157 / 239
第一部 決闘大会編
百五十七話
しおりを挟む
「もう、酷い目にあったよ!」
拘束を解かれた二見は、ぷりぷりと怒っていた。痛そうに肩をさすっていて、申し訳なくなる。
「ごめんな、二見。イノリ、犯人捕まえようとしてくれたんだ」
「だろうね! じゃなきゃやべー奴だよ、いきなり掴みかかるとかさぁ」
「ごめーん、怪しかったからー」
「軽い! てか、なんで桜沢祈がいんの。生徒会のやつらは出張でしょ?」
「それは――」
俺は、かいつまんで理由を話した。カッカしながらも、話を聞いてくれた二見は、呆れ顔になる。
「へぇ、吉村くんが心配でね。アンタ、愛に生きてんなあ」
「別に、ふつうだしー」
イノリは、ふいと顔を逸らす。その耳が赤くなっていて、俺はどきっとした。
胸を拳でゴシゴシしてると、西浦先輩が二見にたずねる。
「二見くん、だっけ。さっきは何してたの?」
「やだなあ。吉村くんの警備です。風紀の仕事で――」
「ねえだろ。風紀が一度終わった事件を掘り起こすなんざ、ありえねえ」
佐賀先輩の言葉に、二見は首を捻った。
「佐賀さんて、風紀をよく知ってるんですね?」
「一応、小等部から居るもんでな。お前らがどんな仕事するかくれェわかる」
「マジですか。なんか気まずいなあ」
ハハハ、と笑い声をあげて二見は、頭の後ろで手を組んだ。そして、あっけらかんと言う。
「そうです。この件で風紀はもう動いてません。だから――今夜のこれは、オレの個人的な捜査かな」
「きみ、単独でやってんのー?」
首をこてんと傾げるイノリに、二見はニッと笑う。
「そうだよ」
「二見……ありがとう」
そんなに、心配してくれてたとは。
きらきらと熱い目を向けると、「あー、違う違う」と手を振られた。
「別に、吉村くんのためってワケじゃないよ。ただ、オレが調べてる事件と、この件ってほぼ被ってて」
「あ、そうなん?」
「へえ。なに調べてんのぉ?」
イノリが、ずいと割って入る。
なぜか、でっかい手で俺の頭を撫でながら。ちょい恥ずかしいんだけど。
二見は天井を見上げて、ピアスを指で探っている。
「とある事件の真相を解明したくてね。一応は解決済みになってるから、オレがやらなきゃ誰も調べないだろうし」
「解決してるのに、調べるのか?」
俺とイノリは、二人で顔を見合わせた。二見は、米神を引きつらせている。
「いや、今の状況も省みて? 解決済みの事件が、真相解明されてると限らないでしょ。――てか、吉村くん。オレのメモ読まなかった?」
「あ、インサイドってやつ? 見たよ」
あれ、やっぱり伝言だったんだな。二見は、焦れたようにテーブルに身を乗り出す。
「なら、オレが何を疑ってるかわかるでしょ?!」
青い目が、まっすぐに俺を射抜く。
どうしよう。この状況で、わかんねえって言いづらいな。
ぼりぼり頭を掻いていると、静観していた西浦先輩が声を上げた。
「もしかして――インサイドって”inside job”のことを言ってる?」
「それ!」
二見は、ビシッと指を指す。天の助け、とばかりに顔が光ってる。
てか、俺以外の全員が「あー」って頷いてて、疎外感が半端ねぇぜ。
「あのう……インサイドジョブって何すか?」
おずおず手を上げて言うと、佐賀先輩が目をかっぴらく。
「てめえ、マジ勉強しろよ」
「うぐっ」
「佐賀! 吉ちゃん、”insidejob”って言うのはね、”内部の犯行”って意味なんだ」
「ないぶのはんこう?」
「内部犯ともいうかな。それを、二見くんが言ったんだよね。二見くんにとっての内部って、どこかわかる?」
二見にとって内部。
二見が所属してるグループってこと、だよな。それって、つまり――。
「あっ」
がば、と顔を上げると、二見が頷いた。
でも――まさか、信じらんねえよ。
だって、みんな親切だったぜ。
「つまり。風紀に犯人がいるって疑っているんだね」
西浦先輩が呟いて、それが小さな声だったのに、やたら大きく響いた。
拘束を解かれた二見は、ぷりぷりと怒っていた。痛そうに肩をさすっていて、申し訳なくなる。
「ごめんな、二見。イノリ、犯人捕まえようとしてくれたんだ」
「だろうね! じゃなきゃやべー奴だよ、いきなり掴みかかるとかさぁ」
「ごめーん、怪しかったからー」
「軽い! てか、なんで桜沢祈がいんの。生徒会のやつらは出張でしょ?」
「それは――」
俺は、かいつまんで理由を話した。カッカしながらも、話を聞いてくれた二見は、呆れ顔になる。
「へぇ、吉村くんが心配でね。アンタ、愛に生きてんなあ」
「別に、ふつうだしー」
イノリは、ふいと顔を逸らす。その耳が赤くなっていて、俺はどきっとした。
胸を拳でゴシゴシしてると、西浦先輩が二見にたずねる。
「二見くん、だっけ。さっきは何してたの?」
「やだなあ。吉村くんの警備です。風紀の仕事で――」
「ねえだろ。風紀が一度終わった事件を掘り起こすなんざ、ありえねえ」
佐賀先輩の言葉に、二見は首を捻った。
「佐賀さんて、風紀をよく知ってるんですね?」
「一応、小等部から居るもんでな。お前らがどんな仕事するかくれェわかる」
「マジですか。なんか気まずいなあ」
ハハハ、と笑い声をあげて二見は、頭の後ろで手を組んだ。そして、あっけらかんと言う。
「そうです。この件で風紀はもう動いてません。だから――今夜のこれは、オレの個人的な捜査かな」
「きみ、単独でやってんのー?」
首をこてんと傾げるイノリに、二見はニッと笑う。
「そうだよ」
「二見……ありがとう」
そんなに、心配してくれてたとは。
きらきらと熱い目を向けると、「あー、違う違う」と手を振られた。
「別に、吉村くんのためってワケじゃないよ。ただ、オレが調べてる事件と、この件ってほぼ被ってて」
「あ、そうなん?」
「へえ。なに調べてんのぉ?」
イノリが、ずいと割って入る。
なぜか、でっかい手で俺の頭を撫でながら。ちょい恥ずかしいんだけど。
二見は天井を見上げて、ピアスを指で探っている。
「とある事件の真相を解明したくてね。一応は解決済みになってるから、オレがやらなきゃ誰も調べないだろうし」
「解決してるのに、調べるのか?」
俺とイノリは、二人で顔を見合わせた。二見は、米神を引きつらせている。
「いや、今の状況も省みて? 解決済みの事件が、真相解明されてると限らないでしょ。――てか、吉村くん。オレのメモ読まなかった?」
「あ、インサイドってやつ? 見たよ」
あれ、やっぱり伝言だったんだな。二見は、焦れたようにテーブルに身を乗り出す。
「なら、オレが何を疑ってるかわかるでしょ?!」
青い目が、まっすぐに俺を射抜く。
どうしよう。この状況で、わかんねえって言いづらいな。
ぼりぼり頭を掻いていると、静観していた西浦先輩が声を上げた。
「もしかして――インサイドって”inside job”のことを言ってる?」
「それ!」
二見は、ビシッと指を指す。天の助け、とばかりに顔が光ってる。
てか、俺以外の全員が「あー」って頷いてて、疎外感が半端ねぇぜ。
「あのう……インサイドジョブって何すか?」
おずおず手を上げて言うと、佐賀先輩が目をかっぴらく。
「てめえ、マジ勉強しろよ」
「うぐっ」
「佐賀! 吉ちゃん、”insidejob”って言うのはね、”内部の犯行”って意味なんだ」
「ないぶのはんこう?」
「内部犯ともいうかな。それを、二見くんが言ったんだよね。二見くんにとっての内部って、どこかわかる?」
二見にとって内部。
二見が所属してるグループってこと、だよな。それって、つまり――。
「あっ」
がば、と顔を上げると、二見が頷いた。
でも――まさか、信じらんねえよ。
だって、みんな親切だったぜ。
「つまり。風紀に犯人がいるって疑っているんだね」
西浦先輩が呟いて、それが小さな声だったのに、やたら大きく響いた。
47
あなたにおすすめの小説
オム・ファタールと無いものねだり
狗空堂
BL
この世の全てが手に入る者たちが、永遠に手に入れられないたった一つのものの話。
前野の血を引く人間は、人を良くも悪くもぐちゃぐちゃにする。その血の呪いのせいで、後田宗介の主人兼親友である前野篤志はトラブルに巻き込まれてばかり。
この度編入した金持ち全寮制の男子校では、学園を牽引する眉目秀麗で優秀な生徒ばかり惹きつけて学内風紀を乱す日々。どうやら篤志の一挙手一投足は『大衆に求められすぎる』天才たちの心に刺さって抜けないらしい。
天才たちは蟻の如く篤志に群がるし、それを快く思わない天才たちのファンからはやっかみを買うし、でも主人は毎日能天気だし。
そんな主人を全てのものから護る為、今日も宗介は全方向に噛み付きながら学生生活を奔走する。
これは、天才の影に隠れたとるに足らない凡人が、凡人なりに走り続けて少しずつ認められ愛されていく話。
2025.10.30 第13回BL大賞に参加しています。応援していただけると嬉しいです。
※王道学園の脇役受け。
※主人公は従者の方です。
※序盤は主人の方が大勢に好かれています。
※嫌われ(?)→愛されですが、全員が従者を愛すわけではありません。
※呪いとかが平然と存在しているので若干ファンタジーです。
※pixivでも掲載しています。
色々と初めてなので、至らぬ点がありましたらご指摘いただけますと幸いです。
いいねやコメントは頂けましたら嬉しくて踊ります。
僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ
MITARASI_
BL
I
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
Ⅱ
高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。
別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。
未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。
恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。
そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。
過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。
不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。
それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。
高校編のその先を描く大学生活編。
選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。
続編執筆中
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる