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第一部 決闘大会編
百九十三話 六月九日(十八時二十分)加筆完了しました!
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――翌朝。
俺は、二見のクラスの一年F組に行ってみた。登校途中に「よっちゃん」も手に入れて、準備万端だぜ。
「おはよう。あの、二見っている?」
扉の近くにいた生徒に尋ねる。すると、顔を見合せて、くちぐちに教えてくれた。
「二見? 今日はまだ来てねえな」
「だね。いつも早いのに、めずらしい」
「あ、でも。風紀室に直行したのかもよ。行ってみたら?」
「そっか。ありがとう!」
俺はぺこりと一礼して、アドバイス通りに風紀室へ向かった。
「おはようございます!」
第三風紀の扉をノックすると、すぐに応答があった。まだ早朝なのに、けっこうな数の委員が詰めている。
「吉村くん。どうしたんだ?」
「あ。白井さん!」
ひょい、と部屋の奥から歩み寄ってくるのは、白井さんだ。白井さんは、少し疲れた顔をしている。
「昨日は、お世話になりました。あの、大丈夫ですか」
「ああ。……どうかしたのかな?」
「はい、ええと。二見は、もう来てるかなぁ、と思いまして」
俺が二見の名前をだすと、白井さんの表情が曇ったみたいだった。「あれ?」と思っていると、白井さんは首を振った。
「……真帆なら、登校はしてるよ」
「本当ですか!」
俺は、ぱあっと気分が明るくなる。けど、白井さんは、こう言葉を続けた。
「でも、今すぐは帰ってこないと思う。もし、何か用事があるなら、後の方がいいかもしれない」
「えっ。二見、何かあったんですか?」
「いや、業務のことで少しね。急ぎの用だったら、言づけを……」
「あっいや! ぜんぜん、急ぎとかじゃないっす。ありがとうございましたっ」
俺は、白井さんにお礼を言って、風紀室を出た。
廊下をずんずん歩きながら、首を傾げちまう。
二見、どうしたんだろう。昨日、副委員長さんに引き留められたってことで、なんかあったんかなあ。
「まあいいや。また、後で出直すか!」
俺は、気を取り直して自分のクラスに戻った。
「二見? まだ来てないよー」
「真帆は、まだ戻っていなくて……」
休み時間や、移動の度に行ってみたものの、二見は捕まらなかった。
もう昼休みなのに! こんな長時間になるって、いったいどんな業務なんだ。
「どうしたんかなあ……」
イノリも、生徒会のアレで帰りがすげぇ遅い時間になったり、出張とかもあって大変そうだ。だから、風紀も、そういう感じなんかもしれんけど……。
てくてく、と21号館の廊下を歩く。ひんやりとした廊下は、いつにも増して静かに感じた。
305の戸をガラリと開けると、さあっと冷たい風が吹いてくる。
「トキちゃん、おはよー」
「イノリ、おはよう!」
いつもの席で、頬杖をついていたイノリが、ニッコリ笑う。俺は駆け寄って、対面に座った。
「昨日はありがとな! あの後、大丈夫だったか?」
「なんでもないよー。あの後はねぇ、ふつーに美門くんを部屋に送って、帰ったー」
「そっかぁ、よかった」
へらりと笑うと、イノリはこてんと首を傾げた。
「トキちゃん、どうかしたのー?」
「へ?」
「なんか、元気ないみたい。やっぱ、きのうのことで疲れてる?」
ふにっと片頬を、でっかい手に包まれる。
薄茶の目にじっと見つめられて、俺はオロオロと俯いた。
「いやあ、疲れてるってわけじゃねんだ。ちっと気になることがあってさ」
「なあに?」
「実は……」
俺は、かくかくしかじかとイノリに話した。
昨日、別れてから二見が姿を見せないこと、それが、副委員長さんの業務のためらしいこと。
聞き終えたイノリは、唇に指を当てながら「うーん」と呟いた。
「たしかに、俺も遅くなったりはするし、風紀も泊まり込みとかって、ザラらしいけどー」
「ふんふん」
「でも、副委員長ってのが気になるな。わざわざ二見くんに頼みたい仕事って、なんだろね?」
「ううむ……」
唸っていると、イノリまで心配そうな顔になっちまった。俺は、慌てて手を振る。
「あっでもさ! 普通に、忙しいのかも知んねえし。また、訪ねてみるつもりではあんだ」
「俺も、先輩たちに聞いてみるねー。もしかしたら、業務の都合で会ってるかもしんないし」
「おお! サンキュ、イノリ!」
イノリの気もちに、感謝があふれた。
「ごはん食べよっか?」
「おう!」
その後は、二人で談笑しながらメシを食った。イノリたち生徒会も、決闘大会に向けて大詰めで、やっさもっさしてるとか。
「やっぱ、みんなが楽しみにしてる、一大イベントだからなぁ。色んな出店も出るみたいだし、楽しみにしててねー」
「マジで! 闘うだけじゃねえの?」
「俺もびっくりしたんだけど、そうみたいー。OBが童心に帰るための場でもあるらしくってさ? 生徒はタダで飲み食いできるらしーのね」
「すっ、すっげー!」
やべえ、魔法学園すげえ!
パカンと口を開けている俺に、イノリがころころと笑う。
「じゃあさ、イノリ! ――」
「ん?」
「あっ。ええと、焼きそばの屋台とか、出んのかな?」
「出るよー? ふふ。トキちゃん、焼きそば好きだねぇ」
「そうなんだ! なはは」
あっぶねぇ。
「一緒に回ろうな」って、言いかけちまったぞ。
つい、今までの癖で。現状、「一緒に」なんて言ったら、困らせちまうってば。
ちら、とニコニコしてるイノリを見る。
でも、来年は。
「一緒に、出店まわろう」って言えるようになろう。その為に、決闘大会頑張らねえとな!
俺は、ふんすと気合を入れ直した。
「そういや、イノリも決闘の予約、あるんだよな。どんなかんじよ?」
「俺はね、まあまあ少ないよー。三十人くらいだし」
「いや、めっちゃ多いわ!」
俺は、二見のクラスの一年F組に行ってみた。登校途中に「よっちゃん」も手に入れて、準備万端だぜ。
「おはよう。あの、二見っている?」
扉の近くにいた生徒に尋ねる。すると、顔を見合せて、くちぐちに教えてくれた。
「二見? 今日はまだ来てねえな」
「だね。いつも早いのに、めずらしい」
「あ、でも。風紀室に直行したのかもよ。行ってみたら?」
「そっか。ありがとう!」
俺はぺこりと一礼して、アドバイス通りに風紀室へ向かった。
「おはようございます!」
第三風紀の扉をノックすると、すぐに応答があった。まだ早朝なのに、けっこうな数の委員が詰めている。
「吉村くん。どうしたんだ?」
「あ。白井さん!」
ひょい、と部屋の奥から歩み寄ってくるのは、白井さんだ。白井さんは、少し疲れた顔をしている。
「昨日は、お世話になりました。あの、大丈夫ですか」
「ああ。……どうかしたのかな?」
「はい、ええと。二見は、もう来てるかなぁ、と思いまして」
俺が二見の名前をだすと、白井さんの表情が曇ったみたいだった。「あれ?」と思っていると、白井さんは首を振った。
「……真帆なら、登校はしてるよ」
「本当ですか!」
俺は、ぱあっと気分が明るくなる。けど、白井さんは、こう言葉を続けた。
「でも、今すぐは帰ってこないと思う。もし、何か用事があるなら、後の方がいいかもしれない」
「えっ。二見、何かあったんですか?」
「いや、業務のことで少しね。急ぎの用だったら、言づけを……」
「あっいや! ぜんぜん、急ぎとかじゃないっす。ありがとうございましたっ」
俺は、白井さんにお礼を言って、風紀室を出た。
廊下をずんずん歩きながら、首を傾げちまう。
二見、どうしたんだろう。昨日、副委員長さんに引き留められたってことで、なんかあったんかなあ。
「まあいいや。また、後で出直すか!」
俺は、気を取り直して自分のクラスに戻った。
「二見? まだ来てないよー」
「真帆は、まだ戻っていなくて……」
休み時間や、移動の度に行ってみたものの、二見は捕まらなかった。
もう昼休みなのに! こんな長時間になるって、いったいどんな業務なんだ。
「どうしたんかなあ……」
イノリも、生徒会のアレで帰りがすげぇ遅い時間になったり、出張とかもあって大変そうだ。だから、風紀も、そういう感じなんかもしれんけど……。
てくてく、と21号館の廊下を歩く。ひんやりとした廊下は、いつにも増して静かに感じた。
305の戸をガラリと開けると、さあっと冷たい風が吹いてくる。
「トキちゃん、おはよー」
「イノリ、おはよう!」
いつもの席で、頬杖をついていたイノリが、ニッコリ笑う。俺は駆け寄って、対面に座った。
「昨日はありがとな! あの後、大丈夫だったか?」
「なんでもないよー。あの後はねぇ、ふつーに美門くんを部屋に送って、帰ったー」
「そっかぁ、よかった」
へらりと笑うと、イノリはこてんと首を傾げた。
「トキちゃん、どうかしたのー?」
「へ?」
「なんか、元気ないみたい。やっぱ、きのうのことで疲れてる?」
ふにっと片頬を、でっかい手に包まれる。
薄茶の目にじっと見つめられて、俺はオロオロと俯いた。
「いやあ、疲れてるってわけじゃねんだ。ちっと気になることがあってさ」
「なあに?」
「実は……」
俺は、かくかくしかじかとイノリに話した。
昨日、別れてから二見が姿を見せないこと、それが、副委員長さんの業務のためらしいこと。
聞き終えたイノリは、唇に指を当てながら「うーん」と呟いた。
「たしかに、俺も遅くなったりはするし、風紀も泊まり込みとかって、ザラらしいけどー」
「ふんふん」
「でも、副委員長ってのが気になるな。わざわざ二見くんに頼みたい仕事って、なんだろね?」
「ううむ……」
唸っていると、イノリまで心配そうな顔になっちまった。俺は、慌てて手を振る。
「あっでもさ! 普通に、忙しいのかも知んねえし。また、訪ねてみるつもりではあんだ」
「俺も、先輩たちに聞いてみるねー。もしかしたら、業務の都合で会ってるかもしんないし」
「おお! サンキュ、イノリ!」
イノリの気もちに、感謝があふれた。
「ごはん食べよっか?」
「おう!」
その後は、二人で談笑しながらメシを食った。イノリたち生徒会も、決闘大会に向けて大詰めで、やっさもっさしてるとか。
「やっぱ、みんなが楽しみにしてる、一大イベントだからなぁ。色んな出店も出るみたいだし、楽しみにしててねー」
「マジで! 闘うだけじゃねえの?」
「俺もびっくりしたんだけど、そうみたいー。OBが童心に帰るための場でもあるらしくってさ? 生徒はタダで飲み食いできるらしーのね」
「すっ、すっげー!」
やべえ、魔法学園すげえ!
パカンと口を開けている俺に、イノリがころころと笑う。
「じゃあさ、イノリ! ――」
「ん?」
「あっ。ええと、焼きそばの屋台とか、出んのかな?」
「出るよー? ふふ。トキちゃん、焼きそば好きだねぇ」
「そうなんだ! なはは」
あっぶねぇ。
「一緒に回ろうな」って、言いかけちまったぞ。
つい、今までの癖で。現状、「一緒に」なんて言ったら、困らせちまうってば。
ちら、とニコニコしてるイノリを見る。
でも、来年は。
「一緒に、出店まわろう」って言えるようになろう。その為に、決闘大会頑張らねえとな!
俺は、ふんすと気合を入れ直した。
「そういや、イノリも決闘の予約、あるんだよな。どんなかんじよ?」
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