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限られたある世界と現実
時間×命×ニつの世界
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あれはたぶん第二の事件だった。
キーパーソンで大人っぽい女の人と私がキッチンで料理をしている時、嫌な予感がしたんだ。彼女も同じことを思ったのか、察したように話す。
「おかしい。様子を見てみよう」
私たちはおそるおそる窓を開ける。空や土、緑などの自然の色が見えるはずであった。だが、煙に包まれたかのように真っ白な一面。白に浮かんできたのは黒い顔のシルエット。不気味なそれはゆっくりと話し、ニヤリと嫌な笑みをしたように見えた。
次の瞬間、窓から入ってくる数人の身体が透けている幽霊のような存在。私はそれに恐怖した。彼女は諦めに似た笑みを浮かべたが、きっと心では恐怖を感じていただろう。
「あなたは逃げて」
彼女は私にそう言って、私を押した。私は一人では逃げられないと思ったが、彼女は私をかばった。彼女が幽霊のような存在に襲われた最期を間近で見、私は大きな液晶パネルのようなものに吸い込まれた。
視界は真っ白に染まる。そして、私はある世界から自分が住んでいた世界へと帰ってきたとわかる。救えなかった。それがとても悔しくて、とても苦しくて、涙がでそうだった。私はなにもできなかった。彼女を救えるはずだった。だが、現実は私の思ったようにはいかなかったのだ。彼女を救えなかったことは私の胸をチクチクと刺す。
「もう一度やり直したい」
そう思っても同じ時をやり直すことはできない。また取りこぼしてしまった。私の手からこぼれおちた。どうやったら彼女たちを救えるのだろうか。私は望む。彼女たちの命を守れる未来を。彼女たちの生命を助けることを。彼女たちの生命が枯れないことを。
第一の事件から第五の事件があり、私が今回話したのは第二の事件である。私が救えなかった生命はいくつもある。最低でも五つ。私はそれをできるだけ掴み取りたい。
あの世界では、敵がいた。彼女たちを邪魔に思う存在が彼女たちの命を刈り取った。私にできることはちっぽけなことで一人では無理かもしれないこと。それでも、やらないといけないの。そう思っていたら――。
まさか! あの男性、野生味が少々ある顔。似てる。もしかして、あの人? でも、なんでこの世界にいるのだろうか? もしかして、生まれ変わり?
「ねぇ!! あなたは――? こんなこと言ったらおかしい人だと思うだろうけど、前世って覚えてる?」
「さぁ、どうでしょうね?」
失礼なことに肩をガシッと掴み、尋ねた私。彼は飄々とした態度で私の質問をかわした。その時の表情、鋭い瞳と意味深な笑みが印象的であった。
彼は第五の事件で命を摘み取られてしまった人に非常に似ていた。事件の内容は曖昧であるが、彼という人物のことは覚えている。
「まあ、その質問にちゃんと答えるなら、YESですね」
「そっかぁ。他のみんなもいるのかな?」
「そんなこと僕は知りませんよ、――。もし、他の人たちがここにいたとしたら、僕らはまた襲われるのかもしれません。きっと僕らを襲った人もいるでしょうから」
ハッと気づいた。それは希望であり、絶望である。再び生を受けた彼らは再び命を狙われることになる。それはあまりにも酷いことではないだろうか。何もない平穏な日々の中で突然命を狙われ、事件に巻き込まれ、戦いに身を投じることになるのだ。私はそんなこと、望んでいない。みんながいたらいいな、と漠然と思ったが、もし恐る事態になってしまったら、私はどうすればいいのだろうか。
私は助けるために彼らの世界へ行った。だが、助けるべき存在に私は助けられた。その後、あの世界がどうなったのか私にはわからない。また、姿を見せなかった敵を前にして亡くなった彼らもきっとあの世界で何が起こったのかは知らないだろう。
「はぁ、――。僕はもう行くよ。もしもの話をしたけど、もしもなんて考えてたってどうしようもないからね。僕は後悔のない人生を生きていきたい。人はいつ死ぬのかわからない。だからこそ、最期はこれでよかったって少しでも納得できる人生を過ごしたいんだ」
彼は凛とした表情でありながらも、ほんの少しだけ憂いを帯びた瞳をしていたように思う。だが、目をそっと閉じて開いた後には表情は緩められていて、その顔つきは定かではない。私の見間違いであったかもしれない。
彼は「さようなら」と私に言った。私はその言葉には彼の願いが込められているのかもしれないと泣きそうになった。もう誰かが命を散らすことがないように、もう命を狙われるような事件に巻き込まれないように。
きっとその願いは叶わないだろうけれど、今度こそ私は彼や彼女たちを助ける側になる。この助けられた命で私は彼や彼女たちの役に立つの。守られるのはあの時ので十分だ。だから、私は強くなろう。今度こそ彼らを守るための刃を身につけよう。この世界で私は彼らの命を奪おうとする人からの攻撃を防ぐ。それが守られた私が彼らにできること。彼らの存在を今度こそは奪わせない。消させない。
さて、そろそろ立ち止まってないで歩き始めようか。
キーパーソンで大人っぽい女の人と私がキッチンで料理をしている時、嫌な予感がしたんだ。彼女も同じことを思ったのか、察したように話す。
「おかしい。様子を見てみよう」
私たちはおそるおそる窓を開ける。空や土、緑などの自然の色が見えるはずであった。だが、煙に包まれたかのように真っ白な一面。白に浮かんできたのは黒い顔のシルエット。不気味なそれはゆっくりと話し、ニヤリと嫌な笑みをしたように見えた。
次の瞬間、窓から入ってくる数人の身体が透けている幽霊のような存在。私はそれに恐怖した。彼女は諦めに似た笑みを浮かべたが、きっと心では恐怖を感じていただろう。
「あなたは逃げて」
彼女は私にそう言って、私を押した。私は一人では逃げられないと思ったが、彼女は私をかばった。彼女が幽霊のような存在に襲われた最期を間近で見、私は大きな液晶パネルのようなものに吸い込まれた。
視界は真っ白に染まる。そして、私はある世界から自分が住んでいた世界へと帰ってきたとわかる。救えなかった。それがとても悔しくて、とても苦しくて、涙がでそうだった。私はなにもできなかった。彼女を救えるはずだった。だが、現実は私の思ったようにはいかなかったのだ。彼女を救えなかったことは私の胸をチクチクと刺す。
「もう一度やり直したい」
そう思っても同じ時をやり直すことはできない。また取りこぼしてしまった。私の手からこぼれおちた。どうやったら彼女たちを救えるのだろうか。私は望む。彼女たちの命を守れる未来を。彼女たちの生命を助けることを。彼女たちの生命が枯れないことを。
第一の事件から第五の事件があり、私が今回話したのは第二の事件である。私が救えなかった生命はいくつもある。最低でも五つ。私はそれをできるだけ掴み取りたい。
あの世界では、敵がいた。彼女たちを邪魔に思う存在が彼女たちの命を刈り取った。私にできることはちっぽけなことで一人では無理かもしれないこと。それでも、やらないといけないの。そう思っていたら――。
まさか! あの男性、野生味が少々ある顔。似てる。もしかして、あの人? でも、なんでこの世界にいるのだろうか? もしかして、生まれ変わり?
「ねぇ!! あなたは――? こんなこと言ったらおかしい人だと思うだろうけど、前世って覚えてる?」
「さぁ、どうでしょうね?」
失礼なことに肩をガシッと掴み、尋ねた私。彼は飄々とした態度で私の質問をかわした。その時の表情、鋭い瞳と意味深な笑みが印象的であった。
彼は第五の事件で命を摘み取られてしまった人に非常に似ていた。事件の内容は曖昧であるが、彼という人物のことは覚えている。
「まあ、その質問にちゃんと答えるなら、YESですね」
「そっかぁ。他のみんなもいるのかな?」
「そんなこと僕は知りませんよ、――。もし、他の人たちがここにいたとしたら、僕らはまた襲われるのかもしれません。きっと僕らを襲った人もいるでしょうから」
ハッと気づいた。それは希望であり、絶望である。再び生を受けた彼らは再び命を狙われることになる。それはあまりにも酷いことではないだろうか。何もない平穏な日々の中で突然命を狙われ、事件に巻き込まれ、戦いに身を投じることになるのだ。私はそんなこと、望んでいない。みんながいたらいいな、と漠然と思ったが、もし恐る事態になってしまったら、私はどうすればいいのだろうか。
私は助けるために彼らの世界へ行った。だが、助けるべき存在に私は助けられた。その後、あの世界がどうなったのか私にはわからない。また、姿を見せなかった敵を前にして亡くなった彼らもきっとあの世界で何が起こったのかは知らないだろう。
「はぁ、――。僕はもう行くよ。もしもの話をしたけど、もしもなんて考えてたってどうしようもないからね。僕は後悔のない人生を生きていきたい。人はいつ死ぬのかわからない。だからこそ、最期はこれでよかったって少しでも納得できる人生を過ごしたいんだ」
彼は凛とした表情でありながらも、ほんの少しだけ憂いを帯びた瞳をしていたように思う。だが、目をそっと閉じて開いた後には表情は緩められていて、その顔つきは定かではない。私の見間違いであったかもしれない。
彼は「さようなら」と私に言った。私はその言葉には彼の願いが込められているのかもしれないと泣きそうになった。もう誰かが命を散らすことがないように、もう命を狙われるような事件に巻き込まれないように。
きっとその願いは叶わないだろうけれど、今度こそ私は彼や彼女たちを助ける側になる。この助けられた命で私は彼や彼女たちの役に立つの。守られるのはあの時ので十分だ。だから、私は強くなろう。今度こそ彼らを守るための刃を身につけよう。この世界で私は彼らの命を奪おうとする人からの攻撃を防ぐ。それが守られた私が彼らにできること。彼らの存在を今度こそは奪わせない。消させない。
さて、そろそろ立ち止まってないで歩き始めようか。
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