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第一部 決闘大会編
二百十八話
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「わが身に宿る火の元素よ。――彼の気と結べ!」
鳶尾が高らかに詠唱すると、空中に真っ赤な魔法陣が現われる。
マジ、でっけえ。メシ食う机くらいあるぞ。俺は、腹の底がゾ~ッと痒くなる。
……と。魔法陣が一際激しく光り――ヴン、と空気が震えた。
「うわわ……」
「くらえ!」
――ドン、ドンドンッ!
爆竹みてえな音が響き、魔法陣から炎の弾丸が打ちだされた!
「わあー!」
顔面、腹、足元に、せっそーない乱れ打ちだ!
俺は、光速の反復横跳びで、なんとか身をかわす。幾つか、肌を掠めて産毛が焦げた。
「ああ、危ねえなあ! 焼けちゃうだろーが!?」
「ふん。ぬるま湯のゴミが。――これが、魔法バトルだ!」
――ドドドドド……ッ!
鳶尾が手を横に払うと、魔法陣から再び炎弾が打ちだされる。
ぐうう、さっきより多い!
俺は、猛ダッシュでリングを逃げ回る。マシンガンみてえに飛んでくる無数の炎弾が、石の床をハチの巣にしていった。
「のわぁっ!」
ドゴン! と足元に直撃した一発で、床が破壊される。
見事に蹴っ躓いた俺は、頭からでんぐり返って、べしゃりと床に転がった。
「いてて……」
打った頭を擦っていると、倒れこんだ床の上に――でかい魔法陣が出現する。
「!」
恐怖で、心臓がギュインとバウンドした。魔法陣が、激しく光る。
ドォン!
轟音と共に、火柱が噴きあがった。飛びのいた俺の肩を真っ赤な炎が舐め、ジャケットに引火する。
「ぎゃあっ! あちち!」
また、燃えちまってらー!
大慌てでジャケットを脱ぎ、バシバシと床に叩きつける。必死の消火活動を試みていると、ヒュン、と風を切る音を耳が拾う。
グイ、と首が絞まって「ぐえっ」とえづいた。振り向いて、俺はぎょっとする。
「わあ!?」
無防備な俺の襟を、鳶尾がひっつかんでいる。――まずい!
重いストレートが、俺の右頬に決まる。衝撃に、チカチカッと目の奥に火花が散った。
「うぐ……!」
「沈め!」
ドウッ! と鳶尾の膝が鳩尾に入った。かふっ、と肺の空気が全部出る。苦しい。俺は、リングに崩れ落ちた。
「吉村、ダウン!」
ジャッジが宣告し、わあっと観客が騒ぐ。
冷たく見下ろす鳶尾の足元で、俺はゲホゲホとえづいた。
「ワン、ツー! ……」
ジャッジが、カウントを取り始める。
いやだ、負けたくねえ!
歯を食いしばって、よろよろと立ち上がった。
「いけるか? 吉村」
「……うす!」
ジャッジに頷いて、俺はファイティングポーズをする。――まだまだ!
鳶尾は冷めた目で、首を傾げる。
「寝てりゃ良かったのに。わざわざ長く苦しむなんて、馬鹿なのかな?」
「うるせいっ。負けてたまるかっ」
「ふん」
鳶尾は小馬鹿にしたように笑って、ギュンと突進してきた。
俺は、迎え撃つ――!
鳶尾が高らかに詠唱すると、空中に真っ赤な魔法陣が現われる。
マジ、でっけえ。メシ食う机くらいあるぞ。俺は、腹の底がゾ~ッと痒くなる。
……と。魔法陣が一際激しく光り――ヴン、と空気が震えた。
「うわわ……」
「くらえ!」
――ドン、ドンドンッ!
爆竹みてえな音が響き、魔法陣から炎の弾丸が打ちだされた!
「わあー!」
顔面、腹、足元に、せっそーない乱れ打ちだ!
俺は、光速の反復横跳びで、なんとか身をかわす。幾つか、肌を掠めて産毛が焦げた。
「ああ、危ねえなあ! 焼けちゃうだろーが!?」
「ふん。ぬるま湯のゴミが。――これが、魔法バトルだ!」
――ドドドドド……ッ!
鳶尾が手を横に払うと、魔法陣から再び炎弾が打ちだされる。
ぐうう、さっきより多い!
俺は、猛ダッシュでリングを逃げ回る。マシンガンみてえに飛んでくる無数の炎弾が、石の床をハチの巣にしていった。
「のわぁっ!」
ドゴン! と足元に直撃した一発で、床が破壊される。
見事に蹴っ躓いた俺は、頭からでんぐり返って、べしゃりと床に転がった。
「いてて……」
打った頭を擦っていると、倒れこんだ床の上に――でかい魔法陣が出現する。
「!」
恐怖で、心臓がギュインとバウンドした。魔法陣が、激しく光る。
ドォン!
轟音と共に、火柱が噴きあがった。飛びのいた俺の肩を真っ赤な炎が舐め、ジャケットに引火する。
「ぎゃあっ! あちち!」
また、燃えちまってらー!
大慌てでジャケットを脱ぎ、バシバシと床に叩きつける。必死の消火活動を試みていると、ヒュン、と風を切る音を耳が拾う。
グイ、と首が絞まって「ぐえっ」とえづいた。振り向いて、俺はぎょっとする。
「わあ!?」
無防備な俺の襟を、鳶尾がひっつかんでいる。――まずい!
重いストレートが、俺の右頬に決まる。衝撃に、チカチカッと目の奥に火花が散った。
「うぐ……!」
「沈め!」
ドウッ! と鳶尾の膝が鳩尾に入った。かふっ、と肺の空気が全部出る。苦しい。俺は、リングに崩れ落ちた。
「吉村、ダウン!」
ジャッジが宣告し、わあっと観客が騒ぐ。
冷たく見下ろす鳶尾の足元で、俺はゲホゲホとえづいた。
「ワン、ツー! ……」
ジャッジが、カウントを取り始める。
いやだ、負けたくねえ!
歯を食いしばって、よろよろと立ち上がった。
「いけるか? 吉村」
「……うす!」
ジャッジに頷いて、俺はファイティングポーズをする。――まだまだ!
鳶尾は冷めた目で、首を傾げる。
「寝てりゃ良かったのに。わざわざ長く苦しむなんて、馬鹿なのかな?」
「うるせいっ。負けてたまるかっ」
「ふん」
鳶尾は小馬鹿にしたように笑って、ギュンと突進してきた。
俺は、迎え撃つ――!
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