俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第一部 決闘大会編

二百七話

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「チャンネルルームと言うのはな」
 
 葛城先生は、アクエリアスをグビリとやり、目の高さにデカい鍵を掲げた。
 
「このチャンネルキーで開けた扉を、別の空間に繋げることができる。もちろん、どの扉でもOKというわけではないぞ。チャンネルキー専用のカギ穴がある扉に限る。この校舎は、かなり対応しているから、また彼方此方で探してみると良い」
「そうなんすか! ハイテクっすね」
 
 ドラえもんの引き出しみてえだぜ、と俺が言ったら須々木先輩が笑った。
 じっと話を聞いていた森脇が、おずおずと手を上げて。
 
「せ、先生。さ、さっき鍵がないと出入りが出来ないって、お、仰いました、よね。ここを出る時も、その鍵がないと、い、いけないん、ですか?」
「その通り。チャンネルの切り替えには、必ずこのキーが必要だからな。チャンネルで空間を切り替えたとき、扉を閉めた段階で元の空間から切り離されているんだ。出る際にもう一度、この鍵で元の位置に戻す必要がある」
「な、なるほど、です。だから、この間も、他の先生方が、チャンネルを使えるん、ですね」
「うむ。たまに、出入りの瞬間が重なって、混むこともあるがな」
 
 森脇と先生が、うむうむと頷きあっている。
 俺は、隣の片倉先輩の腕をつついた。
 
「あのう、どういうことっすか?」
「はぁ? 俺に聞くなよ……」
「そう言わずにっ」
「……あの鍵で開けた扉は、別の場所に繋がるわけで。そんで今は、武道館とは違うとこに来てんだろ。……だから、出る時もまたあの鍵でチャンネルをいらって、元の場所に戻んねえとダメってこと、じゃねぇの」
「おお!」
「たぶんだぞ。知らねえからな」
 
 と、そっぽを向いた片倉先輩に、向かいの藤川先輩が「あっているぞ」と太鼓判を押してくれて。片倉先輩は、俺の脇腹をどついた。なんで?
 それはそうと、よくわかったぞ。つまり、チャンネルキーがないと行き来が出来ないんだな。
 あれ、それなら。
 
「葛城先生。もし、鍵つかわないで外に出たら、どうなるんすか?」
「この空間にとって、地続きの場所に出てしまう。例えば今なら、そうだな。この演習場は、国外の私邸にあるものなので――我が家の庭に出るだろう。外に出てはぐれたら、国外に取り残されることになる。ゆめゆめ、外に出るなよ!」
 

 





 
「ううむ」
 
 勉強会のときの葛城先生の説明を思い出して、俺は唸る。
 ここは、チャンネルルーム。――葛城先生の時と違って、なぜかドアが消えちまってるけど。白井さんの持ってた鍵は、先生の持ってたやつと同じだったから、それで間違いない。
 でもって、チャンネルルームは、鍵がないと元の場所に出られないんだ。
 ……ってことはさ。
 あの窓を、何とかぶっ壊して外に出れたとして。校舎に戻れるかは、わかんねえってことだよな。
 
「え、やばくねえ?」 
 
 この小部屋が、例えばリオデジャネイロとかにあったら。俺、リオからヒッチハイクで帰ってこなきゃなんねーのか?
 それは流石に、ハイリスクじゃね。 
 結局、白井さんが出してくれるまで、四日間待つしかねえってこと?
 
「いや、でも……白井さんの気が変わって、出して貰えんかったら。じいさんになるまで、ここに居んの?」
 
 口に出して、ゾーッとする。
 や、やっぱり、人任せになるのは駄目だ! 自分でなんとかしねえと。
 
「そうだよ、何とかなる。第一、漫画とかのこういう部屋って、アクシデントはつきもんじゃん。案外、合鍵とか、隠してあるかもしんねーし」
 
 俺は気合一発、腕まくりした。
 なんとしても外に出るんだ!
 
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