えた直後だからか、やっと、父上の事を理解できた気がする。
「そう、だったか……。それで、竜魔四天王は倒したのか?」
勇者は肩を竦める。
「いいや……群れを先導していたのは、竜魔四天王の眷属――風の児の眷属だった。『魔力風』っていう、魔力を吸収する上級の風魔法を使ってくる」
風の眷属の特徴を聞くと、それは翠色の球体で、球の周りに風を纏っていると。
「了解した。複数体いる可能性を考慮して、朝日が昇るまでは待機しよう」
全員が頷く。
先ほど姫様からお聞きした、四天王と眷属が姫様の前に現れること。それが本当なら、次も姫様を狙う。
……オレのやることは変わらない。
彼女を、愛しているから護る。
それがオレの、『バルムンク・ウェルバインド』としての使命だ。
決意を胸に秘めた。
――光だ。
オレの胸に付けた結束の紐飾りの水晶が、輝いている。
メルルが、ゴンが、姫様が、驚くように見つめた。
勇者だけが、それを安心したような瞳で見つめている。
戦士の里でゴンの紐飾りが輝いた時と同じ……。
暗闇を裂くような光は、胸に吸い込まれていく。
漏れないように、胸を押さえる。
光は、心に――泥に侵された底を、照らした。
憎悪も、嫉妬も、傲慢も。全て、オレのモノだ。オレ自身のモノなのだ。
全てが『バルムンク・ウェルバインド』なのだ。
――ああ。ひとつ。ひとつだけ、彼に言わなければならない事がある。
絶対に口に出さないと誓っていたことだ。
だから、口が滑らかに動くことに驚きを隠せない。
「勇者」
「ん? どうした、バルムンク」
彼は話しかけられたことに、意外な顔をしていた。
「お前を見つけた大樹の森。あのとき、姫様を護ってくれて……ありがとう。イサム」
オレは、やっと彼の名前を口にした。口に出来たのだ。
「そして、今まで『勇者』に当たり、邪険にしてすまなかった。許してくれ」
立ち上がって、頭を下げた。
これも、自己満足だ。
彼が許さなくとも無理はない。
だけど、言わなければならなかったのだ。
オレの心の傷が癒えた訳ではない。でも――受け入れることはできた。
「――――」
イサムからの返答は無い。
「…………」
駄目、だったか。
仕方がない。オレの過去の言動は、消えないのだから。
目を伏せる。
すると、メルルの声が聞こえた。
「ね、イサム。良かったね」
――?
何事かと顔を上げると、イサムが俯いていた。その背に、メルルが手を添えている。
彼は静かに肩を振るわせながら、涙を零していた。
「お、おいイサム。どうした? 嫌だったか? 嫌だったよな、すまん……。なら、今まで通り、役職名で――」
涙を手で拭った彼は、顔を上げた。
「んいや……嬉しくてさ、また、名前を呼ばれて。――ありがとう、バルムンク。これからもよろしくな」
イサムは手を伸ばした。
ふと、掌の火傷を見る。もう、痛くはなかった。
その手を強く掴む。
「――ああ。よろしく頼む」
オレたちは真に、仲間となった。
「ところでイサム。また、と言ったが……以前はいつ呼んだのだったか?」
疑問だった。
名前だけは呼ぶものかと、自分で言うのも何だが、頑固を押し通していたはずだ。
思い出を探るように、勇者は言った。
「あー……あれだよ、戴剣式の時」
「そうだったか……」
王の前だ。そうだったのかもしれない。
「ま、そんなこといいだろ? てか、さっきメルルがワーキャー言ってたけど、姫様と何してたんだよ?」
イサムは水差しを傾けながら、姫様とオレの顔を交互に見る。
固唾を飲み込むゴンの嚥下音。
目を細めてイサムを見るメルル。『ジュノ高原』に住む狐のようで、愉快な顔だ。
姫様は慌てふためいた。右手に持っている水差しから水が溢れ、零している。
「え!? い、いえそんな、何も……。ねぇ? バルムンク?」
オレも、イサムに倣って喉を潤す。
ああ、何もなかった。
姫様に相談された件については、彼女の口から話した方がいいだろう。
オレとしては、自分の感情に名前を付けられただけだ。
「ええ。仰る通りです。ただ――」
ほっと胸に手を当て、一息を付く姫様。
イサムの目を見て、オレは口を開く。
「ただ、オレが姫様を愛しているということが、分かっただけだ」
もう一度、喉を鳴らしながら水を飲む。
なんだ? やけに水が美味く感じるな。戦闘の後、何も飲み食いしていなかったというのはあるが……。これはおそらく、メルルの水魔術で出した飲料用の水だろう。
優秀な魔導師の水魔術から生み出された水は、井戸水などとは比べものにならない質を誇ると聞く。
今のオレの肉体状況だと、有り難いものだな。
水差しが空になってしまった。
「すまない、メルル。もう一杯くれ」
水差しの奥を覗いてから、メルルに顔を向ける。
が、メルルは口を大きく開けていた。
「……? どうした?」
怪訝に思ったオレは、周りを見る。
ゴンとイサムはメルルと同じ表情をしている。
姫様は、今までに見たことがないような、赤い顔をしていた。
「なんだ? みんな、変な顔をして……メルル、水を頼む」
もう一度、水差しを差し出す。
「お、おう……」
ようやく口を閉じたメルルが、水差しに水魔術を注ぐ。
「助かる……」
ああ、喉が潤う。一息で飲み干した。
酒はさっぱり分からんが、飲料水については分かる気がするな。
世界を平和にしたら、商売に手を広げてみるのも面白いかもしれん。近々、相談してみるか。
時間も時間だ。休息を提案しよう。
「さて、そろそろ休息を取ろう。姫様はお疲れでしょう。オレたちが見張っておくので、お休みください。イサム、ゴン。半刻交代でいいか?」
男連中に言う。メルルも……休んで貰っていいだろう。
「お、おお」
「…………あ、はい」
オレは腕を伸ばす。断裂した筋繊維が悲鳴をあげる。
忘れていた。
「ぐっ……姫様、お休みになるまえに、回復魔術をかけていただけますか……? 戦いの最中、やられていたことを失念していました」
顔を赤くしたまま、彼女は静かに頷く。
そして、上級の回復魔術をかけてくださった。
筋繊維に、上級は勿体ないのでは……? と言いたがったが、余計な事は言わないでおく。
「ありがとうございます――助かりました。……ん? なんだイサム。言いたいことがあるなら言え」
イサムはまだ口を開けている。
「え? 嘘?」
「何がだ」
「いやいやいや、だってバルムンクお前、愛してるって……」
ああ、言ったとおりだろう。
「そうだが」
「ええ~……え? ってことは……?」
イサムは姫様に顔を向けるが。
姫様はふるふると顔を振った。
彼は椅子から転げ落ちた。
「【なんてこった】……」
よく分からない単語を言い放つ。
悪口を言われた気分だ。
「……どんな意味だ? それは」
「こっちの台詞だよ……」
そう勇者は呟いた。
いつの間にか、メルルが姫様の頭を抱きしめている。
姫様の角が、豊満な胸に埋もれる。
珍しい光景だった。メルルはいつも、必要以上に姫様には近寄らない。だが初めて、仲の良い友人同士のようなやり取りを見せていた。
「かわいそうに。かわいそうに……お姉さんが話聞いてあげるからね……」
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と、二人で天幕の中に入っていく。
男だけが、焚き火の前に残った。
「……バルムンクさん、聞きたいんですけど」
ゴンに問われ、答える。
「なんだ?」
「愛してるって、その……交際したいとか、その、そうなりたいとかって意味ですか?」
四つん這いとなっているイサムが小声で言う。
「よく言ったぞ、ゴン」
聞こえているぞ。
交際。つまり、恋慕の心があるかという事か。
なるほど、こいつらが騒いでいたのはそれか。
合点がいった。
だが、オレの中ではそういった意味ではない……気がする。何というのだろう。またもや、言葉が見つからない。
口に出して、整理をしてみる。どうやらオレは、言葉に出すのが苦手なようだから。
「そうか。愛とは、色々な意味があるのか……」
頷く二人。
「そ、そうっすよ! 例えばイサムさんなんか、もうメルルさんとそんな感じじゃないっすか! それと比べるとどうですか!?」
え? ゴンってそういうの分かるの? と呟くイサムを尻目に考える。
それは――否定することはできない。間違いなく、姫様は魅力的な女性だ。欲望が湧くことも……ある。
――幼い頃、彼女という星を魅た時はまた、別の意味だったように思える。
……数刻前に、姫様に抱かれて思い起こされたのは、母上と父上の情景だった。
「ううむ……当然、姫様は魅力的なお方だ。しかしこの愛は、また別のモノのような気がする。そうだな……」
そうだ。
言葉に出来る。
「――ああ、『家族』だ。当然、王族になりたいだのと言うつもりはない。だが、彼女とは『家族』になりたいのだと思う。……何なのだろうな、この気持ちは。――いや、不敬だった。忘れてくれ」
何を失礼なことを口走ってしまったのだ。
こいつらの前だから、かもしれない。
「あー……」
「もう段階すっ飛ばしてるんですね」
納得したような表情を見せられた。
「――? 意味が分からんぞ」
大きく溜息をつくイサム。
ゴンもそれを真似た。
「バルムンクってさ……結構鈍感な奴だよな……」
「ですね」
「おい、貴様ら……」
イサムは地面に寝転びながら目を閉じた。
「まあいいか……近々、姫様の方からアプローチされるだろ。……しかし、なんでこの歳になって【シュウガクリョコウ】の夜みたいなことしてるんだ、俺たちは……」
また、意味の分からない単語を放った。
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