俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第二部 プロムナード編

第二話

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「どうしたんだ、イノリ?」
 
 しばらくして、戻ってきたイノリは意外にもけろっとしていた。俺の問いに、「ん?」と不思議そうに首を傾げて言う。
 
「なんもないよー?」
「いや、流石に無理あるからなぁ!」
 
 ズビシ! と裏拳のツッコミがさく裂する。
 おっとりしてるイノリが、あんなに声を荒らげるなんて、ただ事じゃあねえことくらいわかるわ。
 じっと目力を込めて見つめると、イノリは苦笑した。俺の横に、のっそりと腰を下ろし、横目に見つめ返してくる。
 
「あんね? 会長にさ、生徒会の集まりあるからちょっと来ないかーって言われたんだぁ。でも、俺、帰省中だしー。休み明けに伺いまーすって言って来たのね」
「ほうほう。え、マジ、出なくていいのか?」
「いーでしょ。俺、休み中にまで、仕事したくねぇもん」
「おおふ……」
 
 イノリの奴、ときどき思いっきりが良すぎて、びっくりするぜ。
 俺は運動部なせいか、先輩には服従つーか。「アイアイサー!」って二つ返事で出てかなきゃって、なっちまうんだけど。ON-OFFはっきりしてんだよな。
 イノリは「それにぃ」と強調するように、人差し指を立てた。

「俺、明日はカラオケ行きたいもん」
「ああ!」
 
 ぽん、と拳で手のひらを打つ。
 明日は、市のカラオケ大会に行くつもりだったんだ。お金もいらんし、飛び入りOKのフランクな大会でさ。この辺の子どもは小学校から参加する、毎年恒例の行事なんだよな。
 
「楽しみだなあ。お前、何歌うか決めた?」
「俺はねぇ、内緒ー」
「なんだよー!」

 わいわいと肩をどつきあう。
 まあ、確かに休みだし。
 イノリは前期大変だったしな。ちょっとくらい平気だろ!



 そう思って、一度は納得した俺だったんだが。
 やっぱり、そうは問屋がおろさなかったっぽいんだよな。

「ん? 電話だ」

 その日の夜――
 両親ともに外食行ってるから、適当にピザ取って、晩メシにして。
 「一旦、風呂入ってくる」つって、俺ん家に帰ったら、置きっぱなしにしてたスマホが、ちょうどチカチカ光ってた。

「はい、吉村です?」

 見覚えのない番号を訝しみつつ、出てみると賑やかな声が聞こえてくる。

『あ、吉村くん? ぼく、須々木の遼さんやけど』
「えー、須々木先輩?!」

 ぺこ、と電話にむかって、反射的にお辞儀する。受話器から「けけけ」と笑い声が聞こえてきた。

『明けましておめでとう。ほんまに掛けてくると思わんくて、びっくりした?』
「おめでとうございますっ。いや、驚いたけど嬉しいっす!」

 休み前に、俺の番号だけ伝えといたんだけどさ。連絡くれるなんて、嬉しいなあ。
 で、しばらく雑談してたわけよ。
 先輩は、正月どうしてたとか、俺の年賀状の感想とか、色々話してくれて。
 だから俺も、明日のカラオケ大会のことを話したんだが――

『へえ、カラオケか。楽しそうやなあ』
「そうなんす。参加費無料で、飛び入りOKなフランクさが売りで。俺もイノリも、毎年楽しみにしてて」
『ほー……ん? ちょお待って、桜沢、そこにおるん?』

 急に、恐る恐るって感じに訊かれて、俺は首を傾げた。

「え? はい。明日は一緒に出るつもりで」
『あ…………あかーーん!!!』
「でえ?!」

 鼓膜をつんざくような大声に、俺は仰け反った。――何だ何だ?!

『ああ、吉村くんごめん! ちょっとあのアホ、電話に出してくれる?!!』

 何が何やらわからねえが、大焦りの須々木先輩に、俺は「はい!」と何度も頷いて。
 電話を繋げたまま、猛ダッシュで隣家を訪ねた。


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